首筋に汗が伝う。ジリジリと、コートだけでなく観客席にまで太陽が容赦なく降り注ぐ。本当に暑い。熱中症患者が出ても可笑しくないだろう。そんな、夏の日。関東大会決勝。シングルス2の試合に出た赤也は、青学の天才・不二周助に


負けた。


「お前の負けだ、赤也!」
「…」
「結果は7-5」


真田の声が、先程の試合の結果を告げる。赤也が負けたことを改めて実感させられて、じわりと涙が出そうになる。


すると、それまで呆然として試合の結果を聞いていた赤也が真田の前に飛び出して、自分を打てと頼む。


「座ってろ」


ただ、そう言われた赤也。それだけしか言われなかった赤也。


夏の太陽が俯く赤也を照らし、地面に黒い影を作る。


「赤也、」
「すんません、負けました」
「…」


そして今、レギュラー陣から少し離れた所で、赤也は先程から頭にタオルを被り顔を伏せていた。真田が青学の越前リョーマを圧倒しているが、見向きもしない。


(…これは、キツいな)


幸村の手術に遅れる。柳に続く、無敗の王者の、二勝二敗。それらのことは、他の誰よりも、負けた本人である赤也が辛いはずだ。目の前で繰り広げられているすごいプレーよりも、今優勢すべきはこの赤也だろうと思った。


「赤也、顔あげて」
「…無理ッス」
「負けたのが悔しいなら、そう思うのは正解。恥だと思うのは間違い」


進む試合。赤也は動かない。


私は静かに続ける。


「赤也が毎日頑張ってるの、知ってる。私だけじゃない。部員全員知ってるよ」
「…」
「勝つのは確かに立海にとって大切なことだけど」


「ただ、強い相手に負けたことを恥ずかしく思わないで。悔しさは絶対に、赤也の力のバネになるよ」


幸村に優勝旗を持ってかえる。それが真田の、そして私達、部員全員の目標。


本来ならここにいるはずの幸村は今、難病を治すための手術が行われるのを、病院のベッドで待っているのだろう。


幸村の突然の入院。


少なからず部は混乱したけれど、今ここで立海が青学と戦っているのは、立海が王者と呼ばれているからという理由だけではないと私は思う。


副部長である真田の努力と、真田の努力と同じくらいの、部員皆の、赤也の努力があったから、立海はここにいる。幸村がいないからこそ、勝利に、優勝旗にこだわっているのだと思うのだ。


赤也がぽつりと呟いた。


「…病院行くの、遅れますね」
「幸村ならきっと、大丈夫だよ」


タオル越しに、赤也の頭をわしゃわしゃと撫でながら言う。


「せんぱい、」
「ん?」
「俺、次は絶対勝ちます」


そう言って勢いよく顔を上げた赤也。そこにいたのは先程までの重い雰囲気を纏った赤也ではなく、いつもの笑顔を浮かべた赤也だった。




(がんばれ、赤也)



悪魔に下剋上のぴよけいちゃんに贈らせていただきます…!相互リンク記念で赤也書かせていただきました!えっ、これ、赤也…なのか…!?って感じですが、よろしければお受け取り下さい!返品可!

改めてぴよけいちゃん、相互リンクありがとうございました!




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