列車が走り出し、駅が見えなくなっても、双子と名前はしばらく窓の外を眺めていた。ふと、そういえばと思い出したように名前が双子に尋ねる。

「駅では助けてくれてありがとう。名前、教えてもらっても良いかしら」

名前が名前を尋ねると2人は一瞬目を丸くした。その後にそうだったと言って笑うと、彼らは握手の意を込めて右手と左手を差し出した。

「フレッド・ウィーズリーだ。よろしく」
「ジョージ・ウィーズリーだ。よろしく」
「フレッドに、ジョージね。名前・リドルよ。よろしく」
「よろしく名前!」

フレッドとジョージに連れられコンパートメントを探すが、駅を出発した時点で、三人揃って座れるコンパートメントなどほぼ無いと言っても過言ではない。ジョージとフレッドの友人が陣取っているコンパートメントを発見したが、流石に三人は座れなさそうだ。

「あ、わたし、別の所を探すから。気にしないで」

他を探そう、と言いかけた双子の言葉を制する。目の前のコンパートメントは、双子二人なら座れそうだし、そもそも彼らには、初対面の名前の面倒を見る義務もないのだ。

「大丈夫、他を探すわ」

双子に惜しまれながらも彼らと別れ、名前は先程歩いてきた列車の通路を一人で引き返そうとしてーーー足元に羊皮紙が一欠片落ちているのを見つけた。ジョージとフレッドが落としたのだろうか?まあ後で渡せば良いかと考えた名前は、羊皮紙をスカートのポケットに仕舞い込んだ。





やはりどのコンパートメントも満席だ。どの位歩いただろう。列車の中ほどまで来た時、名前は他のと比べ比較的空いているコンパートメントを見つけた。中には二人先客がいたが、名前ひとりくらいなら座れそうだ。

「あの…一緒に座ってもいいかしら?」

名前が声を掛けたのは、巨体の男の子二人だった。対向座席の片方を空け、二人してぎゅうぎゅう詰めて座っている。その手には大量のお菓子。名前が話し掛けても、彼らはその菓子を食べる手を止めなかった。突然現れた名前をじっと見ている。

「どこも満席で座れなくて…」
「…」
「あ、よかったら一緒にお菓子も食べない?少し持ってきたの」

名前の言葉に二人は頷いて席を勧めた。同席を許可した理由は、おそらく名前が手にしたお菓子だろうがーーーありがとう、と礼を述べ、名前は荷物を棚に押し込み、席に着く。二人とは反対側の席だ。狭そうに座る二人に対し、三人分の空間に名前は悠々と一人で座っているのに申し訳なさを感じながらも、彼女はようやく息を吐くことができた。

「ありがとう。お近付きの印とお礼に、これ、あげるわ」

名前はポケットから袋に包まれたキャンディを取り出した。光の当たる角度によって七つの色を発するその飴は、名前の手によって作られたものであった。七色に光るその飴を手に取り、二人はそれを光に当て十二分に色の変化を楽しんだあと、それを口に含んだ。先程までの疑うような表情はもうない。二人は名前を信頼したようだった。

「自己紹介がまだだったわね。わたしは名前・名字」
「僕は、グレゴリー・ゴイル」
「ヴィンセント・クラッブ」
「ゴイルとクラッブね。よろしく」

名前の言葉にゴイルとクラッブは顔を見合わせる。彼女は首を傾げた。

「あー、実はその、もう一人いるんだ」
「そうなの?」
「多分、もうすぐ来る…」

クラッブがそう言ったと同時に、コンパートメントの扉が開いた。

「探したぞ。お前たち、もうちょっとわかりやすい所に…」

三人は扉に視線をやる。プラチナブロンドの髪の男の子が、そこにいた。

「っ!?」
「あら、ドラコ」
「ど、どうしてーーどうしてキミがここに!?」

やってきたのはドラコ・マルフォイだった。クラッブとゴイルが言っていたもう一人とは、ドラコのことだったのだ。ドラコは目を見開き驚いたように名前を見ていた。何故か扉を開けたままの態勢で固まっている。

「なにやってるの。早く座れば」
「っ、い、言われなくとも座るさ!」

やや赤みが差した頬でマルフォイは名前の隣に座る。そんな様子の彼を見て名前はクスクスと笑った。

「何そんなに吃ってるの」
「吃ってない!」
「まさかクラッブとゴイルの知り合いがあなただったとはね…」
「大体予測は付いていたくせに」

この性悪女が、というマルフォイの言葉に、にやりと笑ってみせる。本当のことだ、否定はしない。しないが、マルフォイに言われるのは癪だったので、革靴で彼の足を踏んづけた。

「何するんだ!?」
「立場を弁えなさいよドラコ」

名前の冷たい笑顔にマルフォイはぐっと言葉を飲み込む。ただならない二人の様子に、クラッブとゴイルはおろおろするしかなかった。















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