※現パロで、幼なじみ20歳綾部×18歳トモミです。



冬の寒さもほんの少しづつ抜け、あらゆるものが芽吹きの準備を始める季節。
高校卒業も間近に迫った今日この頃は、受験勉強から解放された反動ともうすぐやってくる別れに向けて沢山の思い出を作ろうと、友達とのショッピングや映画や遊園地等々、連日予定がみっちりだった。

しかし今日に限っては家でごろごろ寛ごうと決めていたトモミは、連日の遊びで疲れた身体を休ませる為に文字通りベッドでごろごろして、惰眠を貪る――はずだったのだが、





「遊びに来ちゃった。」



小脇に小さな男の子を抱えて、彼女の幼なじみである綾部喜八郎がやってきた。


「え?」

玄関先でこんなに間抜けな声を出すのは初めてかもしれない。
両親とも仕事で居ない中インターフォンが鳴って仕方無く出たが、なんとなく嫌な予感はしていた、やはり出なければ良かったと心の内でトモミは思った。
これできっと身体を休めると言う計画は出来なくなるだろう。むしろ余計疲れそうだ。

だが既に出てしまったものは仕様がないので、腹を括ってとりあえず一番気になっている事について彼に話を聞く事にした。



「その子は?」
「甥っ子…?」


(なんでアンタが疑問系で答えるのよ。)
トモミは思わず手で目を覆う。


イマイチ要領の得ない喜八郎に代わって説明すると、この男の子は喜八郎の甥っ子でこの子の両親が家を出る用事があるので、親戚の中でも一番懐かれている喜八郎に今日1日預けたらしい。
ちなみに甥っ子君の名前はこーすけ、と言うそうだ。


(一番懐いてるって言ってもわざわざ喜八郎に預けなくても…)

溜め息を一つついてトモミは家に引き入れた。









抱えられていたのを下ろされたこーすけの目線に合わせ、自己紹介をしようとしゃがみ込んでよく見ると、小さい頃の喜八郎そっくりの顔立ちにトモミは目を丸くする。しかもこの無表情で全然喋らないあたりも、本人を小さくしたとしか思えなかった。
だから喜八郎に懐いているのかと考えてみると納得がいく。


「私トモミって言うの。よろしくね。」
「……うん。」

なんにしても可愛い事に変わりは無い。
年は3歳くらいだろうか、喜八郎と同じく不思議そうな大きくクリクリとした目がトモミをじっと見ていて愛くるしい。

母性本能をくすぐられる彼を抱きしめたくなる衝動を抑えて、とりあえず飲み物を用意する。



「喜八郎はお茶で良いわよね。」
「うん。」
「こーすけ君は何飲みたい?オレンジジュースとグレープジュースがあるけど…」
「おれんじ…」
「分かった。…じゃあとりあえず二人とも離してくれる?」


毎回の事だが、家に入るなり何故かトモミにぴったりと抱き付いてくる喜八郎。(子供が居るので本当に止めて欲しい。)


その真似なのか、こーすけも同じようにトモミのあとをついて来てがっちり足に抱きつかれる。(だから止めて欲しかったのに。)



「「やだ」」
「……。」

(似てるって言ってもこういう所まで似なくても…)


これから先が思いやられるトモミは本日二回目の溜め息をついた。







アトガキ****
こーすけは、名前は違うけどちっちゃい喜八郎だと思ってください。
無駄に長いので切ります。
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