※大人設定で鉢屋視点。
ありがちネタで続かない上にグダグダなのでそれでも良いという寛大な方のみどうぞ
(―温かい…)
腹から流れる血は私の座り込む地面に吸い込まれずに辺りに広がる。
自らの血の海に倒れ込みその温かさを感じて初めて、己が今まで生かされ生きてきたことを知る。
だが、見れば分かる。これは致死量だ。
倒れ込んだ指先の爪にこびり付いた血を見つめ、その先にある風景を眺めた。
青々とした山々がどこからともなくやってきた風に煽られ、勇ましく揺れ動くざわざわとした音に耳を済ませば命の始まりと終わりが手に取るように分かる。
川のせせらぎでさえも、柔らかな優しさの中に何もかも飲み込もうとする荒くれた一面を持っているのだ。
そうすればしめたもので、今の今まで理解し得なかった世の中の物事や真理全てが私の中で合点がいった。そうだったのか、と
知るには遅すぎたが。
しかし、それはどうでもいい。
山の緑と私の血の色が決して交わらないのを見て嘲笑する。
忍びとして生きるのに邪魔な感情は捨ててきた。判断を鈍らせる感情はつけいられて自らに死を招くから。
自分の顔を捨てた私には簡単なことだった。
けれど
どんなに顔を捨てても、
誰かを被っても、
血に汚れても、
彼女だけは消えなかった
消したくなかった
世界を知り、理解した今でも自信を持って言える。
彼女は泣きたくなるほど美しかった。
"私は、鉢屋先輩を―…"
美しく、輝いていた。
だから何を引き換えにしても彼女の全てが欲しかった。
なのにどうして
「 トモ、ミ」
名を紡いでも君は此処に居ない。
脳内に再生される君だけが私に向けて微笑む。そんな虚しさ
それでも、命も僅かになった私の最期の願いをこめて君に伝えたいこと
トモミに会いたい
「私、も…トモ ミが……―」
続く言葉は、空に消えたけど
"馬鹿な人ですね"
寂しそうに笑う君の声が聞こえた。
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どいひーですね!
実は「狐に嫁入り」の前に考えてた長編ネタの1話目でして…勿論鉢屋くんは死んでませんし、最後のトモミちゃんの声は本人です。
トモミがぶっ倒れてる鉢屋を助ける所からスタートする話なんですが…詰まった←