※トモミがタソガレドキ城くノ一設定。








とある昼下がりのことでした




「あれ?組頭、任務は…」
「ないよ」
「は?」
「終わった。だから今日はもういい」


任務前の休憩と言う名の準備時間、まだまだ新米だったあの頃とは違って早くに済ませた私は縁側で一人足をぶらぶらさせながら、正真正銘の休憩として先輩である尊奈門さんに頂いたお煎餅を食す。
これから向かう殺伐とした時間を過ごすためには必要な時間だ。

そんな時にやってきたのは別の任務にあたっていた筈の組頭。
忍装束に目立った汚れも乱れもない上に私が任務に出て半刻以上は遅くに終わる予定だと聞いていたのに、そこはやはり流石と言ったところか。


素直に感心していると組頭は二尺程間を空け隣に座りそのまま頭を私の太腿に。
唯一顔の中で肌を露出している右目がそっと閉じられていることから明らかに"ちょっとした"休憩ではないのが窺える。



「…組頭はそうでも、私はこれから仕事があるんですが。」
「気にするな」




気にするとかそういう問題じゃないんですけど。

と言いたいがどうせ言っても無駄だろう。
しかし任務をサボることは出来ないのでその時間が来るまでこの膝を貸して差し上げましょう。

諦めのため息ひとつを吐いて、組頭の頭に欠片がかからないよう再びお煎餅をかじり始めた。




ぽり
ぽり

ぽり


「…トモミ」
「なんですか?」
「膝まで振動してる。」
「まぁ、お煎餅食べてますからね。」

奥歯で噛み砕けば小気味良い音を立てて割れる。女の子は手で割って食べた方が上品だと言うけれど、口の中で弾けるような砕けっぷりは粋な感じでなんだか気持ちが良い。
ほろ苦い焼き醤油は勿論だけど、ちょっと堅めなのが私は好きだったりする。

それをぼりぼりかじるものだから、布を隔ててるとは言え私の体に密着している組頭にはその振動がダイレクトに伝わったらしく眠たそうな瞼が薄く開いた。




「あ、うるさいですか?」
「…いや、」


微睡む瞳はどこを映しているのか分からなかったが柔らかな光が宿っているのを見て、良い夢を見れそう、なんて任務前なのに穏やかな気持ちになれる。

穏やかな気持ちになった勢いで私にしては珍しく組頭に母性本能などというものが目覚めたので、猫のように体を丸める彼の頭を優しく撫でてみれば気持ち良さそうに目を細めた。




「生きている…音が、するな…」


恐らく既に夢と現の間をさ迷っているであろう組頭は、聞こえるか聞こえないかぐらいのか細い声で言う。
半分寝ぼけている状態の組頭もこれまた珍しく、なんだか愛おしく感じるのは多分気のせいではない。

さぁ、夢の中へと舟を漕ぎ出せないでいる組頭にもう一押ししてあげましょう。





「そりゃ、生きてますから。まだ死ぬつもりもありませんし。」
「そう…だな」
「そうですよ。だから安心して眠って下さい。」


「…あぁ。」


ようやっと解放されたように眠りについた組頭。
どうか良い夢を、と口の中で呟いて、秋も近付いてきた庭先を眺めながらどうにか任務をサボる理由はないかと真剣に考え始めた。




そんな昼下がりも悪くない、などと思えるのはやっぱり貴方が好きだから






(何やってんだトモミ。)
(あ、高坂さん。組頭に膝枕してるのと足が痺れたので今日の任務は休…)
(却下)
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