「ただいまー」
「……おかえり」


今日は出掛けていないらしい西くん。わたしが部屋に帰ると、彼はソファに座ってお茶を飲みながら雑誌を見ていた。


「この部屋涼しいね…外すっごく暑いよ」
「ふーん…お茶、いる?」
「手間じゃなかったら」


西くんは雑誌を置くと立ち上がり、キッチンへと向かった。氷を入れたカランカランという音が聞こえる。


(涼し…)


唐突だが、わたしは、西くんがいつも服の中に黒い何かを着ているのを知っている。特に、夜出掛けるとき。暑くないのかなあ。首からちらちらと見え隠れするそれにわたしが興味を示さない訳もなく。


「西くんっていつも中に何か着てるよね?何それ」
「ああ、これ?ガン……」


何か言いかけて、お茶を淹れていた西くんの手は止まる。何だろう。もしかして、聞いてはいけないことだったのかな。目も泳いでるし、まずかったのかも。


「あー…」
「…」
「……ヒ、」


わたしがそんなことを考えていると、西くんはしばらくの沈黙の後に再び動き出した。


(…ひ?)




「ヒートテック…最新の」




「…」
「…」
「そうなんだ。かっこいいねえ」
「ま、まあな…」


西くんが気まずそうな顔をしてお茶を淹れるのを再開したので、今が真夏だということは敢えてスルーしておこうと思った。







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