※トモミがタソガレドキ忍者設定。









残念なことに不意について出た言葉は確かに彼女の耳に届いてしまったらしい。

ぽかんとした表情を見た瞬間、自分の心のあまりの醜さに恥ずかしくなり気が付けば走り出していた。




「ま、待って下さい!」

背後からの制止も聞かずに駆ける足は一刻も早くその場から逃げ出したくて、木々の間をもつれながらも抜けていく。


いっそこのまま私という存在が風に溶けて無くなってしまえばいい。
でなくば、こんなみっともない私なんてどうして存在していられようか。

それなのに



「…つ、かまえ たっ!」

私を背中から抱き締める彼女に、どうか嫌いにならないでと勝手過ぎる願いが頭をよぎる。

しかし細いながらにかなりの筋力を備えた腕に捕らえられ観念する他なくなってしまっても、せめてこれ以上見苦しい姿を晒すまいと零れ落ちる涙を見せないように振り向こうとはしなかった。



そして同時に、例えこういう状況であっても彼女の温もりを傍に感じるだけで胸が高鳴る私は心底惚れているのだと再確認してしまう。
これからはもう、それすらもただ虚しくなるだけなのに。



どうして私はあんな事を言ってしまったのか。

トモミちゃんが好きで、大好きで。
ずっとこの胸に秘めていくと決めた筈の清らかな恋心は、私が思っていたより醜く汚い欲で構成されていたらしい。


想いを伝える勇気すらないクセに
嫉妬なんて。



「ごめ、ん…。」

きっとトモミちゃんは呆れてる。
もしかしたら嫌われたかもしれない。
そうなったら私は明日からどうやって生きていけば良いのか。大袈裟かもしれないが、彼女に嫌われてしまった人生など何の意味も無くなってしまうのだろう。

などと考えて自然と俯く視界にいつの間にか背中から回りこんできたトモミちゃんが映りその形相に一瞬、肩が跳ね上がった。



吊り上がる眉と共にいつにも増して大きく開かれた目は明らかに興奮…いや、これは怒っている。呆れているとかそういうのではない、物凄く怒っている。
やっぱりさっきのに怒っているんだ。

あああどうしよう!
もう逃げたい消えたい死んでしまいたい!

しかし射抜くような鋭い眼光に、年上で先輩の筈である私は体が竦んで全く動けそうにない。
トモミちゃんが息を大きく吸い込むのを見て、次に続く言葉を聞くのが恐ろしい私は目を瞑って構えたが、私の胸に指先を突き付けいつも組頭を叱るのと同じように言い切った言葉に今度は私がぽかんとする番であった。












「私がお慕いしているのは尊奈門さんだけです!勘違いしないで下さい!」


「…え?」

あぁ、さよなら私の初恋。
なんて心の中で呟いていたのになんだか予想と大分外れた…というか告白紛いな事を言われたような。確認の為にゆっくり開いた視界にはやはり怒った表情のトモミちゃんが居て。


「もうほんっと鈍いんだから!」
「ごごごごめんなさい。」
「なのに変なところで勘繰ってヤキモチ妬いたり勝手に落ち込んだり!」
「は、はい…申し訳ない…。」
「大体ですね尊奈門さんは…」


眉間に皺を寄せたまま険しい顔で一つ一つ話を引っ張り出してくる彼女は完璧に説教モードに入っており、私は未だ状況を飲み込めずいた。
いきなりのことに引っ込んでしまった涙の乾いた跡がなんだかくすぐったいが、つまり?

「トモミちゃんて…私のこと好きなの?」

まとまらない答えを口にして漸く理解した。

トモミちゃんが、私を好きだと
いくら鈍い私でも、それを口にしたことで今までまくし立てていた彼女が突然黙ったかと思えばみるみるうちに顔を染め上げたのを見たら流石に分かる。

トモミちゃんは、私を好きなのだ



「あ、改めて言わないで下さい!」
「うっ!?」

極めつけは照れ隠しにくれた腹への攻撃。本当に照れているらしく、好きだと告白した相手に対してそうそう出来ないであろう遠慮なき凄まじい威力の掌打である。

だがその痛みが現実である証拠となり、じわじわと相思相愛の事実を実感した私はただ嬉しくてトモミちゃんのそんな所もたまらなく可愛いと思ってしまうワケで、お返しとばかりにぎゅーっと抱き締めた。

「わ、私まだ怒ってるんですからね!」

と倍の力で抱き締め返され肋骨が軋む音がしたけれど、困ったことにもう離すことが出来なさそうだ。







(しかし調子に乗って抱き締めていたら恥ずかしさが頂点に達したのか、脇腹に重い一発を食らって離さざるを得なくなるまであと少し)

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嫉妬相手はひとつ年下の利吉さん希望。
可愛いのは2人共!
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