「ふんふーん」


学校が終わってスーパーに寄り、本日の夕飯の材料を片手にぶら下げながら鼻歌混じりで寮への帰路に就く。今日の夕飯はハンバーグ。ちょっと帰りが遅くなってしまったみたいで、辺りは既に日が沈みかけて薄暗くなっていた。最近不審者の噂が立っているから、小走りで帰ろうとわたしは息を吸った。





寮へと続く道。辺りは先程よりも暗く、街灯が鈍く光っている。歩を進めていると、数ある中の一つの街灯の下、ガードレールに腰を下ろしている一つの影が目に入った。

(…噂の)

不審者、かも。怖いことが大の苦手であるわたしは足早にその前を通り過ぎる。

筈だったのだが。

「おい」

何で、呼び止められるかなあ。しかも腕掴まれてるし、暗いから男の人か女の人かは分からないし、なんか良く分からないけど、怖い。死ぬ。やばい、どうしようお母さんお父さん。名前は人生で最大のピンチを迎えているようです。

「あ、あああああああの…!」
「あんた、此処の寮生?」
「は、はいっ…!」
「ふーん…」

短いようで、わたしにとっては長い沈黙が流れる。声から察するに、その人は男だったらしい。同じ女ならまだ逃げられたかもしれないけど、男なら力でも走りでも勝ち目はない。どうしよう、どうしようどうしよう。

そんなことをぐるぐると脳内で考えていたら、相手も何か考えていたらしい。結論が出たのか、短い沈黙の後再び口を開いたのは男の方が先だった。

「一人部屋?」
「まあ、はい…」

すると、途端に引っ張られる右腕。街灯の鈍い光に照らされて、ようやく当人の顔がはっきりと見えた。

「部屋に泊めろ。断ったら撃つ」

とある夜。鈍い光を放つ街灯の下。黒髪で目つきの悪い、見慣れないブレザータイプの制服を着た男の子が、わたしの頭に銃らしきものを突きつけていた。







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