週末。日曜日の今日は学校もなく、わたしは久しぶりに一日をゆっくりと過ごした。晩御飯を食べ終えソファで寛いでいる今、隣に西くんはいない。滅多に着ない制服を着て、 出掛ける と言って少し前に出掛けて行ったのだ。
「今回の総選挙では、○○氏が有力候補とされていましたが…」
「あ、また西さんが当選したんだ」
テレビの報道が国会議事堂をバックに選挙について報道している。わたしはあまり政治が得意ではないのだけれど、内閣不信任決議が可決されたらしい。その法案を提出したのは西さんという議員さんが率いる党。
「…流石にそろそろ、勉強しなくちゃいけないよなあ…」
勉強は得意ではない。進路だってまだ決まってない。わたしはどちらかというと頭の悪い方だし行ける大学なんてあるのかと少し不安になることがある。というか、大学云々というよりもまずは進路だ。自分が今なにをしたいのか。よく考えろ、という担任の言葉が脳裏に過ぎった。
「…進路、か」
(こんばんは。桜井です。突然ですが、今日はミッションを終えたメンバーの、部屋での会話を一部紹介しようと思います。)
「西、最近機嫌良いよな」
ミッションが終わった後、ふと思い出したかのように加藤さんが西にそう言った。
「何か良いことでもあったのか?」
「別に」
ぶっきらぼうに返事する西。でも西の機嫌が良いのは、最近の行動からしても明らかだった。
(…あ、そうだ)
二人の会話を聞きながら、そういえばと僕は先日のことを思い出す。
「あのさ、西。この前女の子と歩いてるの見たんだけど、あれ彼女?」
「ば、ッかじゃねぇの。ちげーよ!」
見るからに焦っている西を、何処からやって来たのか玄野さんがからかっている。それを仲裁しながらも、やはり微笑ましいと思ったのか、加藤さんもにこにこと楽しげに笑っていた。あ、やっぱり彼女なのかな。僕はぼんやりとそう思う。まあ、たまたま町で彼らを見かけただけの僕には関係ないんだけど、でも興味はあった。だって関係と興味は別物だから。
(そういうものですよね?師匠。)
「桜井!どんな子だった?」
「えーっと…僕じゃ情報不足だから、西本人に聞くのが一番かと」
玄野さんの問い掛けに、僕は笑顔を返す。てめぇ後で覚えてろよ、とでも言いたげな西に睨まれたけど、気にしないことにした。だってもし本当に西にそんな存在が出来たのだとしたら、それはとても喜ばしいことだし、素直に祝福するのが一番だと思ったからだ。玄野さんだってからかっているけれど、本当は嬉しいと思っているはず。
…多分、だけど。
(何だか僕も、トンコツに会いたくなっちゃったな)
遠くにいる彼女に想いを馳せ乍ら。
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