TOAに誰かを突っ込むネタについて
萌え 2013/10/27 22:56
・ルーク視点
・もうヴァン師匠と敵対している
・ヒソカがTOAにこんにちはしたようです
ヴァン師匠の隣に、変な格好をした男が立っていた。グランコクマの街で小芝居をしていたピエロのような化粧をして、青色の髪をオールバックにしている。さらにひょろりとした長身を包んでいるのも、ピエロを思わせる妙な衣装だ。ただ、剥き出しの腕の筋肉が逞しく盛り上がっていることと、どこか得体の知れない気味の悪い雰囲気が、俺達に警戒心を強く抱かせた。
その不気味なピエロ男は、俺の隣に立っていたルイを見つけると、一度目を見開いてから、狐のようににたりと笑った。気持ち悪い。
「わお★ 久しぶり、ルイ君◆」
親しげに話しかけてきた様子を見て、ジェイドがルイに問いかけた。
「知り合いですか?」
「知りません」
惚れ惚れするような即答だった。ルイはむっつりとした無表情でピエロ男を見つめたまま、素っ気無い返事をした。すると、ピエロ男はわざとらしく肩をすくめる。
「相変わらずつれないなぁ……◆」
「ね、ねえルイ。本当に知らないの?」
今度はティアが恐る恐るルイに尋ねた。よほどピエロ男が不気味だったらしい。同じことを考えていたアニスとイオン、ついでに俺にも見上げられたルイは(ちなみにジェイドとガイはヴァン師匠達から目を離さないでいる。警戒しているのだろう)、深々と溜息をついた。
「不本意だけど、知り合いだ」
「ボク達、仲の良いお友達だよね★」
「それはまずない」
ピエロ男の言葉を否定する速さは、やはり惚れ惚れするような素早さだった。
「お前、何でここにいるんだよ」
「それは勿論、貴殿に対抗するためだ」
気を取り直したらしいルイがそう問いかけると、ピエロ男でなくヴァン師匠が答えた。
「この男は貴殿並みに強い。貴殿を殺すことも不可能ではないだろう」
「……随分と、ご慧眼で」
ヴァン師匠の言葉に、ルイは苦々しく呟いた。その表情が珍しかったので、俺はふと不安になった。あのピエロ男は強いらしいが、でもルイだって強い。負けるなんて考えられない。それなのに、ルイはどうしてそんな顔をするのだろうか。
「ルイ、負けたりなんかしないよな? だってルイはすっげー強いもんな?」
「ごめん無理」
だがルイは、俺の問いかけをあっさりと否定した。
「無理とは?」
訝しげな顔をしたジェイドが尋ねる。ジェイドも、ルイがそんなことを言うとは思わなかったのだろう。だが、ルイはやはりあっさりと答えた。
「アイツ、普通に俺より強いから」
「……ハァッ!?」
さらっと言われた答えに、俺は思わず素っ頓狂な声を上げた。だって、ルイは強い。ひょっとすると、ヴァン師匠よりも強いかもしれない。それなのに、そのルイよりもあのピエロが強いだなんて、到底信じられなかった。
ピエロ男は可笑しそうに笑った。
「もう、謙遜するなよ▼ ボクは相手がルイ君でとっても嬉しいよ★ ここの連中は殺り甲斐のない連中ばかりでさ◆」
「俺は嬉しくない。つーかキモイから猫撫で声出すな耳が腐る」
驚くほど愛想のない返事だったが(俺はルイにこんな対応をされたことがない)、ピエロ男は気にもしていないようだった。そして彼は、突然不気味な笑みを深める。すると、急に背筋が寒くなった気がした。
「そんなこと言わないでさ、さあ、ボクと殺し合いしようか★」
ピエロ男は、酷く残忍なことを楽しそうに言った。なんだあれ、怖い。気持ち悪い。思わず自分の両腕を擦っていると、ルイが何でもないような声で返事をした。
「断る」
気付くと、ルイが俺の前に立ってピエロ男の視線から隠してくれていた。見慣れた広い背中にほっと安堵する。やっぱり、ルイがあのピエロ男に負けるなんて信じられない。きっと嘘だ。そうに決まっている。だってルイは、どんな無茶苦茶に不利な場面でも、俺を助けてくれたのだから。
「そんなことより、俺と取引しようぜ?」
ルイは、唐突にそんなことを言い出した。すると、ピエロ男の気持ち悪い雰囲気が少し消える。
「……条件次第かなぁ◆」
その言葉に、ルイが少し笑った気がした。
「そこのオッサン、殺してくれ。当然、オッサンからの依頼は破棄だ。それから、“ここ”にいる限り、敵対するのもやめてもらう」
オッサン、というのはヴァン師匠のことなのだろう。ルイが、あの優しいルイが簡単に命を、それも俺の師匠の命を取引の材料に使う姿に、俺は呆然とした。きっとこれも必要なことなのだろうとは思うけれど、旅を始めてからしばしば見せ付けられる残酷なやり取りにはどうしても慣れない。
「生憎だがな、ルイとやら。この男は強者との殺し合いを望んでいる。貴殿がそちらに組する限り、ヒソカは引き抜けんぞ」
「その通り★ オマケにさ、全て終わったらグランツさんもボクと殺し合いしてくれるって約束なんだ◆ ルイ君はこれを超える条件が提示できるかい?▼」
続けられたヴァン師匠とピエロ男の言葉にも、俺は呆然とした。どうして師匠は、自分の命を簡単に取引に使えるのだろうか。殺されるのが怖くないのだろうか。俺は殺すのも、殺されるのも怖いのに。
一方のルイは、余裕があるような風情で笑っていた。
「できるさ。俺は、ヒソカが笑顔で飛びつく条件を持っているからな」
そう言うと、ルイは意地の悪い顔をする。ヒソカというらしいピエロ男は、興味深そうな目をして言葉の続きを待っていた。
「ヒソカ。俺の条件を呑むなら――1回だけ、クロロとお前が一騎打ちするお膳立てをしてやるよ」
クロロとは一体誰のことだろうか。俺が首を傾げていると、ヒソカがぽかんとした顔になっていた。そればかりか、先ほどまでの気持ち悪い雰囲気が霧散している。
「………………え?◆ ちょ、ちょっとルイ君、今なんて言ったの?◆」
「お前がクロロと一騎打ちするお膳立て」
ヒソカは、ルイの言葉が信じ難いようだった。少し慌てたように言葉を重ねている。
「本気?▼ ねえ本気?◆ ボク、本気にしちゃうよ?◆ ていうか、ボクが言うのも何だけど、そんなことしてもいいの?▼」
「アイツがどうなろうと俺の心は痛まない」
「…………クロロ、そのうち泣くんじゃないかな?◆」
***
ルイ「勝手に泣き喚けよ」
まさかのヒソカこんにちはでまさかのクロロとばっちり涙目。
今回ばかりはクロロは悪くない。というか何もしていない。
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