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高校生活終了のお知らせ
萌え 2022/08/11 23:35


・景光さんと麻衣兄同居シリーズ
・麻衣兄さん視点
・麻衣兄さんが高校卒業まで帰れなかったIF
・景光さんから矢印はあってもなくてもOK
・オリジナル公安刑事(佐枝)が出ている





 気付いたら現代日本に帰れないまま高校卒業を迎えてしまった件について。

 そういえば平成だか令和だかの名探偵・工藤新一君がいつの間にか復活していて、世の工藤君ファンが大喜びしていた。つまり名探偵コナンの原作時間は終了し、黒の組織は壊滅したということだろう。警察関係者の皆様、お疲れ様です。つい最近まで小学生やってた工藤君は以前よりメディア露出が減ったらしいが、相変わらず日本警察の救世主をやっていると思われる。ちなみに今は高校生探偵ではなく大学生探偵として、日本最高峰の東都大学に通っているとか。マジかよ工藤。おまけにイケメン四人組の一人として有名らしく、大学生探偵三人と若きマジシャンの卵が……いやそいつ怪盗キッドじゃねーか! そういえば怪盗キッドも姿を現さなくなったので、まじっく快斗も原作時間終了ということなのだろう。とりあえず日本でドンパチやらかす組織が黙らされたということなのでありがとう怪盗。いや多分そっちは白馬君(探偵+警察のお偉いさんの息子)も頑張ってるはず。あれ……西の高校生探偵は……?

 そういえば眠りの小五郎は殺人事件ではなく、人探しや浮気調査といった従来の仕事で活躍しているとか何とか。探偵ってそれが普通だよな。小五郎のおっちゃんは公式でもネタにされるくらいには異様な麻酔耐性が心配されるので、今後は大きな怪我も病気もなく元気に探偵やって欲しい。おい工藤、お前のせいだぞ。

 他人の近況をなんだかんだと思い浮かべている俺自身の進路は就職である。俺の将来の夢は数学教師だが、そのためには大学に通う必要がある。現役で通うには二度目の大学受験勉強と学費の工面が必須だが、特に後者が厳しい。奨学金を借りる手もあるが、そちらは返済が必要になるため簡単には選べない。そしてなにより教師になりたいのは本当だが、それはあくまで俺自身の夢――異世界においては俺のアイデンティティを守る手段の一つに過ぎない。麻衣の兄として傍に居た俺は、彼女がSPRの影響で心理学を学びたがっていることを知っていた。それなら俺は就職して少しでも金を貯め、彼女が望む大学へ進学するための資金を作りたい。大学に合格したよと弾けるような笑顔で報告して来た彼女を、俺は今でも忘れていない。例え一時的な関係に過ぎなくとも、麻衣は俺の大切な妹で家族だった。

 就職は社会人としての第一歩である。社会に出て働き始める以上、学生の頃のように甘く見てもらえることもなくなる。一人暮らしである以上、自分一人の稼ぎで自分を養い、更には蓄えを作っていかなければならない。今までは失踪した唯さんが家賃を払ってくれている家に住んでいたが、年度末を最後に出ることを決めたのでそちらの負担もしなければならない。一気に増える……もとい、元通りに戻る生活の負担に頭を抱えたくなるが、そんなのは社会人の大半が抱えていることだ。今までが楽をしていたのだから、それを有難く思っておくくらいがちょうどいいだろう。

 就職先選びは案外難航しなかった。というか、余所様に披露できない魔術技能(テロに便利)持ちの俺を公安警察が放っておくはずもない。タイミングよく俺に釘を刺しに来た公安刑事の佐枝さんを逆に取っ捕まえ、警察関係者が経営している探偵事務所の事務員兼調査員として斡旋してもらった。コネ(国家権力)って素晴らしい。しかし探偵事務所の所長には大歓迎されたので、普段の仕事ぶりが窺えて涙を禁じ得なかった。恐らく俺もこれから警察に捜査協力の名目でこき使われるやつ。学生じゃなくなるので、今までと違って遠慮がなくなるに違いない。20歳を迎えるまでは未成年という括りでお手柔らかに願いたい。あとそれまでに現代日本に帰りたい。

 なおSPRでの正社員登用という名の就職は、所長に打診する前に佐枝さんにぶった切られた。理由は大変分かりやすく、国外の組織に就職するなとのこと。言われてみればその通りである。俺が持つクトゥルフ神話の知識と技術は、お手軽に他国へ流出して良いものではない。例えば今の俺が某動画サイトで「リアル魔女っ娘です☆」と浮遊呪文の一つでも披露しようものなら、動画投稿当日から俺は身柄と命を狙われる。身柄というのは知識面の要素が強いが、命の方はまあ……特異な人間は反感を向けられやすいし、異様な“崇拝”の対象にもなりやすいし、生贄向きでもあるということだ。今まではなんやかんやで警察がもみ消せる範囲でしか動いてなかったし、警察の方も俺の知識を利用する+未成年を守るという名目で大事にしてくれたので上手くいっていたのである。高校卒業後に社会人デビューした身であり、今後は後者の言い訳が徐々に使いづらくなるため、自分の立ち位置はきちんと考えておかなければならないのだ。少なくとも、知識の流出という部分に目を瞑ったとしても、一介の研究組織に過ぎないSPRでは真正の魔術師の秘匿には向かない。俺は保身のためなら国家権力に身を委ねるのもやぶさかではないのである。

 また、捜査機関である警察は知識と技術の利用を優先するが、研究組織であるSPRは解析を優先する。“識り過ぎる”ことが破滅に直結する系魔術技能のユーザーとしては、正直なところ警察よりもSPRの方が事故率が高そうだと感じるのだ。例えば、読むだけで目が急速に老化して最終的には失明する魔導書があったら、SPRはどうにかして読もうと試行錯誤するだろうが、警察はむしろ読まずに安全に処分する方法を探す。つまりはそういうことだ。ちなみにその魔導書は“黄衣の王”という戯曲であり、クトゥルフの中でも有名どころである。要はこの世界にガチで存在するヤベー本ということになる(ただし最悪の書ではない)。もう魔導書は全部燃やして焼き芋でも作ろうぜ。ちなみに“黄衣の王”は実在のホラー小説なので、興味のある人は購入できる。

 ところで、高校時代に散々世話になったり世話をした緑川唯さん――改め、諸伏景光さんは高校の卒業式の日に戻って来た。主張の強い花束を抱えて横断歩道の向こう側に立っているのを見つけた時は思わず他人の振りをしたくなったが、あまりにも真剣な顔でお祝いを告げてくるので立ち止まってしまった。少女漫画なら恋が始まるシーン間違いなしだったが、残念ながらこの世界のジャンルはラブ・クラフト的なコズミックホラーおよび推理アクションである。後者では関係者がしょっちゅうラブコメしているが、俺たちの界隈では前者の方が遥かに影響が強い。邪神様の前でラブコメやってる奴がいたら、そいつは人間ではなくニャルラトホテプの化身か何かである。奴は自分の上司だろうが何だろうが、構わず嘲笑していく生粋の愉悦部スタイルだからな……。

 どうやらどこぞの職場(どう考えても警察関係。偽名を使うなら公安か麻取か組対辺りだろう)に戻ってそうな諸伏さんとは、さすがにもう同居はしていない。同居していたアパートは引き払い、(佐枝さんお勧めの)職場に通いやすい場所へ引っ越したからだ。だが再会した翌日には内見と称した諸伏さんと鉢合わせ、新居のお隣さんとなることが判明した。行動が早すぎないか? 推定本名を明かした辺り、身辺で何かしらの変化があったのだろう、色々と隠さなくなっている。さらには就職先の探偵事務所へも緑川唯として出入りをし始めたので、早々に深く考えることを放棄した。好きにやってくれ。

 好きにしろと考えていたからか、以前の同居時代から遠慮を投げ捨てたのか、諸伏さんはぐいぐい来る。一週間に二、三回は夕食のおすそ分けを貰うし(大変美味しいので嬉しい)、一ヶ月に一回は遊びに行こうと誘われる(どストレートに“金を貯めたい”と断っても、誘っているから奢ると言われる)。今は疑似兄妹をやっていないため完全なる赤の他人だが、距離感は同居時代を踏襲しているので大変に近い。部屋が分かれてるだけで同居しているのと変わらない状態である。お隣さんという名の二世帯住宅かもしれない。俺も鈍感系主人公ではないので、諸伏さんがこちらを囲い込みに掛かっていることが滅茶苦茶分かる。囲い込まれたところで、そのうち突然ウナギのごとくぬるっと居なくなる予定なので、実情はなんかご飯くれたり遊びに連れて行ってくれる隣のお兄さんでしかないが。

 なお、ご飯くれる系のお兄さんお姉さんは諸伏さんだけではない。SPRバイト時代から、ぼーさんこと滝川さんと巫女さんこと綾子さんがちょくちょくお土産(お菓子)をくれたりご飯を奢ってくれていた。それを考えると諸伏さんも似たり寄ったりなのだが、差し入れという名の餌付け回数と距離感の近さ、何より遊びに連れ出そうとする辺りで一線を画している。ぼーさんと綾子さんは、俺がバイトを優先していることを知っているので、積極的に連れ出そうとはしなかったのだ。今は就職しており、休日で副業をこなしているわけでも……いやたまにこそっと警察に協力しているな? ともかくそれを除いて副業をしているわけでもないので、学生時代よりは遊びのお誘いに応えやすい。別に諸伏さんが嫌いというわけでもないため断る理由もなく、元クラスメイトとも就職を機に疎遠になっているため(真砂子ちゃんとは今でも連絡を取り合うくらいには仲良しだが)、必然的に余暇で遊び目的の外出をするのは諸伏さんとばかりになっていた。金は大丈夫なのかとか、この人友達いないのかとか、その辺りは気にしないことにしている。いい年した大人の人付き合いに口出しする趣味はないので。

 とは言え。

(この人、彼女作り損ねてそうだな)

 フツメンの俺とは比べようもなく顔が良く、性格も文句なし、恐らく収入もそう悪くはないと思われる男だ。引く手はあまただろうに、そんな気配が微塵もない。そればかりか職場の若い子を連れ出して……いやこの表現だと犯罪臭いな。世話を焼いてばかり、というのは何とも言い難い。俺に気を遣っているならやめてくれと言うところだが、純粋に気を遣っているわけではなく、こちらを懐柔する気満々でごり押しされているのが分かるため何も言えない。家庭を築きたい願望があるならそのうち叶うといいね、と目を逸らしておく。多分、俺に構うのをやめたらあっさり叶うと思う。

 そんな諸伏さん、もとい唯さんがある日真っ青な顔で探偵事務所にやって来た。彼は震える手で一通の封書を所長に差し出す。

「夜戸浦市の消印で婚活パーティーの招待状が届いたんだけど心当たりがないどうすればいいですか」

「特殊性癖がないなら欠席で送り返しましょう」

 前言撤回。この人、俺に構うのをやめたら変なのに引っかかって抜け出せなくなってそう。思わず口を挟んだ俺の一言に所長は腹を抱えて大爆笑し、たまたま事務所にいた元陸自の調査員はドン引きした顔を唯さんに向けたのだった。





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囲い込みしてくる景光さん:兄さんは「グリリバの甘い声だ……」と内心複雑な思いをしている。何かのドラマCDだろうか。
景光さんは景光さんで、仲良しの自負はあるものの一線引かれてる自覚もあるので、協力者になってくれと言いづらい状況が続いている。

真砂子ちゃんと仲良し兄さん:兄さんの姿を霊視してる+受け入れてる真砂子ちゃんなので、兄さんは真砂子ちゃんにドチャクソ甘い。真砂子ちゃんのおねだりは秒できく。(元来の世話焼き+振り回されるのは割と好きなので、たまに真砂子ちゃんに振り回されてるナル君が羨ましい)

夜戸浦市の婚活パーティー:99%の確率で深きものの集い。出席したら魚臭い男女からモテモテになれる。深きものの中には人間の男女の区別がついてなさげなのもいるので、本当に男女両方からモテる。



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