転生パロ






今年から通うことになる新しい校舎。正門のすぐ近く。
今にも芽吹こうとしている桜の木々の下で、まるで運命的な出会いであるかのように春一番が私達を巻き上げた。







「髪は」

切ってしまったんですね



再びの――いや、この身体に生まれ変わって初めての邂逅。

記憶の無いかもしれない彼にとって初対面である私が一番最初に発したのはその言葉だった。
でも、覚えていますかなんて不粋な事は最初から言う気など無かった。

だって、貴方が忘れる筈などないのだから




「思い出を大事にするのも良いが、時代に合わせて生きるのも大切だろう。」



あの時となんら変わることのない、微笑を浮かべている。
ほら、やっぱり覚えていた


けれどあの綺麗な長い髪は今生ではもう見られないのかと思うと少しだけ、寂しい。
短くなってしまった髪(と言ってもこの時代ではこれが標準だけど)が、同じように艶々としていたのがせめてもの救いといったところだろうか。



「お前は…変わらないのだな。」


息をするのと同じくらい自然に私の前へと歩み寄った彼は、私の高く結い上げた髪に手を伸ばした。
必然的に近くなる腕、顔。
懐かしくて涙が出そうになった。

あの頃みたいに

「あの頃みたいに、していれば。見つけてくれるんじゃないかって。」


自分の最期はよく覚えていないけど、私はあの頃を確かに生きていた。

もう一度、会えるかもしれない。


そんな淡い希望で今日までを生きてきた。
前世の恋人との再会を夢見る等とありきたりな小説のような設定に、時には馬鹿らしいことかもしれないと思うこともあった。

しかし、それが前世の記憶を持つ私の運命なのだと。




――再会は、果たされた



「例え変わっていても見つけ出したさ。」
「ふふ、それなら嬉しいです。」
「例え見た目が変わろうが名前が変わろうが性別が変わろうが、お前のことなら全て分かる。」
「本当ですか?」
「勿論。」


柔らかい笑みは、初めて出逢った日だまりの中での貴方と一緒だった。
夢かとも思う。
私が掴もうと手を伸ばせば掻き消えてしまうんじゃないかなんて。
だから手は伸ばさなかった。
少しでも長く、この幸せな夢に浸っていたかったから。


しかしその決意も虚しく、彼はいとも簡単に私を抱き締めた。



「分かると言っただろう。」


ぎゅう、ときつく抱きすくめられて私は気付く。

私があの時、最期まで願ったのはきっとこれだったんじゃないかと。


――息も出来ないくらい強く、存在を確かめることが出来るように、もう二度と離さない為に

――抱き締めて、ほしい



「また会えて良かった。」


懐かしい香りがする。
温かな感触に埋められて。
あんなにも焦がれた貴方が、此処に居る。
途端に色を失っていた記憶が鮮やかに蘇る。

やはりこれは運命だったのだ、



「この時代にお前が生まれていなかったら、どうしようかと思っていたぞ。」
「―…仙蔵せんぱ い。」


「これで、もう一度お前を愛せる。」


覚悟していろ、と声が聞こえた。
それはつまり幸せになる覚悟の事だろうか。それならば私が拒否する筈がないでしょうに。

だから私も

「私だって、もう二度と、離してあげませんから。」





呪いをかけるように囁いた。

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