テイルズオブってる深窓の令息
萌え 2022/04/25 23:26
・ルク兄さんがザレイズの世界にいる
・なんかコラボしてることに気付いてしまう話
「銀ちゃん、あっちのルークはルークだけどお姫様みたいアル」
「あーいうのはそこんとこ気にしてるのがテンプレだから言ってやるなよ神楽」
「でも髪の毛はこっちの方がサラストアル。きっといいもん食ってるアルよ」
出会い頭にものすごく見覚えのある二人から散々言われている件について。ここはかぶき町の住人を見習って突っ込むべきだろうか、さながら某眼鏡の様に。とりあえずいいもんは食ってます。王族なので。この世界にきてからもいいもん食ってます。ルドガーを筆頭とした料理上手集団がいるので。
(――って違ぇよ! ここテイルズだから! 銀魂じゃねぇからァ!!)
世界観が違い過ぎて震える。免疫力ガタ落ちによる寒気ではないと信じたい。
テイルズのソシャゲとしか思えない世界に護衛騎士と従者ごと放り出された俺だが、アジトの食堂で例のごとく読書に勤しんでいた俺の心臓を強襲したのは、どう考えても週刊少年ジャンプにいた銀髪天パ侍とチャイナ娘のコンビであった。今の俺は深窓の令息スペックなので強い刺激を与えると簡単に寝込みますやめてください。
(……コラボか? ソシャゲっぽいだけあってコラボ企画か???)
そうでないなら何だというのだ。思い返してみれば俺もコラボ御用達の場所からやって来たようなので、彼らもそのクチだろう。ワイズマンだったか、ちょっとあちこちから人間を拉致し過ぎでは?
俺は一瞬悩んだが、とりあえずにっこりとお上品に微笑んで見せた。彼らはギャグマンガ時空の人間だが、俺は結構簡単に倒れる要介護(元)貴族である。かぶき町のテンションで絡まれたら普通に死ぬ。神楽ちゃんが“お姫様”と言っているので、それに乗っかっておいて適切な距離を保つ所存だ。彼らの世界の将軍様は雪山でパンイチどころか何か色々すごいことになっていたが、お姫様路線ならまだマシと思われる。マシであってくれ。
「――こんにちは。新しく加わった方々ですか?」
「私はかぶき町の女王の神楽アル。ルークみたいだけどやっぱり違うヨ。お姉さんアルか?」
やっぱり神楽ちゃんじゃねぇか。テイルズにかぶき町とかねーわ。そしてナチュラルに性別を疑われていた。まさかそこまで込みでお姫様呼ばわりされているとは思わなかった。いや、そういえばオールドラントでもマルクト兵に女性と間違われたことがあったような。マルクトはキムラスカより平均身長が高いせいだと思いたい。
「どちらかというとお兄さんですね。名前はルークですが、ここではアルバートと呼んでいただいています」
「へぇ。俺は銀時だ。万事屋やってるから、依頼があるならいつでもいいぞ」
(本物の銀さんじゃん……洞爺湖の木刀持ってる……)
こう……何と言えばいいのだろうか。顔立ちは整っているのに、死んだ魚のような目が全てを台無しにしている感じ。戦えば強いはずだが、それを一切感じさせない残念なその日暮らし的雰囲気が漂っている。そして極めつけのc.v杉田。完璧な銀さんである。いや完璧も何も本物の銀さんだが。
銀さんは俺にさらっと万事屋を宣伝すると、キッチンの方へ向かって明るい声を上げた。
「クレアちゃーん! 生クリームマシマシの昇天ペガサスMIX盛りフルーツパフェお願いしまぁーす!」
(キャバ嬢の髪型ネタをテイルズ界に持ち込むな!)
昇天ペガサスMIX盛りとかテイルズの世界にない単語である。とりあえず死ぬほど糖分が盛られているのは分かる。恐らくたまにフィリアさんが作っている……何だったか、やたらと長い名前のパフェみたいなものだろう、多分。なお関係ないが、アビス陣でフルーツパフェを作るのが上手いのはジェイドである。誰得だよ。
つーかこの男、かぶき町と違って食費がかからないからと好きに注文しているな。クレアさんも何故適当過ぎる注文に「やってみるわ」と快く答えてしまうのか。これがヒロインの臨機応変力か。
一方、神楽ちゃんは俺をふんふんと嗅ぎ回っている。比喩表現ではなく、本当に嗅いでいる。……ルークにもされたし、マオ君やソフィちゃん、エルちゃんにもされたし、そういえば俺の知っている方のアニスにもされたことがあった。どこの世界もお子様は一回俺を嗅ぎ回る決まりでもあるのだろうか。妙齢の女性よりは男の方が気軽にいけるのかもしれない。そう考えてみると、子どものみならず好奇心が旺盛な連中は男性も女性も似たようなことを俺にしていた気がする。うん、特に男性が女性の髪の匂いを嗅ぐのはちょっとな。女性相手だと特に思わないのは、俺が男だからだろう。
「なんだかいい匂いがするアル。おいしそうな花の匂いアル!」
普通、花の香りと美味しそうは結びつかないと思うのだが。
(この子……食うに困って道端の花の蜜でも吸っていたのか?)
あり得る。なにせ万年家計が火の車な万事屋である。食事事情は公爵令息をやっていた俺が想像を絶するほどひもじいものだっただろう。
何となく優しい気持ちになり、慈愛に満ちた眼差しで神楽ちゃんを見つめる。たんとお食べと言ってあげたいが、彼女の場合は本当にたんと食べるとアジトのエンゲル係数がえげつないことになるので迂闊に言えない。とりあえず「ありがとう」と無難に微笑むと、神楽ちゃんは宝石のような青い瞳を丸くして笑った。
「アート君はやっぱりお姫様みたいアル!」
(その呼び方はちょっと引越センターみたいだからやめて欲しい)
アルバートを略してアートなのだろう。レプリカ関係でごちゃごちゃあったので名前は気にしない精神だが、それでもこれは遠慮していただきたい。ほら、銀魂勢は平気な顔して現代日本ネタを持ってくるから……。
「神楽、いつまでもアート君に絡んでいたら迷惑だろう。それより食える間に食っとけ食っとけ」
「絡んでないアル。ちょっとお話ししただけヨ」
いつまでも子犬の様にじゃれついている神楽ちゃんを見かねたのか、単純に胃袋の問題なのか、銀さんが神楽ちゃんを呼び寄せた。神楽ちゃんはぷくっと頬を膨らませながらも、少し離れた場所で座っている銀さんのところへ駆け寄った。ついでに「私は焼肉丼のネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング盛りが食べたいアル!」と元気よく……いやいやいやいやそれシルエットがアカン奴! 清純派ヒロインにそんな卑猥な丼を注文しないであげてくれ!! もしうっかり完成してしまったら俺は「完成度たけーなオイ」と言わなければならないのか!?
深窓の公爵令息としてのリアクションに困っている俺など露知らず、長テーブルにだらっと腰かけた銀さんは面倒そうに天パを掻き毟った。
「しっかり食っとかねぇと、そのうちコラボ企画で飯食う暇がなくなるからな」
「まったく、これだからアレ杉は迷惑アル」
「おい黒幕バラすな!」
……それは一体どこの何杉晋助なんだ。いやー全然分からないな。とりあえずしばらくアジトの自室に引きこもろうそうしよう。
+ + +
ザレイズ銀魂コラボ第二段ありがとう本当にありがとう。
一体だれ杉晋助が来るんだ……。
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