※現パロ。高校生。










何処からか聞こえる賑やかな部活動の音さえも遠い彼方へと置いてしまうような冷たい廊下。それに沿って口を開けるいくつもの扉達。
窓から差し込む夕陽は決して柔らかさをもたらすことなく床を照らしていた。


無機質な上履きを滑らせて進む先から聞こえる声にならない声。
うっそりと聴き入ってしまいそうになるほどのか細く美しい旋律は彼女のものだろう。数ある扉の中から彼女を秘めたものを選び出す。






「ティファ。」


四角い教室の隅、窓際でカーテンに寄り添うように佇む黒髪は一筋も余すことなく光を集めていた。

涙は、重力に従って落ちる。



「エ、アリス…?」


振り返った彼女の微かに赤くなってしまっている目元も潤む瞳も、まるでそうであることが当然であるかのように美しかった。



…とってもすてき、


思わず呟いてしまいそうになる唇を少し結んで彼女の傍に歩み寄る。
震える肩に手を伸ばすのは、止められなかった。



「…クラウドのこと?」
「……うん。」


俯きがちに長く艶のある髪に隠された表情は見えないまでも、なんとなく察する。
そっか、と短く返した言葉に感情は無い。自然と唇が緩やかな弧を描く。

ああ、まだ、まだ駄目。

咄嗟に顔に力を入れてこの場の雰囲気に合った表情を作る。
可哀相な彼女を慰める親友を演じきらなければ。



「大丈夫。」
「でも、」
「大丈夫よティファ。」


だけどどうして泣いているのかなんて最初から深く聞く気はなかったから大丈夫、大丈夫と肩を抱いて繰り返せば少しずつ落ち着いていった。

だって彼女がこうして泣くのは大抵彼のこと。
そして彼のことで泣くのは―…大方の予想はつく。

臆病だから。
相手も傷付けたくないけど自分も傷付きたくない、そんな二人だから。

それがいつしか取り返しのつかないことになる。私に有利な方へと進んでくれる。
じわじわと確実に。
だから焦ってはいけない。
勿論、流石に可哀相とか思わないわけじゃない。

けれどそれ以上に私は愛しているから。



彼女の黒く縁取られた瞳からぽたぽたと零れる涙が、宝石のように煌めくのを見て、彼が羨ましくなってしまったのだ。





「エアリス。」
「うん?」


「…ありがとう。」


可哀相なティファ。

出来ることなら今すぐにでも奪ってその綺麗な涙ごと貴女を食べてしまいたい。
きっと恍惚の味がするんでしょうね。


「いいのよ。」


どうか待っていて。
必ず貴女を私だけのものにしてみせるから。
そうしたら二人で一緒に甘美を貪りましょう。




「だって私達、友達じゃない。」


だから今は、粗末な嘘を許してね。








嘘つきの懺悔




誰にも彼女を奪わせやしない、絶対に
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