※10親子の所に8がきちゃったよ的なパロ、細かい所は気にしちゃいけません



「なぁ糞親父」
「何だ馬鹿息子」
「突然ですが飼いたい動物が居ます」
「…ほんとに突然だなオイ」
「というわけで、」
何がというわけで、だ。朝飯を食い終わってガキが後ろから何かをがさがさと出す。オイ動物なんだろ?何でそんなスーパーのビニール袋みたいなやつに入れてんだ。動物虐待じゃないのかと突っ込みたかったが、ガキは得意げににんまり笑って
「じゃーん!」
と目の前に突き出してきた。目の前に突き出されたのは、
「………」
「………」
「おい馬鹿息子、」
「…んだよ糞親父」
「これは何の動物だ?」
「何って、」
ガキは俺の前に突き出したその動物を自分の方へ向け、大きな青空色の瞳をきょとりと丸くさせながら小首を傾げる。不覚にもその仕種が可愛いなと思ってしまいながらも、ガキはこう答えた。
「ネコ?」
「阿保か!」
ネコにしちゃあぶっとい足。ずんぐりした体格に、ぶにっと爪を出せばそこには明らかに猫よりも鋭いそれを隠し持ち、そして薄茶の美しい毛並みと鋭い青灰の目。これはどう見ても、
「ライオンの子供だろ、それ」
ガキがもう一度動物を見る。そして俺を見て、また動物を見た。ガキは真剣な顔をしながら、
「まぁ、ネコには変わりないんだから気にしたら負けっス」
とはっきり答えた。
「いや、そこは負けておけ…というかアレだ、そもそも何でライオンなんだ?寧ろ何処で拾いやがった?今すぐ動物園に返してきやがれ」
「1・できればネコが飼いたかった、2・家の前に捨てられていました、3・俺が責任持って育てますので遠慮してオキマス」
……………ぷちん。
「があああ!面倒臭ぇ!何だお前ぇ、俺よりもそんな野性動物の方が良いってのか!?第一餌とかどうすんだ!?ライオンとネコじゃ全然違ぇだろうが!?大体野性動物なんだぞ!?最後は大自然に帰さなきゃいけねぇんだぞ!?最後に悲しい思いをすんのはテメェだってのに最後まで責任以ってなんて…」



がぶ。



大声で、且つ早口でガキの肩を揺さぶりながらまくし立てていたら、そのライオンの子供が俺の腕に噛み付いた。まだ子供だからマシだがしかしネコよりは遥かに顎の力が強くて痛ぇ。あ、何か血が出てきやがった。何なんだ、何なんだコイツ!明らかに俺様に喧嘩売ってやがる!その目!ライオンの子供といえど鋭い生意気な目しやがって!俺様が何したってんだ!
「こら、噛み付いちゃ駄目だろ、スコールは顎の力、ちょっと強いんだから」
いつの間に名前が決まったんだろう、ガキはライオンの子供を諌めると、優しく頭を撫でて抱え上げる。
とにかく、とガキは立ち上がり自室に戻りながら、
「あんたが何と云おうと俺はスコールを手放すつもりもないし、スコールと一緒に居る方がずっとずーっと楽しいっスよ!」
べ、と舌を出して、部屋のドアを乱暴に閉めた。


* * * *


朝に険悪な状態のままお互い引きこもり始めたので、昼飯は自ずと外でとることにした。ついでにさっぱりしたくて一泳ぎしてきた頃には、既に15時を過ぎていた。手土産一つ手にせずに帰り、塩水に濡れた海パンやら何やらを洗濯機に突っ込んでから、ふとアイツは何しているのだろうと気になり、そっとガキの自室へと歩み寄る。一緒に暮らしてもう何年にもなるのに、お互い素直じゃねぇ所為でなかなか歩み寄れない。解っちゃいるがついついからかってしまう。さっきのは下らない嫉妬ってやつだ、きっと(認めたかねぇがな)。そっとドアを開ける。ガキはベッドの上で昼寝をしているようだった。しかし見渡せばあのライオンの子供はいない。何だったのだろう、あのライオンは。そもそも大自然なんかこのザナルカンドにはないに等しい。見渡す限りは機械に塗れたビルだとかせいぜい海と砂浜くらいしかない。緑なんてものは人工的に作られたモンだ、ライオンの子供なんてそうそう落ちている筈もない。どうしようもねぇことをぐるぐる考えながら、柔らかそうな金糸に触れようとすれば、チキ、と刃物特有の音が真横で鳴った。
「…ティーダに触るな」
何だか何処かで聞いたことあるような声だ。昔、冒険をした時に一緒につるんでた奴の声にそっくりだなと一瞬逡巡したが、顔を上げればそこにはやたらと顔が整った美人な兄ちゃんが怖い顔で立っていた。
「…誰だテメェ?」
「……スコール」
「スコール…って、あ?お前ぇ何言って…」
いやいやちょっと待てや、スコールってあのライオンの子供だろ?何で急にライオンの子供が人間になってんだ?意味が解らねぇ、そんな顔をしていると、スコールと名乗るそいつは更に俺を睨みつける。
「良いから、ティーダから離れろ」
武器を持っている兄ちゃんの方が有利なのは明らかで、俺は素直に従った。俺が離れると、兄ちゃんはそっとガキに近づき、優しく頭を撫でる。まるでガキがライオンの子供にしてやった時と同じように。
「…テメェは人間か?」
「…見れば解るだろ?」
それくらい理解できないのかといいたげな瞳に少し腹が立ったが、じゃああのライオンの子供は何なんだと視線で続きを促す。スコールは溜息を吐きながら、面倒臭そうに言葉を続けた。
「…とある魔女の呪いにかかったんだ。一番最初に俺を見つけ拾ってくれた人間が俺の主人…つまりティーダは俺の主に当たる。その人間の意識がある時だけは人型には戻れない。今ティーダは眠っている、だから俺は人型に戻っていた。そんな時にあんたが帰ってきたんだ」
これで解ったか?と頬杖をついて呆れた目で俺をじとりと見つめる。随分と無愛想な野郎だ。しかもいくら主だっつってもガキにくっつきすぎだろうが。とりあえず無理矢理納得して、腕を組んで唸る。何だってガキの奴こんな面倒なモン拾いやがったんだ。
「…んじゃアレか?テメェが人になれるってぇのはこいつには内緒にしとかなきゃいけねぇってことか?」
「そういうことになるな」
「もし話す、っつったら?」「あんたの首を噛み切る」
「…随分獰猛だな、野性動物ってのはそんなもんか?」
「調教されるのが嫌いでな、警戒心が強いんだ」
睨み合い、けれども睨み合っ所で状況が変わる訳でもねぇ。何だか一気に疲れた気がして、俺は踵を返す。
「とりあえずアレだ、面倒臭ぇのは御免だが、まぁしばらく、そいつに構ってやってくれよ。んで、いつかは野生に帰れ」
後ろ手にドアを閉めかける直前。スコールの痛い程の視線を感じた。
「…んたが、そんな…だから…」
小さな呟きゆえに、奴が何を言ったのかはよく聞き取れなかった。けれども、


ぱたん。


聞きたくねぇ、そう、思った。



何が目的で現れたのかは解らねぇし、今までそれなりにうまく過ごしてきた可愛いけど生意気な馬鹿息子との時間を邪魔されるのは御免だった。だからさっさと帰りやがれ。ライオンは人里に下りてくるにゃ危険過ぎる。
男手ひとつで、何とかやってきたんだ。大冒険を重ねるに重ねて、ようやく今まともな生活を互いに送ってんだ。それを見ず知らずのやつに、邪魔されてたまるか。
けれどもスピラでの大冒険時のように、やっぱり世の中そううまくはできてないし、理不尽らしい。「ったくよォ…勘弁しろってんだ」
久しぶりに煙草を吸いたくなったが、だがそんなにうまいモンだと感じたこともなかったので、仕様がねぇからビール缶一本で我慢することにした。




世の中理不尽だ





※何度も言いますが気にしたら負けです。


2010/09/28


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