※CC本編



居たぞ!という掛け声と共に放たれる銃弾。それをバスターソードで防ぎながらただひたすらに放ってくる奴らに向かい突進して、薙ぎ払う。剣圧がウータイ兵の奴らを吹き飛ばし、それでもまだ起き上がるそいつらを睨みつけ、一人一人に留めを刺した。重い感触を確かめながらずる、と引き抜くとひっ、と上擦る声を背後から聞いて振り返れば、剣を構えながらもガタガタと身体を震わせ涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃなそいつらの情けない面を見て、思わず苦笑した。
「悪いな、でも」
言いかけて、一歩近づけば、まるで影のように剣を構えたウータイ兵も一歩後退する。
「これ、仕事なんだ」
すぅ、と目を細め低く言えば、ウータイ兵は喚きながら俺に切り掛かってきた。
馬鹿な奴だ、とどこか無感情にそう思いながらいつものようにウータイ兵を切り捨てる。嗚呼、また血を浴びた。まだ俺は浴びるんだろうな。新羅に属している限り、ソルジャーな限り、俺はずっと、血を浴びて生きていくのだと、見上げた先に見た夕陽を見てそう思った。
「サー!お怪我は!?」
今更援護にやってきた一般兵の一人が俺に声をかけてくる。気づけば周りは死体だらけだ。ウータイから少し外れた森の中とはいえ、一応こいつらには馴染みの土地だろう。甘い、とおっさんにはぼやかれそうだが、この死体共を埋めて土葬してやるように命令すると、俺は一人野営テントに戻るべく来た道を歩いた。


ウータイの残党兵は、戦争が終わった今でもあちこちに居る。その種は徹底的に取り除く。俺もクラス1stに上がってそれなりの立場にもなった。一般兵の何人かを引き連れてその後片付け。面倒だが新羅は盾突く奴には容赦しない。それを守る為にソルジャーが居る。3rdや2ndの頃は、迷いがあった。けれど今は、その一瞬の迷いが部下の命を奪う。だから迷ってなんかいられない。解ってはいる。頭も身体も、ちゃんと理解してる。でも時々、これで良いのかって思う。テントの天井を見て、俺は目を閉じる。そして思い浮かぶのは、同じ新羅の中で出会ったとある一般兵の姿。年下の、可愛いけど俺よりもずっとずっと強さを持つ、たった一人俺の大切なもの。
「恐れ入ります、サー!ウータイ兵の残党が更に発見されました!至急応援を頼みます!」
「…解った」
ちっ、と舌打ちをしながら起き上がる。全く、次から次へと懲りないな。夜になるのを待っていたかのように、現場に急いで行けばぞろぞろと湧いて出てきた。夕方頃に気を遣って土葬してやった奴らをちょっとだけ恨む。まだこれだけ居るならあんな手間隙かけるんじゃなかった。切り込みにまた突撃をかける。後ろに控えている一般兵の奴らに援護射撃を頼みながら、俺は一人、二人、三人、と切り払っていく。するとうわぁ!と背後から悲鳴が聞こえた。挟み撃ちか!と気付くには遅く、集中力が鈍っていた自身を恨みながら、剣に気を溜めてうちの一般兵を襲ってくるモンスターに向かい放つ。残念だが既に事切れている奴らに嘆く暇はない。一瞬申し訳なく思いながらも、一旦態勢を立て直す為後退!と大きく告げた。
闇夜の森は、ソルジャーはともかく一般兵にはきつい。何せ明かりがなく、足元がデコボコして危ないから奇襲に遭いやすいのだ。地の利はあちらにある。一般兵一人一人に声を掛けながら相手の様子を伺っていると、携帯の着信が鳴った。短い着信だからメールだと知る。誰からだろうと思って開くと、それは俺が一番会いたいと思っている人物からだった。


『今任務中かな?もし余裕があったら、月が綺麗だから見てみて。怪我しないで、無事に帰ってきて。…愛してるよ。』


「…月……?」
呟き、空を仰ぎ見た。雲が晴れていき、同時に光が森に差し込む。視界が悪かった森が少し明るくなり、闇に身を潜めていたウータイ兵の奴らの姿が全て晒された。一瞬、互いの動きが固まる。俺はにや、と悪どい笑みを浮かべた。うちの一般兵の奴らにウォールの魔法をかけてやってから、武器を構えるよう指示する。
「よく聞け。お前たちの命、俺が預かる。その代わり、絶対に生きて戻るぞ!良いな!?」
「「「「イエッサー!!!」」」」
「ウ、ウータイの底力見せてやれ!突撃ぃー!!」
俺たちの覇気に気圧されたのか、びびったウータイの奴らがこちらに向かって走ってくる。俺も剣を構え、同じように叫んだ。
「いらっしゃいませぇぇぇぇ!!」


解ってるよ。
言葉の一つ一つに、お前の想いがこもってるって。
だから俺は、血を浴びても正気でいられるんだ。
絶対に死なない。
生きて、帰る。
総ては、お前が俺を待ってくれてるって、信じてるから。







届いてるよ。
だから、俺の想いも、



君に届け





2010/09/27


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