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仮トレーナー(扶養者)とロトム(被扶養者)の心温まる会話
萌え 2020/03/11 01:06


・ポケモン剣盾に突っ込んでみた
・ゾル兄さん:ガラルの姿
・ポケモンのチョイスは完全に趣味





 野生のポケモン同士のリアルファイトによる頂上決戦(応募者多数による自主的採用試験)を見事勝ち抜いたロトムは、とてもとても口数が多かった。俺の真新しいスマホに入り込んだヤツは、とにかく喋る。水を得た魚ならぬスマホを得たロトムの中でも、類を見ないであろうお喋りポケモンだ。テオさんが持っていたスマホロトムは、あくまで彼の指示や通知の際に喋るだけで、表情は豊かなものの自発的な自己主張はそれほどなかった。それが普通らしい。だが俺のロトムは俺が指示を出さなくても勝手に話しかけてくるし、勝手にポケットから飛び出すし、なんなら勝手にネットサーフィンする。俺のロトムは初期からなみのり(電子限定)を習得していたらしい。そのため、俺はロトムに懇々と、俺が加入しているパケット通信量と料金プランについて語らなければならなかった。熱く語った俺に対して、ロトムが告げた言葉はこうだ。

「ご主人はロトムのパケット代のためにモデルの仕事を頑張るロト」

「お前は本当に図太いな」

 そのくらい図太くなければ、あの壮絶な電撃戦を勝ち抜けなかったのかもしれない。

 そんな彼の夢は、曰く「ロトムはネットを極めてサイバーゴーストポケモンに進化するロト」らしい。しかしながらプラズマポケモンができるのはフォームチェンジである。要はスマホ以外の家電製品――冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、扇風機などに入り込むくらいなので、進化はしない。

 念願のスマホロトムをゲットしたその日の昼食時。家族経営のチェーン店だというあのバトルカフェでのランチで、俺にスマホロトムを見せられた……もとい、勝手に飛び出して勝手にしゃべり出したスマホロトムを見たテオさんは、心なしか困惑した顔になった。

「ルイ君……そのスマホロトム、喋り過ぎじゃない?」

「真っ先に名乗りを挙げた奴を連れてきたので、少し自己主張が強めかもしれないですね」

「後から立候補した奴ら全員を蹴散らしてきたトップエリートだロト。ご主人の面倒は揺り篭から墓場までみるから安心してほしいロト」

「少しってレベルじゃないよね」

 テオさんの表情が困惑を通り越して真顔になった。ロトムとしては、俺の上司と聞くテオさんに対して、自分の有能さをアピールしたかったのかもしれない。まさか墓に入るまで付き合う気だとは思っていなかったので、ロトムの熱意には脱帽するばかりだ。

「揺り篭は間に合わなかったから、せめて棺桶はロトムがPokezonで発注するロト」

「通販かよ」

 なお、遠方でのお急ぎ便はアーマーガアなる巨大なカッコいいカラス(ポケモン)が運んでくれるらしい。人を運ぶアーマーガアタクシーも見たことがあるが、風船部分の代わりに巨大なカラスがついた気球のような見た目だったので、正直に申し上げると乗りたくない。

「ルイ君、突っ込むところは多分そこじゃない。ゴーストポケモン特有の粘着に気付いて」

「粘着じゃなくて愛着ロト。一途で執念深いのはゴーストタイプの長所ロト」

「思いっきり執念深いって言ったよね??」

「純愛を貫いてウルトラハッピーエンドを目指すタイプロト」

「それ、メリーバッドエンドだったりしない?」

 ロトムとテオさんは途中から俺を飛び越してやり取りを始めたので、俺は蚊帳の外だ。暇になったので、俺はボールから出したミミッキュを膝の上に乗せてやり、背中をナデナデしてやった。ロトムがご主人の面倒を見る発言をしてから、ボールの中の彼女が少し拗ねるような素振りをしていたのだ。うちのお嬢さんは、俺のお膝抱っことナデナデ攻撃で即堕ち2コマ張りに機嫌を直した。こうかはばつぐんだ。

 そんなこんなでテオさんがドン引きする出会いを果たしたものの、いつの間にか彼らは結託していたらしい。ネットサーファーと化したロトムは様々な情報を取り入れ、俺に通訳とSNS運営以上の利益をもたらした。

「ロトムは勉強熱心ロト。だからテオの言いつけ通り、ネットでミステリアスを学んだロト」

 ある日そんなことを言い出した彼は、画面に一人の青年の写真を映し出した。年齢は俺と大差ないだろう。パンク系ファッションに身を包み、顔にはメイク、白と黒が混じる長い髪はポニーテールにしている。メイクで分かりにくいが、顔立ちは悪くないだろう。

「ジムリーダー兼アーティストのネズはミステリアスっぽいロト」

「ミステリアス……というか、ビジュアル系?」

 白黒で二足歩行のゴツイ熊と一緒のステージで歌っている姿で、その姿はまさにビジュアル系バンドっぽい。ステージの周囲にいるファンと思しき観客は黒と赤系のパンクファッションで占められており、ビジュアル系と言えばいいのかガラが悪いと言えばいいのか理解に苦しむ。今の俺でも以前の俺でも、あまり関わりがなかったタイプの人々というのは間違いない。

「ご主人の頭はタチフサグマだから、ネズと被っているロト。参考にするロト」

「白黒と言いたいのはかろうじて分かった」

 ……そんなに俺はガラが悪かっただろうか。

 そんなロトムは、文字の翻訳だけではなく、手持ちポケモンとの通訳も担ってくれた。やめておけと言った方がいいくらいには赤裸々に語ってくれた。

「俺ってゴーストタイプのポケモンにモテたりするのか?」

 素朴な疑問を投げかけたところ、ロトムは馬鹿正直に答えた。

「ご主人、すっごく美味しそうに見えるロト。他の人間やポケモンより美味しそうなオーラが源泉かけ流し放題ロト」

「俺は天然温泉か?」

 オーラとは恐らく、念能力者が扱うオーラ(生命力)とほぼ同じだろう。そうではないかと想像していたが、間違いなかったらしい。そんなに湧き出ていただろうか……いただろうな。そこそこ訓練した念能力者なので、一般人より遥かに顕在オーラ量は多いはずだ。ちなみにオーラについては潜在オーラ量・顕在オーラ量うんぬんと細かい話があるのだが、その辺りは省く。実は念能力をまともに考察して運用しようとすると、必殺技とも言える発の使いどころの他にも、オーラそのものや系統の相性を踏まえた四則計算が必要になったりするのである。とはいうものの、キメラアント編で君臨する強者レベルになると、細けぇ計算を圧倒的物量で叩き潰してくるので意味がなかったりもする。レベルを上げて物理で殴るのはどこでも通用する、はっきりしてんだね。

「ヒトモシもそう見てるよな」

「見てるロト。ご主人は歩くチョコレートファウンテンって言ってたロト」

 チョコレートファウンテンとは、液状のチョコレートが流れ落ちるタワーのことである。要は見栄えするチョコレートフォンデュだ。ヒトモシにとって、俺はそれに足が生えた存在らしい。道理で暇さえあれば俺にくっついてくる訳である。最近では俺の指を咥えたがるくらいだ。

「やっぱり食いしん坊キャラかー」

「でも食べ過ぎると頭がキャンプファイヤーになって目立つから控えめにしてるらしいロト」

「ひかえめでえらい」

 居候先で食べ過ぎた際、天井を焦がさんばかりの火力になってテオさんを大層ビビらせたのを気にしているのだろう。ひかえめなのはいいことだ。

 すると、ヒトモシのことをペラペラ喋った流れで、ロトムはミミッキュのことまで言及した。

「ミミッキュはご主人のことを、ギャロップに乗った王子様って言ってたロト」

「ギャロップか〜〜」

 炎のたてがみを持つ白馬がギャロップ(あるいはその進化前のポニータ)なので、ポケモン界的な白馬の王子様表現なのだろう。ミミッキュの発想は可愛いが、自分にはギャロップどころか白馬が似合う気がしない。精々バイクではなかろうか。もちろん馬イクの方ではなく。

「知らないロト? こんなポケモンロト」

 俺の様子を知らないと捉えたロトムが、検索した画面をこちらに見せる。そこには……炎ではなく、紫を基調としたファンシーなふわふわたてがみを持つ可愛らしい白馬の画像があった。

「……メルヘン過ぎないか??」

「ガラルのギャロップは乙女に人気ロト。コスメメーカーのロゴにもなってるロト」

 ギャロップをはじめとして、ガラル特有の姿のポケモンはいくつか存在しているらしい。ガラル地方は現代におけるガラパゴス諸島なのだろうか。そういえば強盗犯に連れられていたニャースも、ガラル特有の姿だったようだ。すごくワイルドである。

「ご主人はミミッキュの王子様だから、他にメスのポケモンをゲットするときは気を付けるロト」

「は? なんでだ?」

「正室と側室の争いが起こるロト」

「いつの間にか嫁を貰っていただと……」

 ミミッキュは俺にベタ惚れだと知っていたが、まさかそこまでとは思わなかった。人間の嫁を貰う前にポケモンの嫁を貰うとは。というか、そもそも俺の嫁になってくれる女性はいるのだろうか……と実家で漏らそうものなら、光の速さで縁談が組まれそうなので絶対に言ってはならない。キキョウママならやる。絶対にやる。ゼノじいちゃんやシルバパパなら、「嫁を探してこい」とどこかの魔境に放り込まれそうだが。なお、シルバパパは流星街という地図にも乗らない無法地帯で運命的な出会いをした末の結婚である。流星街出身……マチか?(個人的な好み)

「ゴーストタイプは執念深いロト」

「ドロドロの愛憎劇になるのかな?」

 手持ちが全てゴーストタイプな件について。メスがミミッキュしかいないのはファインプレーだろうか。

「ドロドロは多分大丈夫ロト。ミミッキュはようきな性格だから、ご主人と一番イチャイチャできればオッケーロト」

 ロトムの分析は、ヒソカの念能力別性格診断並に思える。つまり、結構納得できる。今のところは可愛いで済んでいる懐き具合が、きっかけさえあれば明るいヤンデレになるということだろうか。少し気を付けよう。





 ちなみに、この度めでたくモデルとしての初仕事が決まった。スーツの広告モデルだった。伸縮性の素材で動きやすいのが売りのスーツらしく、チラシの片隅とは言え、色々なパターンの写真を撮ると言われて色々なポーズを要求された。……スーツなのにハイキックの写真っていらなくね?



+ + +



兄さんのオーラの味は感情によって変わる設定にしてますが、細かくは考えてないです。ヒトモシの前では大体にこにこしてるので、甘口になってるかもしれない程度。怒ったら辛口になりそうなので、ヒトモシ(性格:ひかえめ)とミミッキュ(性格:ようき)が苦手な味になるかも。

初仕事でハイキック要求される兄さん:撮影スタッフからの「あれできる?」という要求にあっさり応え続けた末のハイキック。格闘技系のポーズが何でも出来過ぎたので聞き続けたらそうなった模様。最終的に静止画より動画の方がいいよねと言われる。遅すぎる気づき。



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