温かい。ふわふわする。落ち着く。抱き締められてる感覚。

誰?

ゆっくりと目を開くと、そこには西くんの顔があった。目を閉じすやすやと眠っている。綺麗な寝顔だった。しかし見慣れないそれに、そして抱き締められているという事実にわたしは慌てる。

「う、わわわ」
「…ん、」

わたしの声が煩かったのか、眠っていた西くんはうっすらと煩わしそうに目を開けた。

(う、)
「名前…?」

西くんの顔が直視出来ず、わたしは西くんの腕から逃れ彼に背を向ける。

(だって、学校早退して、い、いきなりあんなこと…!)

先程のことが急に頭に蘇り、恥ずかしかった。西くんと、その、そういうことをしたということも恥ずかしいのだけれど、それと同じくらいに、してくれと頼んだ自分自身がとても恥ずかしい。

「…そう無視されると結構傷付くんだけど」
「う、わ」

腕がにゅっと伸びてきてわたしを捕まえる。誰の腕かは言わずもがな西くんで、恐る恐る背後を窺うと、そこにはいつも通りの西くんがいた。

「何で逃げんのさ。痛かった?」
「い、痛かったけど…じゃなくてっ」

西くんがぐるりとわたしの体を反転させる。正面には西くんの顔。近い。わたしは思わず顔を逸らしてしまう。

「は、恥ずかしくて…」
「何だ、そんなこと」
「そ、んなことじゃないの!少なくともわたしにとってはっ」
「でも良かっただろ?」
「そ、それは…」

痛い所を指摘され、わたしは黙り込む。実際西くんの言う通りだった。なんというか、恥ずかしいけど、ふわふわした感覚で、頭がぼーっとして、気持ちよかった。

「にしても、初めてだったんだろ。疲れただろうし、明日も学校あるんだから、もう寝ろ」
「わ、」

西くんは上手くわたしを丸め込むと、彼の胸にわたしの顔をくっつけた。彼の華奢な見た目からは想像出来なかったけれど、思った以上に西くんの体は筋肉質で。自分のとは違うその体付きに、わたしは思わず固まった。

(というより、近すぎて眠れないんですけど…)



わたし達はその時、確かに一緒にいた。小さなベッドでふたり。わたしは緊張して中々眠りにつくことができなかったけれど、西くんの言うとおり疲れていたのか、うとうとと睡魔に呑まれていった。西くんはずっとわたしの頭をぽんぽんと撫でてくれていた。

後になってもこの日のことは忘れられない。忘れたことなどなかった。




そう、彼がいなくなってからも、ずっと。


















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