更新履歴・日記



ツナ兄さんと雲雀さん
萌え 2012/10/11 15:10


・ツナ兄さんと雲雀さんと草壁さん
・草壁さん視点
・黒曜編後





 実際のところ、自身の上司(……)である雲雀恭弥と後輩である沢田綱吉は、相性が良い組み合わせではないかと草壁は思う。本能的に動く雲雀と理性的に動く沢田は、一見すると正反対の性質なのだが、歯車が噛み合うと非常に上手くいく。それは雲雀と草壁の関係とも似ているが、決定的に違うのは、草壁が雲雀にとっての秘書的立場であるのに対し、沢田は雲雀にとっての参謀的立場に成りうる可能性が高いということだ。一体どうやってそのような人間性を育んだのか、沢田はあらゆることを思考する。物事を疑い、情報を集め、推測し、結論を弾き出す。かつて六道骸という男が騒動を起こした際は、彼が並中生を執拗に襲う理由をいち早く推測し、退ける助けとなった。草壁が行うのはあくまで雲雀の行動の補佐であり、その指針を叩き出すものではない(気難しい雲雀に付き合う草壁の仕事は多岐に亘るため、それもまた容易に真似できるものではないのだが)。だが沢田にはそれができる。草壁にとって、彼のような人材は是非に欲しい。

 そんなことを考えながら、草壁は廊下で向かい合う雲雀と沢田を眺めていた。

 雲雀は沢田の隣に立っている、山本武と獄寺隼人という2人の男子生徒に一瞬だけ眉を顰めると(彼は他人も自分も群れているのが嫌いなのだ)、珍しくそれに対して言及せずに沢田に目を向けた。

「やあ、雑食動物」

 雲雀は、自分以外の大抵の人間を草食動物と称するが、ただ1人、沢田だけは雑食動物と呼ぶ。同時に雑食動物は嫌いだとも漏らしているが、それは沢田の身体能力が低いことや戦いの回避が上手いことを指して言っているだけである。戦いの回避に関しては、逆を言えば“望む相手との戦いをほぼ確実にお膳立てできる”ということでもあるため、戦闘狂(バトルジャンキー)である雲雀はむしろ何度かその恩恵に与っている(当の沢田は、自身の戦闘回避と雲雀への心象を良くするためにそうしているのだろうが。それが必要な程度には、沢田はよくトラブルに巻き込まれている)。そのため、総合的に見れば雲雀は沢田に対して好意的である。本来ならば、雲雀の補佐である草壁は、頻繁にトラブルを持ち込む沢田を忌避しても良いのかもしれない。だが沢田は、持ち込む戦闘を雲雀の手に負える程度のものに計算しているフシがあるため、草壁は黙認していた。彼が持ち込むトラブルは戦闘を好む雲雀の良いガス抜きにもなっている。

「こんにちは、雲雀さん。それから草壁さんも」

 対する沢田は、一般生徒(という枠に当て嵌まるのか疑問だが)にしては稀なことに、ごく普通の学友のように雲雀に応えた。慣れもあるだろうが、それなりに度胸があるところは風紀委員にも雲雀の側近にも向いている。沢田に応えて草壁も軽く頷くと、雲雀は沢田の隣にいる2人を無視して話を続けた。

「最近は何か面白いことはないの?」

 彼の言う“面白いこと”とは、勿論戦いのことだ。雲雀にとっての沢田は、よく面白いものを持ち込んでくれる存在になりつつある。そんな雲雀に、沢田は苦笑して首を横に振った。

「最近は平和なので、特にありませんよ。風紀としては、平和なのが1番だと思います」

「並盛が平和なのは良いことだけど、腕が鈍るのは面白くないんだよ」

「雲雀さんの相手が出来る人は滅多にいませんからね」

 沢田は雲雀をさらりといなす。初対面の時はともかく、今では慣れたものである。だが沢田が穏やかに話を終わらせようとしていることなど考えるはずもないのが、彼の取り巻きである。トラブルメーカーである獄寺は、獰猛な目付きで雲雀を睨み付けた。

「……っておい! 十代目の右腕である俺を無視して、馴れ馴れしくするんじゃねえ!」

「沢田だ」

「げふっ」

 獄寺が雲雀に噛み付いた瞬間、すかさず沢田の肘鉄が獄寺の腹に埋まった。大した威力でなくとも入った場所が悪かったのか、獄寺は呻いて腹に両手を当てた。獄寺は沢田に構われたのが嬉しいのか、痛みに悶絶しながらも心なしか嬉しそうにしている。その様子を、雲雀は不機嫌そうに見ていた。

「いい加減、その草食動物共を何とかしなよ。会う度に煩いんだけど。どっちも弱いし」

「――そんなことはないと思うのな」

 雲雀は不満を沢田に漏らしたが、それに応えたのは山本だった。雲雀を見る彼は、好戦的な笑みを浮かべていた。そういえばこの男は雲雀と似て負けず嫌いだったか、と草壁は思い出した。

「以前、2人まとめて僕に伸されたのを忘れた?」

「あの頃と今は違うだろ。今なら俺達でも勝てるかもしれないのな」

「――ワオ。でかい口を叩くね」

 山本の言葉に、面白そうに笑った雲雀が懐からトンファーを取り出した。その瞬間、示し合わせたように草壁と沢田の目が合った。互いに「もう放置して逃げよう」という目をしていた。

 草壁は雲雀を、沢田は山本と獄寺を放置してそそと壁際に移動した。瞬く間に武器を振り翳しての戦いが始まる。それをやや離れたところで見守りながら、草壁は沢田と共にため息を付いた。

「……うちの2人がすいません」

「……いや、うちの委員長も済まなかったな」

 このやり取りは、既に飽きるほど繰り返されている。とっくに学習した沢田は、懐から何やら取り出した。――それはトランプだった。

「決着待ちの間、2人でババ抜きでもしません?」

「準備がいいな」

「3日に1度はこうなるんで、常に持ち歩くようにしました」

「では付き合おう」

 こうして草壁と沢田は地味にババ抜きを始めた。彼らの決着が付いたのは、ババ抜きに飽きて七並べをし、七並べに飽きてスピードを始めた頃だった。今日も雲雀の勝ちだったらしい。制服についた埃を払いながら、(似合わないことに)いそいそとこちらへやって来た雲雀に、草壁はこっそりと肩を落とした。

(そんなに沢田とゆっくり話したいのなら、風紀にスカウトすればいいのに)

 そろそろ気を回して沢田を勧誘しておくべきだろうか、と草壁は半ば本気で考え始めた。





ツナ兄「草壁さんとは完全に苦労人仲間になってますよねー」
草壁「確かにな。それはともかく、これは委員長のためのテコ入れであって、あまり俺が出張るのは良くないことだ」
ツナ兄「……草壁さんとの苦労人コンビ対象のテコ入れってことにしません?」
草壁「駄目だ。ところで沢田、学ランに興味はないか?」
ツナ兄「風紀には入りませんからね。それに俺の見た目に学ランは似合わないと思います」
雲雀「君、色素が薄いからね」
ツナ兄(ひぃ、びっくりした!)
雲雀「風紀に入るのは構わないけど、あの取り巻き2人は置いてきてよね。たまに相手するのは良いけど、常に群れられると苛々する」
沢田「風紀には入らないので大丈夫ですよ」
雲雀「…………」
沢田「だ、大丈夫ですよ」


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