休日。なんだか今週は平日がすごく長く感じた。いつも以上にゆっくりと時間が流れているような感覚。それは学校にいる間だけでなく、家に帰ってからも同じことだった。何故だろう。理由はわからない。

「なあ、あの日さ」
「あの日?」
「だーから、弁当届けた日のこと」

昼食を食べ終わって、ぼんやりとしていた昼下がり。ソファに座った西くんが発したその単語で、わたしがお弁当を忘れ、西くんが学校まで届けてくれた日のことを彼が話しているのだと分かった。

結局あのあとわたしは彼を体育館裏まで連れていって、お弁当についてお礼を言ったあと、どちらとも何も喋らなくて、ただわたしの右手と西くんの左手だけがつながれた状態で、昼休みが終わるまで、花壇の縁でしゃがみ込んでいた。

「で、こっち来て」
「なんで」
「なんでも」

それが約一週間前のこと。その時のことを思い出したのか、西くんはソファの背にもたれかかりキッチンに立ち皿洗いをするわたしを呼んだ。

「やきもち?」
「は、」
「名前があんな風に怒鳴ったの、初めて聞いたから」

やきもち、なんて。確かに、人前であんなに感情を露わにして怒ったのはこれまでで初めてのことだったかもしれない。それはつまり、女の子に、西くんを取り囲む女の子に、嫉妬したということ。でも今までそんな感情を自覚したことなんてなかったし、考えたこともなかった。

「…よく、わかんないなあ。なんかあの時はかっとなっちゃって」
「ふーん」
「あ、さては馬鹿にしてるな」
「してる」
「もう」
「…あのさ」
「うん?」
「もし俺が…」

珍しいと思った。彼が、進んで何かをわたしに話そうとすることが。しかしタイミング悪く、西くんが何か言いかけた丁度その時、インターホンが鳴った。

「ごめん、ちょっと行ってくるね」

わたしは西くんに一言断りをいれ、ぱたぱたと足音を立て玄関へ向かう。

ソファに残った西くんは、返事をしなかった。彼がこれから起こることを予測していたのか、だからいつも以上にあんなに静かだったのか、それは今でも分からない。ただ、あの時のわたしは何も知らなかった。ただそれだけは分かっている。

わたしは少し手惑いながらも、ようやく防犯用のチェーンと鍵を外してドアを開けることができた。そこには紺の制服を身に纏った2人の男性が立っていた。そして鉄の仮面をかぶったように、冷たく低い声でこう言ったのだ




「すいません、警察のものですが」









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