※現代パロ。中1トモミ、小6庄左ヱ門で幼なじみ設定です。








年下のオトコノコ
…は論外。


そんな会話を帰りの電車に揺られながら女子高生達が話しているのが聞こえた。


「タメの男子も子供っぽいヤツ多いし」
「やっぱり年上とか憧れるなー」
「包容力があって、頼りがいがあって…オマケに大人の余裕もあって」
「「「いいよねぇ」」」


仲良く4人で座席に並んで座る女の子達は、口々に賛同する。
まぁ私もその気持ちは分からなくはない。
でも年上だからって包容力があるとは限らないし、頼りない年上なんてザラだと思うんだけどなぁ…


なんとなく、年下の幼なじみである庄左ヱ門のことが頭をよぎった。
この人達からしたらアイツも"論外"なのだろうか。




「だから年下はないなー」
「わかるー」
「うん。絶対ない!」

むっ



「なんかもう、お子様にしか見れないんだよね」

それは…そーゆー子もいるかもしれないけどっ、大人っぽい子だって…



「そうそう!生意気なのも居るし!」

年上の人達から見たらあなた達だって充分生意気だと思いますが!?



「バカっぽいしね〜!」
「言えてる!」

は…はぁ〜!?
そんなの完全な偏見じゃない!
大体庄左ヱ門はバカじゃないわよ!スッゴく頭も良いんだから!



久々のお出かけに着てきたお気に入りのスカートを皺が出来るくらい握っていたのに気付いて、我に帰った。
別にアイツの事を言ってるワケでもないのに、馬鹿にされたようで一人で勝手にイライラしてしまう。

結局、家の最寄り駅に着くまで彼女達の他愛もない会話に苛立ちを抑えることが出来ず、駅を出て早足で家の方へと向かった。



しかし、行き先は私の家ではない。

その2つ先






「庄左ヱ門っ!!」

「うわああぁっ!?」


ご近所の黒木家、二階にある庄左ヱ門の部屋。




「とっ…トモミちゃん、インターホン鳴らすか、せめて部屋のドアノックしてから入ってきてよ。毎回心臓に悪いんだから。」

いつものごとく机に向かって勉強していた庄左ヱ門が椅子から転げ落ちて言った。
だってむしゃくしゃするんだもの!
私の不機嫌な様子を感じ取ったのか顔を覗き込もうとするので、前からお腹目掛けて抱きついてやった。


「えっ!?どうしたの!?」
「暫くこうさせて」
「う、うん…」



夏の暑さも手伝って、すぐにじんわり広がる熱。

「トモミちゃん…?」

お腹から伝わる声の振動が心地良い。



「何かあった?」

手持ち無沙汰になったらしい手で、幼子をあやすように背中をさすられた。
私の方が年上の筈なのに子供扱いされてるようだけど、庄左ヱ門なりに心配してるのが分かるから抵抗はしない。

その優しい手に触れられるだけで、苛立つ気持ちが和らいだ。


「…何もないわよ。」
「ならいいんだけどさ。」


小さい頃から一緒に居た所為かもしれないけれど私の微妙な感情の変化も察知して気遣ってくれるし、勉強の最中だったにも関わらず私の我が儘になんだかんだ付き合ってくれる。
すごく、すごく良いヤツだ。



だから私は


"年下はないなー"


そんなこと、ない
と思う

「庄左ヱ門。」
「なに?」


それでも、いつものような(男の子なのに)くりくりした可愛い瞳で見つめるコイツは、恐らく私の気持ちも何も分かっちゃいないだろうから。

人差し指を鼻スレスレまで近付けて言ってやった。



「私は別に、年下でもいいからね!」

「へ?」


案の定ポカンとした表情を浮かべる。
今はまだ、分からなくても良いわ。

いつか分からせてやるんだから。



「えーっと、それってつまりトモミちゃんは…」
「な、何よ」




「年下扱いして欲しいってこと?」
「…なんでそこに到達するの。」





あぁでも、どうかお願い早く気付いて!

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