※現代


「あれ?」
いつもと変わらない昼休み。だが物珍し気に声を最初にあげたのは一つ下の後輩であるジタンだった。
「スコール、猫にでも引っ掻かれたのか?」
剥き出しの腕の部分を指差して、ジタンは目をきょとりとさせながら俺に尋ねてくる。ジタンの隣に座っているバッツは、何故か目をきらりと輝かせてわずかに細めた。
俺は隠すのも面倒になり、かといってストレートに言うのはもっと面倒だと思い、とりあえずジタンの問いに小さく頷いた。
「…子猫を飼いはじめたんだが、なかなか懐かなくてな」
苦労してるんだ。
そう言って食堂で買ってきたコーヒー牛乳のパックを飲み干し、容器をめきょりと潰すと、ぴんときたのかジタンもまたにやにやしながら俺を見つめる。何だその視線は。言いたいことがあるならはっきり言え(俺が言えた義理じゃないが)。
「春ですねぇバッツさん」
「そうですねぇジタンくん」
「…お前らな」
はぁ、とため息。腕の引っ掻き傷をネタに二人は妄想を激しくしながらとにかく俺に話を振る。それを無視しながら、ちらりと腕の傷を見遣る。


『スコー…ル…ッ』


あんなに熱っぽく囁かれて。一生懸命俺を受け止めて。それでもなお幸せそうに笑う組み敷いたあいつを見て。思わず止まらなくて、ついつい何回も、致してしまった訳で。
(これじゃまるで、餓えた獣だ…)
でも、誘ってくるあいつも悪い。なんて、理由を無理矢理こじつけて、きっと今日も理性と闘うんだろうなと、頬杖をつきながらそう思った。少し蚯蚓腫れした腕の傷。そこに顔を埋めて小さく舐める。傷つけたいなら傷つければいい。お前が満足するまで、俺はそれを甘んじて受け入れるから。
でも、やっぱり、
「…もたない、な」
「ナニがもたないって?」
「何だよスコール〜もしかして早ろ」
「黙れッ!!!」



『スコール…ッ』



あんな声で、顔で、求められたら、




もたない
(俺の理性も身体も、全部お前に持っていかれるんだ)




※バッツさんが下品で大変申し訳ございませんでした



2010/12/17


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