※パロ。8→売れっこモデル 10→売れっこバンドのボーカル 8のマネージャーが5っていう話。



「うおーい、スコールー?次の撮影そろそろだから起きろー」
名を呼ばれ、うつらとしていた意識がゆっくり浮上していく。僅かに目を開ければ、缶コーヒーを片手にバッツが起きろ起きろと口うるさく繰り返し言っていて。のそりと上体を起こせば、固い車のシートに寝ていた所為か背中が僅かに軋んだ。前髪を片手でかき揚げながら窓に寄り掛かると、ぴとりと冷たい缶コーヒーが頬に宛てがわれた。
「ずいぶん疲れた顔してるな。大丈夫か?」
「…大丈夫だ」
昨夜は大手の香水メーカーが新しく出すというそのイメージモデルの為の撮影が夜通し行われた。その為本日の睡眠時間はろくにとっておらず、そんなこんながたて続けにあったものだから少し疲れが溜まっているのかもしれない。それを差っ引いたとしても、元々不眠症のけがあるので寝起きはいつもこんな顔をしているが。
「…今何時だ?」
「16時47分」
「…あと5分休んだら、行く」
「オッケー。ま、ここ最近少し忙しかったからな。終わったらゆっくり休めよ」
くしゃりと頭を撫でられて、バッツは車から出て行った。毎度人を子供扱いするのはどうかと思うが、だがあれはバッツなりの愛情表現だと知っているのでとりあえず黙っている。何となくカーステレオを付ければ、調度なにかの番組がやっていたようだ。ゲストは今売れているバンドのボーカリスト。少年のあどけなさを少し残した、はつらつとした声だった。思わず、目を細める。番組の途中なのか、司会者はいろいろとインタビューをしているようだ。
『今人気絶頂のティーダさんには、恋人は居ますか?好みのタイプはどんな人ですか?ってきてるけど、実際はどうなの?』
『ええー?その質問に関しては秘密!って訳にはいかねぇっスかねー?』
『じゃあ好きなタイプだけでも』
『好きなタイプ?そうっスねぇ、一緒に居て、落ち着ける人がいっスね。俺、一人で三人分くらいやかましいから、おとなしい子の方が好きかな。あと芯が通ってる人!これは必須!』
楽しそうにトークが進む中、唇の端を吊り上げながらそれを聞き、おもむろに携帯を見る。メールが一件きていた。相手は、今正にラジオで喋っている、本人だった。

『今日、スコールに会いに行っても良いっスか?』


断る理由なんかない。自分がどんなに忙しくても、ティーダに会いたい気持ちは日々増幅し、膨れ上がる一方だ。こんな緩んでいる顔、バッツはもちろん他人には絶対見せられない。嗚呼、声が聞こえるだけに余計に想いが募る。
『俺結構構いたがりなんスよね。だから仕事中とかも、結構メールきてるかなぁとか、気になっちゃう方なんスよ』
『そうなんだ〜、相手は幸せだねぇ!』
ステレオを切る。そして車を降りてスタジオへと向かった。廊下を歩きながら、高揚がおさまらないのを感じて。また唇が釣り上がる。



(…そうだとも、会えば会っただけぐちゃぐちゃにしてやりたいし、いっそ誰の目にも届かないように縛り付けてやりたい)



焦がれる


最も、こんな黒い感情はティーダは知らない。
ぶつけるにはまだ早くて、でもそれだけティーダのことを想う黒い炎は静かに渦巻き浸蝕していく。今夜のことを焦がれながらも、スコールはスタジオに足を踏み入れた。




2010/09/15


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