※プロ忍設定。ギリギリ表に置きましたので注意!












起き抜けの気怠げな余韻漂うこの部屋で一番最初に思い出したのは、彼が意外にも"男の人"であったこと。
それを告げれば、やたら棒読みの台詞が返ってきた。


「何それすっごい失礼。」

互いに布団に入ったままで申し訳程度に纏った着物の隔たりを感じながら体温を共有し、それでもまだ少し寒くてぴったりと寄り添えば、彼は分かったように私を包み込む。
彼の肌蹴た裸体はきっと女性のように艶めかしく細いのだろうと予想していたのに思いのほかしっかりとしていて驚いたのも、昨日のこと。


「だって綾部先輩、どちらかというと綺麗の部類に入るお顔ですし。」
「でも中身まで女っぽいとは限らないでしょ。」
「それにその、…こういったことに興味が無さそうだと思っていたので。」


そう、顔立ちより一番そこが意外だった。
私だって別に彼が女らしい性格だろうとは考えてはいない。
ただ、普段から色事に全くと言って良いほど関心を示していなかったので、そういう欲などないのかと思っていたのだ。
だが言われてみれば確かにどれも偏見で私の憶測に過ぎず、すみません失礼でしたね、と謝罪を述べようとした時だった。


「うん、興味は無いよ。それなら蛸壺を掘っている方が僕には有意義だ。」



・・・・。


ちょっと待て。

今何て?

男として生物としてそれってどうなの、とかいう議論は置いといて


興味が無い?蛸壺の方が有意義?

それが昨日(半ば強引に)抱いた女を前にして言うことなのだろうか。
じゃあ私は一体何のために。

蛸壺掘りの方が有意義だと言うならずっと掘っていれば良かったではないか。

というかそっちの方が断然失礼だろう!



「あれ、トモミ怒ってる?」
「当たり前です!」
「なんで?」


言わせる気かこの野郎。

私もくの一の端くれ、もう清い体ではないので別にそこの所はぎゃあきゃあと騒ぎ立てることはしない。
だが、こうもいけしゃあしゃあとされていれば腹が立つのは当たり前だろう。

あの時、柄にもなくドキドキしてしまった私が馬鹿みたいだ。


何だかそれが悔しくて抱き締められていた腕を解いて、彼とは反対側に寝返りをうって少しばかり布団を奪ったら再び、ぎゅうと背中から抱き締められた。
密着した肌から伝わる熱に、またしても胸が高鳴ってしまった私は本当に馬鹿になってしまったのかもしれない。


「何ですか。」
「なんで怒ってるの?」
「ご自分の胸に手を宛てて考えてみて下さい。」
「……。」
「こ、これは私の胸です!」
「だってこっちのほうが気持ちいい。」
「そういう問題じゃなくて…」

「ねぇ、トモミ。」


いきなり、名前を耳元で囁かれ続く言葉が喉に詰まった。

この人の響く声は背中から腰に掛けて駆け巡り私を痺れさせ、何かをおかしくする。
最中もそれを狙ったようにするものだから、興味が無いと言いながら実はなかなかに慣れているのではないかと疑いたくなってしまう。



「僕には、蛸壺掘りの方が有意義だった筈なんだけど。」
「…それはさっき聞きましたから。分かってます。」
「いや、分かってないよ。トモミは何も分かってない。」
「んっ ちょ、ちょっと先輩っ」
「大体僕にも分からないのに、分かるわけがないんだ。」


胸に宛てがっていた手に感触を楽しむように弄ばれ、薄い唇を項に寄せられただけで意図せずして反応してしまう。
なんとなくあやしくなってきた雰囲気に、燻っていた熱が再び息を吹き返すのを理性でなんとか押し止めようと、抵抗してみるが力が上手く入らない。
女として生きる術を身に付けてしまった体をこの時ばかりは恨めしく思う。

それでも本気で拒もうとしなかったのは、彼の愛撫に少しでも、愛を感じたからだろうか。
気が付けば覆い被さる彼を涙でうっすらぼやけた瞳で見上げていた。



「今まで、こんなこと無かったのに。」

ぽつり、と落とした言葉。
無表情は変わらない筈なのに、ここで私は初めて表情に変化を見た気がした。

「どうしてだろう。」

思わず息を呑む。



「トモミがたまらなく欲しい。」



私を求める彼の瞳は狂おしげに細められ、切なく、そして情欲に掻き立てられた男の目をしていた。

それが酷く私の心を揺さぶり、胸のもっと奥の深い所に言いようのない締め付けを与える。
息もままならなくなりそうな苦しさに身悶えし胸を押さえるも、届くことのない其処のまだ名付けられていない感情に代わって、欲しいのならただ貪ればいい、と頭の中の本能的な部分が彼の首に腕を回してしまった。


思えばこれは天才トラパーと謳われていた彼の巧妙なる罠だったのかもしれない。




「もう、いいよね…」


しかし、そんなことを考えた所で一度付いてしまった火を消すことは難しく、それならいっそ燃え尽きるまで。

果たして純か不純か分からないこの始まりの先に、私は一体何を見るのだろうか。




臆病な私は隠された想いに、気が付かない振りをして唇を合わせた。














*********
最後の無理矢理感が否めませんねぇ…^^;


綾部はまだ恋愛感情を把握していません。
なので何故自分がトモミにムラムラっとしたのかさえ理解してません。してませんけど、抑えられなくなっちゃったので襲っちゃったんです。
一度したら治まるかと思ったらまたしてもムラムラし始めたので…みたいな?(聞くな)

一方トモミは流されて及んでしまったワケですが、一夜限りだしまさかその後好きになるなんてこと無いわ、と若干認めたくない感じ…?(だから聞くな)



手直しする可能性大いにアリです。
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