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かつての上司(仮)を保護するジムリーダー
萌え 2020/03/30 01:47


・ポケモン剣盾に突っ込んでみた
・ゾル兄さん:ガラルの姿
・ポケモンのチョイスは完全に趣味
・兄さんの手持ちがかなり育っている=未来の時間
・兄さんがラテラルタウンで臨時のジムリーダーやってる
・安室さんがワイルドエリアにログイン←yuki様のネタ





 畏れ多くもラテラルタウンのジムリーダーを臨時で仰せつかっている俺の元に、ある相談が寄せられた。どうやら、ワイルドエリア内にあるハシノマ原っぱ付近で、ユキメノコが暴れているらしい。ユキメノコは名前から想像がつきやすいが、妖怪の雪女がモチーフのポケモンだ。タイプがゴーストとこおりなので、俺に話が来たのだろう。こおりタイプならキルクスタウンの元ジムリーダーたるメロンさんの専門だが、彼女は息子にジムリーダーを引き継ぐ作業で忙しく、フットワークの軽い俺が選ばれた様だ。それに加え、やたらとゴーストタイプにモテるという体質も決め手だったらしい。弟のように可愛がっている次期ジムリーダーのオニオンからは「ルイ兄さんなら、お嫁さんにできるよ」という斜め上の励ましの言葉を貰ったくらいだ。違うんだオニオン、お兄さんはそもそも嫁を貰いに行くのではなく騒ぎを鎮めに行くんだ。

 ユキメノコの生息地はワイルドエリア内にあるが、ハシノマ原っぱではない。しかも、やたらと強いらしいので、野生ではなく誰かの手持ちポケモンだった可能性がある。その辺りも踏まえての調査・対応が俺の仕事だ。俺はオニオンたちにジムを任せ、手持ちのサザンドラに乗って空路を急いだ。このサザンドラはあく・ドラゴンタイプで、俺にしては珍しくゴーストタイプではないポケモンだ。迷子のドラメシアと一緒にピーピー鳴いているのを拾って、おチビの頃から育て上げた結果、やたらと図鑑の説明が凶悪なポケモンに最終進化した。何故だ。ポケモン用のボールを投げて取ってこいもできる可愛い奴なのだが。……三つ首の青黒いドラゴンは確かに凶悪な見た目かもしれない。ともかく、そのサザンドラでラテラルタウンから一気にハシノマ原っぱに行こうとしたのだが、吹雪があまりにも酷かったのでエンジンシティで下り、そこから徒歩で現場に向かった。件のユキメノコの仕業かもしれない。真昼間だというのに吹雪で視界が良くないので、ほのおタイプを兼ねているシャンデラと共にエンジンリバーサイドを越えて先へ進む。食いしん坊ポケモンのヒトモシは、無事にシャンデラまで最終進化できました。でも相変わらず食いしん坊です。

(……ん?)

 エンジンシティと他所を繋ぐ道路を支える巨大な橋脚辺りで、俺は眉をひそめた。橋脚の麓に、黄色い塊がうじゃうじゃいたのだ。よくよく見てみると、イヌヌワン……もとい、イヌヌワンという特徴的すぎる鳴き声のポケモン・ワンパチが寄り集まって団子を作っている。ワンパチはコーギーに似たハチャメチャに可愛いワンちゃんなので、とてもほんわかする光景である(一度、他トレーナーの手持ちであるメスのワンパチが可愛すぎて撫でまくっていたら、ミミッキュに嫉妬されて拗ねられたくらいには可愛い)。問題はその中心地に、安室透っぽい人間がいることだ。いやあれ、ぽいというか本人にしか見えない。

 実は、俺がポケモン世界に放り込まれる前に放り込まれていたのはコナン世界である。そこでは結局、黒ずくめの組織が壊滅するまで帰れなかった。その間、なんやかんやでコナン君にも安室さんにも恐らく赤井さんにも正体が、というか戸籍なし経歴不明人間とバレた。その結果、安室さん改め降谷さんから、日本国籍と戸籍を用意する代わりに公安の協力者――作業玉に勧誘された。戸籍がないと様々な社会活動の妨げになるので、それを引き合いに出すのは普通に脅しである。だが、戸籍なしのままふらふらするしかないと思っていた俺にとっては間違いなく救いの手であったし、フリーの暗殺者として生きていた俺が、法に抵触するような作業を求められるにせよ、正義のための仕事ができるというのは破格の選択肢でもあった。極めつけが、降谷さんである。彼は「健康で文化的な最低限度の生活を送れますかね?」という俺の半笑いでの問いに対し、ハチャメチャ男前な笑顔を浮かべてこうのたまったのである。

「これから君は日本国民になるんだ、当然だろう」

 即堕ちであった。安室の女というか降谷の女になった瞬間である。かつての俺は日本国民だった。けれどもそれを理不尽に失い、パドキア共和国民として暮らしている。パドキア共和国が嫌いというわけではないが、もう二度と戻れない日本に対して思い入れがあって当たり前だ。それが、降谷さんの計らいで日本国民になれる、いや、戻れるのである。この感動は筆舌に尽くしがたい。もう内心でメロメロになった俺は、「ぼく、ふるやさんちのこになりゅ〜(IQ2)」……と実際に言ったわけではないが、降谷さん家の子(と書いて公安の作業玉と読む)になることを決意し、晴れて日本国民になることが決まったのである。そして、降谷さんがこれまたオットコ前な笑顔を浮かべて俺に戸籍謄本を渡し、受け取った俺が(内心で)スキップしながら警察庁を出たところでハンター世界に戻された。酷くないかこれ。せめて一ヶ月くらいは日本国民でいたかったし、降谷さんの右腕は風見さんに譲るので、左腕くらいにはなっておきたかったのにこの仕打ち。完全に嫌がらせを狙ったタイミングとしか思えない。

 ともかく、俺の上司になる予定だった降谷さんが、どこからどう見ても部屋着スタイルで猛吹雪の中震えている。周囲をワンパチの群れに囲まれてモフモフされているお陰でどうにか生きている、といった状態だ。……全く意味が分からない。そもそも降谷零(公安ポケモン)はワイルドエリアに生息していない。主な生息地は米花町に通常個体(安室)で、霞が関にキョダイマックス(降谷)、都内全域で稀に色違い(バーボン)がいる。一方、ワンパチの方はワイルドエリア内のエンジンリバーサイド、つまり現在地が生息地なので分かると言えば分かるが、彼らが降谷さんに群がっている理由は不明だ。ワンパチは素早く動くものを追いかける習性があるので好奇心は強い方だが、その一方で臆病でもあるらしい。それでも集団で降谷さんを助けているというのは、優しさだけでなく彼らと降谷さんの相性の良さがあるのだろうか。そういえば降谷さんは犬を飼っているらしいと聞いたことがあるので、犬と相性がいいのかもしれない。

(そういえば……エンジンリバーサイドは、ハシノマ原っぱの隣だな。俺がこの世界に突っ込まれた場所と同じ……)

 俺は霧の深いあの日、ハシノマ原っぱでミミッキュたちと出会った。それからエンジンリバーサイド、ミロカロ湖・北、キバ湖・東を通り、エンジンシティに辿り着いたのだが、もしかすると降谷さんも同じルートを辿っているのかもしれない。

 何にせよ、まずはユキメノコより降谷さんだ。このままでは冗談抜きで凍死するので、彼の保護が第一優先だろう。俺はワンパチたちを刺激しないように、ゆっくりと彼らに歩み寄った。俺がタラシ易いゴーストタイプ相手ではないので、その辺りは慎重にする必要がある。幸いにも、ワンパチたちは降谷さんを温めることに集中しているらしく、こちらに敵意を向けてはこなかった。

「降谷さん、大丈夫ですか!?」

「――君は……?」

 震えながら険しい表情で降谷さんが顔を上げる。酷い吹雪なので、こちらがあまり見えていないのだろう。

「ルイです。お久し振りですね。まずはここから移動しましょう。デカいのが寄ってきますけど、噛み付かないので暴れないでくださいね」

 俺は歩み寄りながら、シャンデラを彼らに寄せた。シャンデラの特性は“もらいび”なので、“ほのおのからだ”程温かい体ではないが冷たくもない。おまけに浮いているし体高1mでそこそこデカいので、足を引っかけてもらえば降谷さんを町まで運べるだろう。サザンドラを出して一気に空路を進むのも考えたが、凍えている人間を吹雪の中上空に上げたら多分死ぬ。さすがの降谷さんでも死ぬ。

 降谷さんはシャンデラを見てぎょっとした顔になったが、暴れはしなかった。俺の意図を察しているシャンデラが、その名の通りシャンデリアのような腕で、つんつんと降谷さんの頬を触る。幸いなことに、降谷さんもワンパチもこちらを攻撃してこなかった。

「こいつはポケモンって言われている生き物で、シャンデラっていいます。シャンデラに乗ってください。最寄りの町に連れて行きます」

 足元のワンパチを踏まないように近付き、着ていた黒と紫のウインドブレーカーを脱いで降谷さんに差し出す。降谷さんは俺とシャンデラを警戒していたが、やがてゆっくりと俺から上着を受け取って羽織った。……おかしい。おかしな状況とはいえ、どうしてここまで降谷さんに警戒されるのか。

 俺は降谷さんにシャンデラの腕に腰かけてもらいながら話しかけた。

「俺のこと忘れましたか? あなたに日本国民にしてもらったルイです」

 そう言うと、降谷さんは俺に探るような目を向ける。返された言葉が途切れ途切れなのは、寒さからだろう。

「……別の誰かと、勘違いして、いませんか? 僕は、あなたと、面識はないはず、ですが……」

(……待て。待て待て。まさかこの降谷さん、俺と会ってないルートの降谷さんか!?)

 あり得る話だ。そもそも俺はコナン世界の人間ではないのだから、俺がいない世界の方が正常だ。しかも、この降谷さんは原作の時間軸でどの時点の彼かも分からない。要は、組織壊滅前の降谷さんの可能性すらある。甘い垂れ目が際立つ童顔の年齢詐欺男だが、さすがに成人はしていると思われる外見なのは救いか。

「あ〜〜……なるほど〜〜……」

 あっという間に俺の目が死ぬ。この降谷さんが探り屋全盛期の彼だったら、本名を知ってる俺なんて怪しさの塊でしかない。既に心は降谷の女と化した部下なので、彼に不審者を見る目を向けられるのは大層堪えた。

「事情は後で全部説明します。言っても信じられないでしょうが、俺はあなたの味方です。今はとにかく暖かい場所へ移動しましょう」

 返事を聞かずとも、不信感100%の顔を見れば言いたいことは分かった。とりあえずはエンジンシティに向かい、上司に課金して恩を売りまくって多少は良好な関係に落ち着きたい。そんなことを考えながら、俺は踵を返した。

 ……なお、ワンパチの群れは町の入口までついてきた。優しいワンコたちのお見送りに、降谷さんはファンが卒倒するレベルのキラースマイルを浮かべてお礼を言っていた。その優しさを俺に下さい。



+ + +



ワンパチの群れに囲まれる安室透の文章に萌えた私をどうか察して欲しい。

ちなみに、安室さんは組織壊滅前+クトゥルフ麻衣兄時空の人で書いてます。ゾル兄さんは別時空で自分が女子高生になっていることを知ってしまったらSANチェック。


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