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ルク兄さんとピオニー陛下
萌え 2012/10/04 23:09


・ルク兄さんとピオニー陛下の会話
・ピオニー陛下とちょっと真面目な謁見後
・パーティと一緒にピオニー陛下の私室へ





 何を思ったのか、マルクト皇帝は謁見後に俺達を自身の私室へと呼び寄せた。一体何を言われるのかと内心で構え、表面では得意の愛想笑いを浮かべた俺は、他のメンバーに紛れるように皇帝の私室へ足を踏み入れた。そして入った瞬間、36歳おっさん(皇帝)の人となりの一片を垣間見る羽目になった。

 彼の私室は王宮と同様に、国色であるブルーを基調とした落ち着いた内装だった。広い部屋は天井も高く、窓の外には水をふんだんに使った明るい中庭を望むことができる。だが何故か、私室に入ってすぐにやや奥側に設置されている天蓋付きの巨大な寝台が見えた。ついでに壁際には、雑然と放置されているようにしか見えない刀剣達が見える。おまけに刀剣とは別の壁際には、数匹の家畜――ブウサギと呼ばれる生き物が、その丸々と肥えた肢体を高級な絨毯に投げ出して寛いでいた。なんぞこれ。仕切りの壁をぶち抜き、寝室と武器庫と家畜小屋をごちゃまぜにしたらこんな部屋になるのだろうか。ひたすらに雑然としている部屋が不潔と感じないのは、部屋を整備するメイド達が頑張っている御蔭だろう。彼女達の涙ぐましい努力は、部屋から埃を一掃し、ブウサギの毛並みを艶やかに輝かせている。

 そんな奇妙な部屋の主人は、遠慮と威厳の欠片もなくどっかりと寝台に腰を下ろすと、満面の笑顔をこちらに向けた。

「おっ、よく来たな!」

 貴方が呼んだから来たんですよ、と心の中で返す。皇帝――ピオニー・ウパラ・マルクト9世は、肩口にかかる長さの明るい金髪と抜けるような蒼穹の目を持つ、浅黒い肌をしたイケメンだ。こういう場合の表現としては偉丈夫と言った方が良いのかもしれないが、彼の開けっぴろげな明るさは、皇帝というよりむしろ浜辺にたむろするサーファーの兄ちゃんである。玉座に座っているよりも、ジャージでコンビニ前に座り込むヤンキーが似合ってしまう。謁見の間で時折見せた威厳がなければ、完全に残念なナンパ男にしか見えない。そんな彼は、当たり前のように俺よりガタイが良い。男性陣の中で最も身長が低いやせ型の俺は、マルクト人の平均身長はキムラスカ人より高いのだから仕方がないと言い聞かせることにした。俺はまだ成長期なので奴らを越す余地は残されている。

 ふと、俺達をエスコートした青年軍人に目をやると、彼が常に浮かべている笑顔がなんとなく儚くなっていた。彼はアスラン・フリングス少将だ。彼はジェイドよりも若く、ジェイドと違って穏やかな物腰の柔和な青年であり、ジェイドよりも地位が高く、ジェイドよりも人徳がありそうな、つまりは陰険ジェイドと比べるまでもなく素晴らしいように思える人物である。おまけに銀色の短髪と琥珀の眼差し、浅黒い肌の容貌は甘く整っている。さらに今のところ、彼は常識人サイドだ。そのため、客人の前で残念過ぎる姿を晒す主に遠い目をしている彼には、親近感と同情を覚える。できれば彼には頑張って主の手綱を握っていただきたい。

「そんなに硬くなることはない。楽にしろ。なんなら、女性陣はこっちで寛いでくれてもいいぞ」

 そんなセクハラまがいのセリフを吐いたピオニー陛下は、すぱーんと自身の両膝を叩いた。ダメなおっさんである。それから彼は思い出したように俺の方を見た。

「ああ、ルーク殿ならこっちに来てくれてもいいぞ。ジェイドと違ってむさ苦しくないからな!」

「お気遣い頂きありがとうございます。謹んでお断りさせて頂きます」

 俺はつい反射で間を置かずに即答した後で、これって不敬だろうかと考えてしまう。いやいや、これは不敬じゃない。問題なのは皇帝であって俺ではない。するとジェイドが深々とため息を付き、それからにこやかに言った。

「陛下。これ以上調子に乗ってマルクトの恥部を露出するのはやめてくださいね」

「聞いたか!? これだからこっちのジェイドは可愛くないんだ」

 いや俺に話を振られても。

 ピオニー陛下は「あっちのジェイドは可愛いのに!」と言って部屋の隅を指さす。そちらに居るのはブウサギだった。……このおっさん、知り合いの名前を家畜(推定ペット)に付けてるのか。ジェイドざまあ。





ピオニー「――つまり、ルークとの接点がない俺が人気投票に参加するのもアレだから、強引にエピソードを捩じ込んだわけだ」
ルク兄「無理に参加される必要はありませんよ」
ピオニー「次はアスランも巻き込んでみるか!」
ルク兄「陛下は職権乱用という単語をご存知ですか。フリングス将軍が鶏の首を絞めたような顔をしていますよ」
アスラン「恐れながらルーク殿。私はそこまで大仰な顔はしておりません」
ルク兄「ご謙遜を。無理に出番を与えられれば、今にも苦しみ藻掻いて床の上をのたうち回りたそうな顔ではありませんか。そうですよね」
アスラン「…………ルーク殿にご心配頂けるとは身に余る光栄です」
ピオニー「おーい。お前さんも十分職権乱用してるぞー」



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