※トモミがタソガレドキ忍者で16歳設定です。







今日は久々に散々な日だった。
忍び込んだ屋敷の天井が一部酷く傷んでいてそこから崩れ落ち屋敷の者に気付かれただけでなく、追っ手に恐ろしくしつこい奴が居て撒く為に使用した煙玉が何故かいきなり現れた猪にぶつかり、今度は猪に追い掛けられ更にそのまま滝に……いや、もうこれ以上は思い出すのはやめよう。余計に疲れてくる。


そんなワケでなんとかひと仕事を終え縁側でお茶をすすっていると、視界に見覚えのある藍色の髪を認めて思わず胸が高鳴った。
後輩のトモミちゃんだ。
今日は最悪の日だったが、一目彼女が見れたのだから良しとしよう。

私に気付いてフラフラとした足取りで近付いてきた。どうやら散々な目に遭った一人らしい。



「お、お疲れ様…」
「もうイヤです…あの人」

疲労の浮かぶ表情に合点がいく。
彼女の言う"あの人"とは組頭の事だ。
もはや日常茶飯事になってしまっている組頭の嫌がらせに近い果敢なアタック(またの名をセクハラと言う)をかわしてきたのだろう。
それだけ言うと、べしゃり、と情けない音と共にお盆を挟んだ私の隣にうつ伏せに倒れ込む。
どうやら精魂尽き果てたようだ。組頭の周りの人は大体それなりに迷惑を被っているが、多分彼女ほど被害に遭っている人は居ないんじゃないだろうか。だってあの人の相手をした後の疲れようが半端ではない。可哀相に

いつもの事ながら同情した私はとりあえず労りのお茶を出してあげることにした。



「はい、どうぞ」
「あ…ありがとうございます。」


彼女はほのかなお茶の香りに顔だけ向けて、すぐには手を伸ばさなかった。いや、伸ばせなかったんだと思う。
力を振り絞って仰向けになるだけだった。



「組頭って、」
雲一つない青空を見ながら呟く。

「うん」
「前からあんなんだったんですか?」



違う。

多少なりとも大変な所はあったけれど今の比ではない。勿論仕事は変わらず完璧にこなしているが。

彼女が来てからなのだ、あんなになったのは。
しかしそれを言えば余計不憫な気がして曖昧に相槌をうった。



組頭に気に入られたばっかりに…本当に可哀相だ。
彼女に恋をする者として組頭の魔の手から救ってやりたいとは思うが、明らかな力量の差にそれも叶う筈もない。


私は自分の非力さに、彼女は疲れから来る無意識で、2人同時に深い溜め息をつく。


せめて…何かしてやれることはないのだろうか






頭の中であーでもないこーでもないと思案していると隣でトモミちゃんが跳ね起きた。
いきなりの事に敵襲か、はたまた組頭がやってきたのかと思い身構える。
が、







「そういえば最近、城下町に新しく甘味処が出来たらしいですよ!知ってましたか?」
「…は?」

なんでも其処のようかんが絶品だとか!

と、さっきまでの疲れはいずことばかりにようかんを想像してうっとりしている。
女性は甘い物に目がないと言うが、こうも変わるものなのか。
その切り替えの早さに呆気に取られていると、ピンと来た。




「じゃ、じゃあ今度一緒に行かない?」
「えっ?」
「多分この間通りがかった所だから、案内出来ると思うし…あっ、でも忙しかったら別に…」
「そんなことないです!というか忙しくても行きますから大丈夫ですっ」
「そ、そう…?」


只でさえ大きな瞳を零れんばかりに見開いて輝かせるトモミちゃんに自然に頬が緩む。

やはり彼女には疲れた顔より笑顔の方が似合うな。
なんて台詞は残念ながら恥ずかしくて言えないので心の内に仕舞っておく。




「でも良かったです。誰か一緒に行ってくれる人を探していたので!山本さんも陣左さんも今は長期の任務でいらっしゃらないし…組頭は論外ですし。」
「ははは…」
口元に手を当てて呟く様子はとても愛らしいが、到底上司に吐く言葉ではない。だがされてきた事がことなだけにそれも仕方ないだろう。苦笑いしか出てこない


「だから嬉しいです!尊奈門さんが誘って下さって」
「まぁ私も甘い物は好きだから…」
「そうなんですか?じゃあ…あの、良ければ、なんですけど」
「うん」



「これからも甘味処に行く時は、誘っても良いですか?」



・・・・・。


「え?誰を?」
「尊奈門さんをですよ」
「わ…私!?」
「えぇ」



忍たる者人の言葉に惑わされてはいけない、そんなことは百も承知だ。

だからきっと今の言葉も嘘なんだ、とトモミちゃんを見つめると純粋な瞳が確認出来るだけ。

じゃあきっとこれは彼女じゃないんだ組頭が変装してからかっているだけなんだ、とトモミちゃんのほっぺたを(優しく)つまんでも柔らかな肌が確認出来るだけ。

「どうしたんですか?」

そ、そうかこれはきっと夢なんだ!
だよなぁ…じゃなかったらこんな…こんな都合の良くいくわけがない!さぁ名残惜しいが夢から覚めるんだ私!とほっぺたを(力の限り)つねってもそこには痛みが残るだけ。


「何やってるんですか?」
「夢…じゃないのか」
可笑しな人ですね、当たり前じゃないですか。

突然の申し出にくすくす笑う声を何処か遠くで聞いているような錯覚に陥る。







おかしいな
だって今日は最悪な一日になる予定だったのに。



何も分からないまま顔にこれでもかと言う程熱が集まるのが分かる。





「それで、どうですか?」
「私で良ければ…」

イマイチ頭で状況を処理しきれない私にトモミちゃんがトドメの一言







「尊奈門さんじゃなきゃ、駄目なんですよ。」




慕っている女性にこんな風に言われたら誰だって照れるのは仕方ない事だが、いかんせん私は女性に対して免疫がない分それが顕著に表れてしまったようで




「そ、尊奈門さん!?」



フル稼働していた私の頭が赤面による体温上昇と負荷により音を立てて停止した。


狭まる視界の最後にトモミちゃんの焦る顔を見ながら、これだからお前は未熟者なんだ、と呆れる組頭の声が聞こえた気がした。








なかなかどうして

今日と言う日は、幸せじゃないか




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遅くなりまして申し訳ありません!
尊トモリクエストありがとうごさいましたうるはさん!勝手に設定も付けてしまって、しかも文トモに似通っているような…ほのぼのというご希望に添えているかどうかも怪しい…返品可ですよ^^
彼はトモミが居ればどんな日もハッピーになるんですねぇ(´∞`)ちなみにこの後こっそり聞き耳を立てていた雑渡さんに全力で恋路を邪魔されます。頑張れ尊奈門!負けるな尊奈門!ラスボスを倒さないとトモミとの輝ける未来はないぞ!←

うるはさんのみお持ち帰り可です!
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