※現パロ









ピピッと耳に障る電子音が響いて表示盤を見れば、悪い意味で予想通りの数字が映し出されていた。


「39度7分」
「……」
「完璧に風邪ね…大丈夫カイン?」
「…あぁ」

ベッドの中で毛布にくるまりながら、顔を赤くして答える彼に説得力はない。



「とりあえずそのまま寝てた方がいいわ。薬はこれとこれ、2錠ずつ。」
「…すまない。」
「いいの。私の所為でもあるんだから。」


昨日は、久々にカインとのデートだった。

お気に入りの洋服を着ておめかしもして、気合いばっちりに行ったわけだけど…まさかの大雨。デートの帰りで彼の家も近かったため、私もすぐさま緊急避難させてもらった。
水を含んだ服がじわじわと体温を奪っていくのを感じたらしいカインは、私を先に温かいお風呂に入らせて自分は服を脱いで軽く頭を乾かしただけ。

その半端な処置の所為で私があがる頃には、彼は微熱を纏うはめに。


幸い今日は日曜だったから昨日から泊まり込みで看病させてもらうことにして、今に至る。



体温計をケースに戻して昨日のうちに買っておいたマスクを、現時点で息苦しそうなカインの代わりに自分にかけた。




「食欲は?」
「いや…」
「そう。じゃあ後で食べる?」
「あぁ」


柔らかな金糸をかき分けて、額にそっと手を宛てる。

確か戸棚に氷枕あったわよね…

おもむろに立ち上がろうとすると制止させるように、腕を掴まれた。




「?…どうしたの?お水?」
「……」
「カイン?」


掴まれた部分からじんわりと広がる体温は、彼がどれだけ熱を帯びているかを物語っていた。
しかし、弱々しく掴んだその手をなかなか離そうとはしなかった。


何も言わず私を見つめるカインの目を見て、ふと昔のことを思い出す。

こみ上げる熱にうなされながら、私の部屋を後にする母の後ろ姿に手を伸ばしかけたこと。




氷枕を取りに行くのをやめて、その手をとった。


「大丈夫、傍に居るから。」


マスクの上からじゃ分からないけど安心させるように微笑めば、カインも静かに目を閉じる。




不謹慎だけど、その伏せられた睫毛が影を落とす顔に、綺麗な顔をしていると改めて思う。が、やはりどこかぐったりしていて。



「……」


滅多に見れないカインの弱った姿に母性本能がくすぐられる。





弱ってる時って人肌恋しくなるわよね…





「カイン、添い寝してあげる!」
「は?」
「少し詰めて?」
「いや、ティファ…」


言うが早いか、するりとベッドに潜り込む。シングルのベッドだから流石に少し狭いけれど、密着するよう抱き締めればカインも諦めた風で私に腕をまわした。


「風邪が移っても知らないぞ…」
「平気よ、私はマスクしてるし。」



布団を頭まで掛けて、熱を包み込む。
狭く薄暗く、温かな空間に閉じ込められた私達は身を寄せ合ってお互いの体温を共有した。



「熱いね…」
「そう、だな」


カインの胸に顔を寄せると心臓の鼓動がリアルに伝わる。視線を上げれば、熱に浮かされ少し潤んだ瞳と出会った。
そのいつものクールな感じとは打って変わった表情が、なんだかとても可愛らしくて



マスクをそのままに、カインの唇にキスをした。





「っ!?」
「ふふ、おやすみ。」


目を丸くする彼を余所にもう一度抱き付き直すと、先程より早鐘を打つ鼓動を聴きながら瞼を下ろした。







「(熱が上がった気がする…)」




(それでも、マスクも隔てず直接なら良かったのに、と残念に思った彼は早く治そうと心に誓った。)











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最近気付いたこと。
どうやらウチのティファはカインに甘えて欲しい模様。
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