※現代


(…疲れる)
思わず漏れた溜息に、自然と眉間の皺が寄るのを感じながら、俺は床に散らばった古い写真を一枚一枚拾い集めた。くだらない、と同時に思いながら、開け放たれたドアの向こうに消えて行ったティーダの背を思い出して、また漏れたのは溜息。それはいつもより重い。
古い写真を一枚見れば、そこには昔の自分が写っていた。今よりも幾年か若い頃、学校の行事である修学旅行か何か、だったと思う。その時に一方的に女子生徒に絡まれて撮られた集合写真。何で持っているのかというと、単にその女子生徒に一枚押し付けられそのまま処分するのも面倒になり今の今まで忘れていたからだ。ティーダがある日掃除をしていた時にたまたま見つけ、最初はからかい半分で俺の前に差し出してきた。くだらない、とまた溜息を吐いた。ティーダは最初こそ笑顔だったがだんだん表情が暗くなり、しまいにはこう言った。


『後ろめたいことがあるのかよっ!ないならはっきり言えよ!!』


そこまでティーダが感情に任せたまま叫ぶとも思わなくて、俺は言いたいことも言えないまま、投げつけられた写真をまた一枚拾い集めて、床に座った。昔からあまり喋らない、喋れないこの性分はもう治らないんじゃないかと思う。いちいち言葉に出すのが億劫なのもあるが、踏み込んだり踏み込まれたりされるのが怖い。
別に後ろめたいことなんかない。第一その女子生徒とは何の関係にも発展しなかったし、何よりそんな風になるのはこちらの方からパスだった。ティーダが初めてだった。そういった関係になるのは。
良くも悪くも飛びすぎだと、従兄弟のクラウドに突っ込まれたことがあった。確かに、とも思う。でも、ティーダから言ってくれた気持ちが嬉しくて、でも、だからといって人間早々変わることはできなくて。
(堂々巡り、だな…)
あんな顔をさせたいんじゃない。ただティーダの笑顔を傍で見れるならそれだけで良かったのに。
(疲れる…けれど、)
このままじゃ、だめだ。漠然とそう感じて、上着と携帯と、部屋の鍵を掴んで。遅れながらも、ティーダの後を追った。




怖いんだ


(その恐怖を乗り越えた先に、何があるのかすらも怖いと感じる俺はほんとうに弱虫だ)




2011/01/23


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