彼女が頬を撫でる感触がする。
名残惜しげに引いていく掌が勿体をつけて誘っているように感じ、思わずその手を掴む。

「クラウド…」


これから、俺にとって世界のすべてに成り得る声が名を呼んだ。
応える代わりに、しなやかな彼女の指先に口付けを落とせばそれに反応したようで、小さく手が震えたのを肌全体で感じ取った。

「くすぐったいよ、クラウド」


くすくすと笑う声でさえ、振動となって伝わる。



「今日はどう?目は痛む?」
「いや…」
「そう、良かった」
「ティファは今、どんな表情をしている?」

そう言うと俺の両手を彼女の顔へと導いて触らせた。

「…笑ってる」

本当は、それぐらいなら声で分かる。
多分彼女もそれを分かっているが、こうしてわざわざ確かめさせてくれている。

この方法が最もリアルに感じられるからだ。

神経の集中した指先から、触感や熱を感じて優しく撫でつける。
まるで、吟味するように



「だからもう、くすぐったいってば」



この暗がりの世界の中で、確かに感じられる彼女が愛おしい。
それは一抹の光となって導き照らす。
俺はその儚い光が決して絶えぬようこの命を懸けて護るだろう。





「クラウド」




愛が、目に見えぬもので良かった。

きっと俺は彼女の愛を一身に受けながら生きてゆける。




閉じられた世界で愛を囁き、キスをした









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何が書きたかったのかというと、ティファにベッタベタなクラウドが書きたかったんです。
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