剣と剣が激しくぶつかり合い、火花が飛び散る。相手はウェイトがあるためパワーでは確実に負ける。故に横に流そうとすればそれを予想していたかのように勢いよく頭突きが飛んできた。
「ぐあっ!?」
もろにそれを食らい、襟首を捕まれると無造作に投げられた。
「うおりゃあ!!」
「っ!」
この男にはルールというものが通用しない。先から戦っていて思うがとにかく目茶苦茶だ。投げ飛ばされながらも空中で態勢を立て直すと、スコールは地面に何とか着地し、もう一度ガンブレードを構えて息を吐く。視界に入る血が邪魔だった。これで額を傷つけられたのは、人生で二度目である。
「なぁ、一つ聞きたいんだけどよォ、」
「…?」
ガシャ、と重い刃が連なる剣を立てると、男はぽり、と頬を掻きながらどことなく気まずそうにスコールへと尋ねる。
「あいつ、…元気でやってっか?ぴーぴー泣いてたり、してねぇか?」
「………」
思わず、構えを解いて盛大に溜息を吐いた。この親子は何でこんなに面倒なんだと、思わずにはいられない。
「…アンタが直接本人に聞いたらどうだ?」
そう云えば、男は苦笑しながら、また頬を掻いた。その笑みは、いつになく優しい。
「聞きたいのは山々なんだけどな、つい、からかっちまうんだよなぁ。俺もあいつも、素直じゃねぇからなぁ」
(解っているならどうすべきか少しは努力しろよ…)
ティーダも、よくこの男の話題になると熱くなってフリオニールに止められている。ほんとうはそう思っていない癖に、体面だけを見て、その体面だけが自分の戦うべき理由だと思い込んでいる。
スコールからしたら、この親子はどうにも甘い。甘くて反吐が出そうになる。
「…これは、戦争だ」
ガシャ、とスコールもガンブレードの刃先を地面へと下ろす。そして、強く眼前に居る男を睨んだ。
「自分の息子を気にする余裕があるなら、戦いに参加するな。二人で仲良く、戦線離脱して仲良くしてれば良い」
切っ先を男へと向ければ、男は一瞬目を細めた後、また頬を掻いた。
「そんな風に出来たら、とっくにやってるさ」
真面目な声で、男はそう紡ぐ。
「もう後戻りは、俺もあいつも出来ねぇのさ。それにな、兄ちゃん、」



いつだって子を想うのが、親なのさ。



ぐ、と男が剣の柄を握り、肩に担ぐ。男は、笑った。
「てめぇの獅子の心とやらを、見せてもらおうじゃねぇの」
また、突拍子もなく男が踏み込みスコールの胸元を狙い剣を振り下ろす。それをかわしながら、スコールは泣きそうだった。
(親…?)
ぎん、ぎん、と重い一撃を受け止めながら、脚がよろめく。魔法を放ち距離を取るも、心と身体がばらばらになったような感覚が離れない。
たった、一言。それが、スコールの心を蝕む。
(俺は…そんなもの、知らない…)
ギィン!とガンブレードが飛ばされ、スコールの身体がまた吹き飛ばされた。顔面と腹に熱い衝撃を食らって、ごろごろと派手に転がる。倒れた先に見えた夜の色に、光を纏った虫がふわふわと漂う姿が綺麗だと思った。はっ、はっ、と息を浅く吐いて、引き攣る腹と右頬が酷く痛くて。どくどくと動く心臓は忙しなくて、全身が熱いと思った。
「何だ、」
男が、しゃがんでスコールの顔を覗き込む。
「…これしきで泣いて、兄ちゃんもアイツと一緒だな」
馬鹿にした台詞に腹は立つのに。食らった頬と腹は引き攣る程痛いのに。
どうして、この男がこんなにも優しい笑みを浮かべているのか、スコールは理解出来ないと思うのと同時に、理解したくないと思った。





父親




(そんなもの、俺は知らない)








2010/07/21


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