※玄野視点。ちょっと変態です。
俺がこの部屋に来るずっと前から、ガンツのミッションをこなす少女がいる。名前は名字名前ちゃん。どこか謎めいた雰囲気で、ミッションでの星人や仲間に対する態度は冷酷非情で、でも普段は明るい。そんなどことなく謎めいた少女が今
「…」
俺の下で静かに寝息をたて眠っていた。
(えーっと、)
事の起こりは数分前。今思えば、俺がガンツに呼び出され転送された時、既に悲劇は始まっていたのかもしれない。
*
「何だよ、まだ誰も来てないじゃん」
いつものごとく、ミッション前。まだ誰も転送されてくる気配はない。
(暇だしなー…よっし、散策でもすっか!)
この部屋について詳しく分かっていないことを思い出した俺は、散策を始めようと足を踏み出した。
その瞬間―
ぐらりと傾く身体。
(は?…やばっ、)
来るであろう衝撃に目を瞑る。が
「あれ…痛くない?って、え、名前ちゃん!?」
なんと躓き倒れた俺の下敷きになっていたのは、謎めき少女・名前ちゃんだった。
「ご、ごめ…!」
普段からミッション前には仮眠を取っている彼女。今日も例外になく眠っていたようで。倒れた俺は(不可抗力だけど)彼女に覆い被さる体制になっていたので、焦って彼女の上から身を引――ふと、その目が名前ちゃんの体に移る。
(うわ…すっげぇ)
長い睫毛、薄紅色のうすい唇、ふくよかな胸、白い肌、程良くむちむちとしたふともも。
(…女の子、なんだな)
この部屋には今俺達以外誰もいない。
…一瞬、だけなら。
(触っても、良い…よな、)
ごくりと唾を飲み込み、震える手で名前ちゃんの左胸へと手を伸ばす―
「………おい、何してんだ玄野」
「っえ、!」
耳元で静かに響いた低い声。尋常じゃないくらいの冷や汗が出て、伸ばした手が先程とは違う意味で震える。恐る恐る振り返ると、そこにいたのはやはり
「よ、よお西…」
「…」
無言の西が怖い。普段から悪い西の目つきが更に悪い。おい、視線で人が殺せそうだぞ。
「おい」
「はっ、ハイィイイ!」
「てめェじゃねーよ…おい名前、起きろ」
「…んぅ…」
むに、と名前ちゃんの頬を抓る西。軽く身を捩りながら目を覚ました名前ちゃんは寝起きのせいかまだぼーっとした顔のままゆっくりと身を起こす。
「おはよ、名前」
「……はよ、西くん」
そして名前ちゃんはゆっくりと西の膝へ―俗に言うハイハイ歩きで―移動し、また眠くなったのか、今度は西に抱き締められる形でうとうととしている。
「…どーゆー関係だよ」
「見たまンま」
眠る名前ちゃんの頭にぽん、と左手を置く西。普段の行動からは想像できない位、表情は柔らかかった。
(…ま、幸せそうだし)
「おい」
いっか、と続く筈の思考を止めたのはまたしても西の言葉。
「何だよ」
「今度名前に触ろうとしたら」
ピッと静かに、右手の親指だけを出した形で下に向ける。
「どうなるかは…分かってるよなァ?」
それから数回のミッション中、西は名前ちゃんを俺に近付けようとはしなかった。
僕だけのト二カ
(ミッション中はいつもステルス使ってんのに、最近はずっと使ってねぇし…つーかマジで西の目線怖い)
(西くん、最近ステルス使ってないんだ。珍しいね)
(まァな)