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おにいさんはポケチューバー
萌え 2020/06/10 01:29


・ポケモン剣盾に突っ込んでみた
・ゾル兄さん:ガラルの姿
・ポケモンのチョイスは完全に趣味
・ちょっと未来の話
・原作主人公視点(マサル・ユウリは双子設定)





「やったぁ! ルイさんの動画が増えてる!」

 幼馴染の家のリビングで、ソファに腰かけたユウリが歓声を上げた。スマホロトムと一緒に喜ぶ理由が気になったホップは、彼女に話しかけた。

「ユウリ、何をそんなに喜んでるんだ?」

「あのね、ルイさんの新しい動画がポケチューブに上がってたの! 私、ルイさんが大好きなんだ」

 ユウリの手元では、黒と銀の髪を持つ整った顔の青年が穏やかに微笑んでいる。恐らく、ホップの兄とさして年は変わらないだろう。彼の左肩にはミミッキュという少し珍しいゴーストポケモンが乗っていて、楽しそうに首を揺らしていた。背後には湖と草むらが映っているので、野外で撮影されているようだ。

『皆さんこんにちは。ルイです。今日はワイルドエリアの巨人の帽子から失礼します』

 ぱっとユウリの顔が華やぐ。余程好きなのだろう。ホップはユウリの隣に腰かけて画面をのぞき込んだ。

「ルイさんはね、野良バトルがすっごく強いって評判なんだよ」

「ボールマジシャンだろ?」

 ホップの反対隣りに座って、ニンテンドースイッチで遊んでいたマサルが口を開く。

「そっちもそうだけど」

「ボールマジシャン?」

 意味が分からなくて首を傾げるホップに、ゲーム機から顔を上げたマサルが説明した。

「たまにモンスターボールをどこから取り出したか分からないって言われてるんだ。スロー再生とか上がってるけど、何回見ても全然分からないよ。編集してるわけでもないらしいし」

「へー」

 何となく三人揃って画面を見つめる。すると、ルイというらしい青年がミミッキュの胴体を指先で撫でた。

『今日のお嬢さんは巨人の帽子ということで、日除けの帽子を被ってみました。帽子姿も似合うぞ、ミミッキュ』

『ミミッキュ〜♪』

「それからね、ミミッキュをすっごく可愛がってることも有名なの。ああ〜可愛い! 私もポケモン欲しいなぁ!」

「ホップはいいよなぁ、小さい頃からウールーと一緒で」

「へへ。ウールーは大事な相棒だから、ルイさんの気持ちが分かる気がするぞ!」

 マサルはにやっとするホップを肘で突こうとしたが、間にユウリが挟まっていたので諦めたようだ。

「それで、この人って野良バトルの動画上げてるのか?」

「ううん。たまにそういうこともあるけど、メインは初心者トレーナー向けの教育動画みたいな感じだよ」

「教育動画?」

「うん。地域ごとの特徴とか、ポケモンの種類とか、準備したり気を付けた方がいいことを教えてくれるの。わたし、将来はポケモンと一緒にリーグであちこち行きたいから、すごく勉強になるよ」

 確かに、画面の中の青年は巨人の帽子の地形について説明している。そこに辿り着くまでの地名や地形、天気まで分かりやすく教えてくれるので、これから足を運ぶ時の参考になるだろう。

 ――その時。

「あっ!」

 ユウリが声を上げる。ルイの背後の草むらから、彼の髪色と似た白黒のポケモンが顔を出したのだ。あれはまめだぬきポケモンのジグザグマだ。ルイは気付いていないのか、何も変わらない様子で今度は生息しているポケモンの説明をし始めている。ジグザグマは赤い目を悪戯っぽくキラリと光らせ、ルイの背中に突っ込んでいった。

「危ないっ!」

 思わずホップは叫ぶ。……が、腰を上げるほど驚いたのはホップだけだった。一瞬すると、マサルとユウリが落ち着いていた理由が分かる。確かに背中を襲われたはずのルイが、そちらを振り向かないまますっと体をずらし、とても無造作に、しかし狙い澄ましたかのようにジグザグマの首根っこを摘まみ上げてしまったのだ。背中にも目がついていると言われたら信じてしまいそうなほど自然な動きだった。

「……へ?」

 間抜けな声を上げたのはやはりホップだけだった。マサルとユウリはうんうんと納得したように頷いている。

「この人、実はポケモンより強いんじゃないかって噂立ってるんだよな。強盗を一瞬でやっつけた動画も見たけど、確かに格闘ポケモンみたいだった」

「そうそう。動画の中で野生のキテルグマに襲われた時も、咄嗟に素手で攻撃をかわしてたの!」

「テロップで“見通しの悪い林だとこういうこともあります”とか“真似しないでください”とかあったけど、誰が真似できるかってツッコミが殺到してたよな」

 ホップは動画の中の青年を見た。ルイは平然とした顔でジグザグマを掴んだまま、ジグザグマの説明をしている。「首根っこを掴むと大人しくなりますが、野生相手には上手くいかないので真似しないでください」とか言っているが、真似できる奴がいるとは思えない。ジグザグマが借りてきた猫もといタヌキのように大人しくなっているのは、首を掴まれているからだけではないように見える。

 一連の動画を見たホップは、拳を握り締め。

「……すっげーな! 世の中には兄貴以外にそんな面白いトレーナーがいるんだな!」

 深く考えず、太陽のような笑顔を浮かべた。



+ + +



主人公の横で成長物語やってるホップ君好きです。

原作開始時の手持ちはマサル→ヒバニー、ユウリ→メッソン、ホップ→サルノリでイメージしてます。

きっとゾル兄さんはジムリーダーをやっている時期は“人間やめたジムリ”とか言われてそう

「真似しないでください」の兄さん的意図としては、似たようなことをしようとして怪我されるのを避けたいだけ。後にキバナさん辺りからツッコミを直々に受け、「ね、簡単でしょう?(簡単ではない)」をやっていたことに気付く。



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