西くんは昨晩言ったことを何事もなくやってのけた。お、襲わない、こと。昨日は混乱して夜も遅かったので、わたしはベッドで、西くんには備え付けの白いソファで寝てもらった。西くんは遠慮してたけど、風邪を引いてもらっては困るので、無理矢理タオルケットを押し付けて。彼も昨日はわたしを警戒していたのか分からないけれど、この部屋とわたしに対する警戒が解けたのか、今日の朝起きたとき、彼から昨日のピリピリとした空気は感じられなかった。

そして今。

「に、西くん、」
「何」
「買い物、行こ」
「え、」

わたしは西くんを買い物に誘った。

「なんで」
「だって西くん、その銃みたいなのしか持ってないし。ちょっとの間でも、これからここで暮らすなら、服とか必要かなあ、と思って」

この部屋にはわたしひとりぶんの荷物しかない。それは勿論ここがわたしの部屋だからだ。わたしの服を貸すわけにはいかないし、かと言って西くんにずっと同じ服で過ごしてもらうのも気が引ける。歯ブラシとかも必要だから。

「でも俺、金ないし」
「そんなの、気にしないで」
「…」
「どうしても嫌って言うなら、ここで『お願い』使う」

しばらくの沈黙のあと、西くんは ごめん。ちゃんと返すから、と言ってわたしの出したお茶を啜って、小さく ありがとう、と言った。西くんは思ったほど怖いひとじゃないのかもしれない。





結局西くんはスウェットと、し、下着(ああもう、顔が熱い!)、あと普段着用のパーカーとパンツ、タオルや歯ブラシなど、とりあえず必要最低限のものを買った。あと、わたしは野菜とかお肉とか。

「ど、っこい、しょっ」
「…貸して」
「え、」

西くんは服やタオルの入ったビニル袋を左手に持ち替えると、空いた右手でわたしの手から野菜の入ったビニル袋を取り上げた。こんなことを言ったらすごく失礼な感じがするけれど、西くんはあまり体力とか無さそうに見えるから、少しだけ驚いた。

「早く帰るぞ。雨降りそうだし」

少し先を歩く西くんが空を見上げながらそう言ったので、わたしは慌てて歩くスピードをあげて西くんの隣にならんだ。

「ありがとう」

わたしは西くんだけに聞こえるように小さくそう言ったが、当の本人はまだ上を向いていたから、彼の表情は分からなかった。







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