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気晴らしに
萌え 2022/03/17 01:07


・ゾル兄さん:ヒスイのすがた。





ポケモンは賢く優しい生き物だと思う。……何考えているか分からんヤドンとかからは一旦目を反らして欲しい。ヒスイ地方でもその考えは変わらない。コトブキムラの人々はポケモンを恐れている。その気持ち自体を否定するつもりはない。ポケモンは賢いが、野生の動物だ。こちらを敵とみなせば、馬でもはかいこうせんをぶち込んでくる。むしろ、危険だと認識することは生き抜く上で必要だ。だが、それだけでもない。

俺はワイルドエリアを丸腰でうろついてもポケモンからビビられる側の人間なので、ヒスイ地方でものびのびし(過ぎ)ているが、たまに優しいポケモンに出会うことがある。イタズラ好きなサルのポケモン・エイパムの群れに追いかけ回され、岩に頭をぶつけてメソメソ泣いているサザンドラを、野生のラッキーが心配して寄ってきたことがあるのだ。ヒスイ地方で見かけないヤバそうなドラゴン(中身はバブちゃん)に、よくぞ寄ってきてくれたものだと感動した。まんまるな体を揺らしながらやって来たラッキーは、サザンドラの頭の一つを短い手でナデナデしてあやしてくれた。ママかよ。初対面のポケモンが苦手なサザンドラも即落ちで泣き止んだので、俺はお礼にラッキーにきのみをいくつか渡した。喜んだラッキーは、俺の頭ーーは届かなかったので手の甲をナデナデすると、にこやかに去っていった。天使かよ。

かと思えば、本気で訳の分からんポケモンに会うこともある。文字のような体に大きな目がついている生き物が、木の枝にひっかかっているのを見つけたこともある。身動ぎをするでもなく、風に揺られているだけだった。たまにまばたきをしているので、かろうじて生き物と分かるくらいだ。宝物庫でキバナがそういうポケモンがいるようなことを言っていた気がするが、どうだったか。あ……アンテナみたいな名前だったと思うが覚えていない。そのうち、ギンガ団のエースが正式に発見してくれるだろう。

そう、ギンガ団には俺と似た境遇の子がいて、その子は団員として各地のボスポケモンを鎮めたり、ポケモン図鑑のデータ収集のためにヒスイ中を駆け巡っている。あの子はきっと『主人公』だ。人々がポケモンを恐れ、敵対している世界に変革をもたらす特異点に違いない。俺と違って記憶を失い不安だろうに、前を向いて走っている。あまりにも真っ直ぐすぎて、いつかポキリと折れてしまうのではないかと不安に駆られるが、今は見守る他ないだろう。

主人公は世界を変える。あの子が人々のポケモンに対する恐れを拭い去っていく。本当の意味での余所者である俺は、いつか帰る日を想いながらその変化を見届けるだけだった。



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