※現パロ、ちょっと卑猥




待って、という前に唇を塞がれた。お互い雨でずぶ濡れで、傘を持たずにちょっとそこのスーパーまで、と歩いて行ったら帰りに急に土砂降りで酷い有様になりながら帰ってきた矢先のことだった。冷たい玄関のドアに両手を押し付けられて、何がそうさせたのか知らないが何も言わずに唐突にこんな行為に及ぶのは恥ずかしいながらもよくあることで。
普段考えていることを口に出さないスコールは、こんな時もやっぱり顔にはおくびにも出さない。ティーダとしてはいつもスコールに向かって公衆の面前で抱き着いたり好きだと飽きることなく言ってみたり、とにかく子犬よろしく尻尾を振ってスコールの後を着いて回ってはアピールするというのに。
同い年の寡黙な青年の態度は、そんなことをしようものなら邪魔だ、離れろ、状況を考えろ、空気を読め、と別の意味でとにかくうるさい。ばっさりと切り捨てる発言ばかりだが、けれどもこんな時、荒い手つきに優しさが見え隠れする。
「ん…」
舌を吸ったり唇を舐めたり、その仕種はとにかく甘さすら感じて、蕩けてしまう。この端正な顔立ちだからモテない筈がないが、だがスコールが自分以外の人とこういう経験があるのかと思うと胸中に複雑な思いが過ぎった。だがそのお陰か、或いはスコールの元々のテクニックがあるのか、はっきりは解らないが、キスというのはこんなに気持ちの良いものなのか、と受けながら思う。
スーパーの袋が、どさりと床に落ちた。そもそもティーダがアイスが食べたいと言ってスーパーに買いに行ったのが発端だったのに、これでは溶けてしまう。押さえ付けられた両手がそっと離されて、腰と後頭部を引き寄せられた。そのシチュエーションに、胸がドクドクと鳴って忙しかった。
角度を変えて、上唇をちゅ、と啄まれた。女の子は、いつもこうして相手の男から愛されて施しを受けるんだと思うと、ちょっと大変だなぁ、と場違いなことを思う。でもきっと、今の俺みたいに蕩けてしまうんだろうなとも、そう思った。
一通りキスをして満足したのか、今度は首筋に顔を埋めてきたスコールが、やけに甘えたな大きな犬に見えて可愛いなと思った。口には出さないけれど、言葉にせずとも愛を感じ取れるなんて、贅沢な幸せだと、内心笑みが濃くなる。
「スコール、アイス溶けるっス…」
空気を読んでいない発言でムードは壊してしまうだろうが、けれどもお金を払ってまで買ったものを無下にすることもできなくて、背に回した手でスコールのシャツを軽く引っ張る。すると耳たぶを強く噛まれて、身体が強張った。
「今は、そんなことどうでもいいだろ…」
有無も言わさぬ言葉と空気に、ティーダはアイスをあきらめた。きっとスコールの腕の中に居る方が、もっと甘い味を噛み締めることができるからと、身体はもう解っている。少し強引で、不器用で、言葉では表さないけれど。実は優しくて、いやなものを流してくれるようなぬるま湯に浸かる幸せを衒うことなくくれるスコールが、ティーダは好きなんだなぁと、やはり他人事のように思った。



キスキススキ



2010/07/15


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