現パロです。文次郎が高3、トモミが高1設定です。








"学徒たるもの、文武両道すべし"

此処、忍術学園の掲げている目標のひとつである。
そこに通う生徒の潮江文次郎はそんな教えを忠実に守る学園一、学生している男だ。

『文武両道』
勿論これは学問と武芸の両方の面を指すが、文次郎は今それ以外の事にいたく頭を悩ませていた。







「潮江先輩、この間の予算報告なんですけど…」
「あ、あぁ…」



各部活動の活動費が集計された紙を持って話し掛ける女生徒は、この間文次郎が生徒会会計の任を二年に交代したと同時に書記に就任した一年生のトモミだ。

言うまでもなく文次郎は、彼女に恋をしていた。



二人のファーストコンタクトは入学式のすぐ後。
「俺と同じ中学の後輩なんですよ。」と次期生徒会長と名高い(今では正式に生徒会長になった)三郎に彼女を紹介され、その意志の強い瞳と可憐な容貌に一目惚れしたのだ。


知り合ってまだ何ヶ月も経っていないにも関わらず知れば知るほどは更に好きになっていく程の惚れ込みぶりで、常に「学生の本分は学業と武芸のみ。他にうつつを抜かす等あってはならない」と豪語していた彼が誰かに恋する事自体驚きだと言うのに、大層なベタ惚れ具合に学園内では知らぬ者はトモミ以外居ないのではないだろうか。


(くっ…トモミを前にすると何故こうも胸が苦しいのだ!?)

訂正しよう、気付いていないのはトモミと文次郎自身だけだ。






「…先輩?」
「っ!すまん…何の話だったか」
「あの、ここの予算って去年の部員と活動日数から言ってもっと少なくても良いんじゃないかと」
「そそそそうだな」
「やっぱりそうですよね!…って先輩顔赤いですけど大丈夫ですか?」
「だっ…大丈夫だ!」


力説するあまり、どんどんと近くなる距離。
彼女は至って真剣に話していると言うのに文次郎の心拍数は上昇の一途を辿るのみで、この心音が相手にまで聞こえてしまうのではと有りもしない事を考えた彼はそれを誤魔化す為に、前々から疑問に思っていた事を問うてみた。

「そういえば…何故毎回書記であるトモミが会計について聞きに来るのだ?今の会計には確か一年の団蔵や二年の三木ヱ門が居ただろう?」
「へっ?」


そう、あくまでトモミは書記なのだ。例え会計で不明な点があろうと処理するのは会計のはずで、彼女がやる必要は何処にもない。現に去年は三木ヱ門が引退した三年生の元会計に聞きに行っていた。
だから不思議でしょうがなかったのだ。


その問い掛けに途端に恥ずかしそうにもじもじとしだすトモミ。


「えっと…それは……」


先程までの勢いも失せ言葉を紡ごうとすればするほど顔は赤くなり、遂には俯いてしまった。

残念ながらと言うか予想通りと言うか、乙女心を微塵も理解出来ない文次郎はここまで分かりやすい反応も全く意味を理解していないようで、何を勘違いしたのかマズい事を聞いてしまった、とただただ狼狽える。
宙をさ迷う腕のやり場に困り、咄嗟に目の前にあった(手頃な)トモミの肩を掴むと、いよいよどうすればいいのか分からなくなった。




「別にトモミが来るのが嫌なワケではないぞ!」
「…は、はぁ」
「他の役職であろうと、こなそうとするその姿勢は立派だ!」
「ありがとう、ございます」

とりあえず頭に浮かんだ弁解を言葉にしてみるも俯いたままのトモミに、余計に混乱していく文次郎。

彼女的には肩を掴まれ、顔を上げれば確実に至近距離で見つめ合うかたちになるであろう事を予想して俯いたままでいるだけなのだが。






勝手に自分の中で追い込まれた彼は、次に浮かんだ言葉をそのまま口にしてしまった。




「そ、それに俺はトモミにこうして会えるのは嬉しいぞ!」
「え?」
「あ…」



その言葉に思わず顔を上げる。

文次郎はかち合った青みがかった黒い瞳がキョトンとしているのを見て、自分が今何を言ったのか、その言葉の意味することを理解して固まった。


「(何を、言ってるんだ俺は…!)」
後悔した所で遅く、これ以上自身の想いを悟られまいと掴んだ肩を離し目を逸らすぐらいしか出来なかった。
それでも尚見つめ続けるトモミに気まずくなって更に言葉を続けようとするが、今の状況をカバーするのに丁度良いそれが見つからない。終いには何故か彼女との出会ってからの走馬灯が脳裏に駆け巡るものだから、あぁ、終わった…等と彼らしからぬ考えがよぎった。




すると、固まったままの両手を小さく細い手にぎゅっとひとつに握られる。






「わ…私も、ですっ!私も、先輩に会うのが楽しみで!」


その光景はさながら愛の告白で。
しかし雰囲気は決して甘やかでなく、今言わなければこれからの一生でもう二度と言えなくなるような必死さがあった。



「だから…会計の事以外でも、先輩のところ、来ても良いですかっ!?」


顔を真っ赤にしながらもそれだけ言い切ると、文次郎を見つめたまま言葉を待った。




流石に鈍い彼でもこればかりはどういった意味の込められたものだったのか理解したらしい。

その上で頷くと、トモミが安堵したように笑った。





とくん、

その瞬間
どんなに忙しなく動く心臓よりも、重く痺れるような甘さを含んだ静かなる鼓動を感じて、自覚した。






"恋"を知った日




兎に角、彼はこの感情の名前を家に帰ってから辞書で引くことにした。


答えは合っているだろうか











********
ううむ蛇足だ!
でも楽しいな文トモ!続き書きたい^^
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -