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幸せな少女とそうでもなさそうな子猫
萌え 2023/03/17 23:11


・ハリ子の二歳年上にポタ兄さんがいる世界
・ハリ子視点
・ポタ兄がホグワーツ入学〜ハリ子をブラック邸に引き取るまでダイジェスト





 図書館で読んだマザーグースの詩には、“男の子はカエルにカタツムリ、子犬のしっぽで出来ている。女の子は砂糖とスパイス、それに素敵なもので出来ている。”なんて書いてあった。それを信じるほど夢見がちではいられなかったけれど、ハリーは兄から“素敵なお姫様”として扱われていると知っていた。家の中で一番狭い部屋を兄妹共有として宛がわれても、それを苦痛だと思ったことなど一度もなかった。一つのベッドで一緒に眠り、起きたら一番におはようの挨拶をして、兄妹そっくりな癖っ毛を優しく櫛で梳かされ、可愛らしく結んでもらう。身支度を済ませたら、二人で一緒にペチュニアおばさんの手伝いで朝食を作り、リビングの隅で一緒に食べる。学校に行くときも、家で家事をする時も、ハリーと兄は大抵一緒だった。時々ダドリーから意地悪されそうになっても、兄が優しく庇ってくれるので怖くない。ペチュニアおばさんもバーノンおじさんも、ハリーたちのことをあまり好きではないのが分かるので肩身の狭さはあるけれど、それでもハリーは幸せだった。この幸せが続くのなら、毎年の誕生日プレゼントがなくなっても平気なくらいだった。

 だから、兄が魔法使いだと言われて遠くの学校に行くことになった時、ハリーはとても寂しくて悲しかった。その時のハリーは9歳の誕生日だったのに、泣いてしまいそうだった。もちろん、ハリーを大切にしている兄が、簡単に遠くの学校へ行くことを決めたわけではない。

 初めて入学案内の手紙が届いた時は、中身を軽く読んですぐに「おじさん、変な宗教勧誘の手紙が来てる」とバーノンおじさんに渡していたし、日増しに増えていく手紙をおじさんと一緒にかき集めて庭で燃やし、ついでにその炎でマシュマロを焼いて子ども三人で食べた。時にはペチュニアおばさんと「この手紙、着払いで送り返せませんか」と頭を悩ませていた。問い合わせやクレームを入れようにも、返信方法が分からなかったらしい。警察に通報するのはおじさんが嫌がったため、最終的にはリビングを埋め尽くすほどの手紙から逃れようと、車を何時間も走らせた遠い場所に行き、船まで乗って誰も来ない島まで行くことになった。そんな場所に、古びた家屋の扉を倒して現れた髭モジャの大男に、兄は笑顔で「随分遅いお越しでいらっしゃいますね」と言っていた。おじさんもおばさんもダドリーも部屋の隅で震えていたのに、兄は恐怖を感じるどころか怒っているようだった。大男がハリーの誕生日にと一抱えもあるケーキの箱を差し出してきたが、「お気持ちだけで結構です」と丁寧な言葉でぴしゃりと断るくらいには怒っていた。それから、「ダドリー、知らない人のケーキを食べないように」と大男の目の前で注意するくらいには(ちなみに後日、兄が「おあずけさせたから」とペチュニアおばさんと一緒に大きなスポンジケーキを焼いてくれたので、みんなで食べた)。しかし兄が怒るような大男は、実は魔法使いの学校の関係者だった。

 そんな事情で結局、兄はホグワーツという全寮制の学校に入学することになってしまった。兄がおじさんとおばさんに対して、今まで育ててくれたお礼を丁寧に告げて、「俺がいない間にハリーを守って欲しい」とお願いしてくれたから、兄がいなくなった後でもハリーが辛い思いをすることはなかった(どうやら兄は、ダドリーにも「お前の方が強いんだから、その力でハリーを守って欲しい」と言ってくれたようで、ダドリーから意地悪されることもなくなった)。そうなってからようやく、ハリーはおじさんたちが“魔法使いというよく分からない変なもの”と関わらないように守ってくれていたことに気付いた。魔法使いが本当に変なものなのかハリーにはまだ分からなかったが、自分と兄がただ嫌われていただけでなかったことを知って安心した。けれど兄がいない寂しさは拭えず、ハリーはずっと悲しい思いをしていた……その年の冬まで。

 ホグワーツが冬の長期休暇になったという初日に、ロンドンで買ったお土産を抱えた兄が家に帰って来た。おじさんにはシックなネクタイピン、おばさんには上品なハンカチ、ダドリーには人気店のドーナツを渡した兄は、ハリーの手を握って告げた。

「きっとハリーにもホグワーツの入学案内が来る。再来年の夏休みにこの家を出て、俺や俺の友達と一緒に住まないか?」

 どうやらハリーの知らない間に、兄とおじさんたちの間で何度も手紙でやり取りしていたらしい。おばさんに「好きにしなさい」と言われたので、ハリーはしっかりと頷いた。

 それからハリーは長期休暇になる度に家を出て、兄が住むブラックさんの家に身を寄せた。そこは肖像画が動いたり変わった小人がいたり、ダーズリー家では見かけないものが溢れていた。兄の友人がくれたチョコレートのカエルが飛び跳ねた時は、ハリーも飛び跳ねそうになった(その隣でもう一人の友人が「普通、マグル育ちの女の子にカエル渡す?」と呆れていた)。兄は魔法使いの世界の面白いものを見せてくれるだけでなく、ハリーの宿題をみてくれた。優等生だという友人は魔法使いの勉強を教えてくれたし、もう一人の友人は使い魔だという大きな狼と一緒に遊んでくれた。長期休暇は楽しくてあっという間に過ぎてしまうので、ハリーは早くホグワーツに入学できればいいのにと考えるようになった。

 そうして時が過ぎ、ハリーが11歳の誕生日を迎えた日がダーズリー家で過ごす最後の日となった。数日前にホグワーツからの入学案内が届いたからだ。最後の夜はちょっぴり豪華なメニューになり、おばさんが得意料理を振舞ってくれた。翌朝、ハリーが「今までありがとう」と伝えると、ダドリーがおばさんの後ろで少し涙目になったのが不思議だった。

 ハリーは幸せいっぱいだった。ホグワーツで新しい友達ができる期待と、兄やその友人たちとたくさん過ごせる喜びしか頭になかった。だから、数週間前に拾った黒い子猫を見て兄がこっそり頭を抱え、友人の一人が世にも恐ろしい顔をしたことなど、全く知りもしなかったのである。





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兄の友人二人はもちろん親友とリドルさん。黒い子猫はもちろん卿。

親友は女の子の扱いが分かってないので、マグル育ちの女の子に普通に動くカエルチョコレートを渡す暴挙に出る始末。本人は完全に善意で、ハリ子も割と平気なので事なきを得ています。イギリスではカエルの形のお菓子は一般的らしいですが、動きはせんだろうに。それでも百味ビーンズを渡すより遥かにマシ。あれは味がおかしい。ゴキブリ・ゴソゴソ豆板とかセンスどうなってんだ。あとロンの舌に穴を開けたらしいすっぱいペロペロ酸飴とかヤバい。



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