※10が混沌側、ちょっと暗い上にぐろい

違う、そうじゃない、と頭の中では何度も何度も叫び、泣いて、喚いた。
らしくない。そういえばそうかもしれない。だって、こんなに闘いが楽しいなんて、思いもしなかった。
興奮、しているのだろうか。
「はあ…ハア…ハッ…」
地面に転がるそいつは、白いシャツを赤まみれにして酷く辛そうに眉を寄せて、呻いている。フラタニティをそいつの腹に切っ先を向けて、無感情にその様を見下ろした。
「…無様っスね」
喉から出た声は少し涸れていた。何だろう、柄にもなく緊張してんのかな、俺。何せ、あんまり人斬ったことないから、わかんねえや。
「………ッ」
一瞬哀しげに揺らいで、でもすぐにキッ、と鋭さを帯びて寝転がったまま睨みつけてくる。全然、怖くも何ともない。ちょっとむかついたから、そのまま切っ先を真っ赤にしている腹に突き刺してやった。
「ぐっ、あああ!!」
普段、こんな声をあげない同い年のそいつは、今俺の手によって蹂躙されている。ぐりぐりと中身を出すように掻き混ぜてやると、面白いくらいに身体が跳ねた。嗚呼、その声、最高にそそるかも。
俺って、こんなだったかな。俺、実はドSだったっけ。
「ふっ…う、」
飽きて、切っ先を抜いた。フラタニティを投げて、今度はしゃがんで視線を合わせる。青灰の目が、俺を射抜く。血で少しへばりついた前髪を掴んで、そいつの顔を無理やり上げた。
そのまま、血の臭いに誘われるままに唇を奪ってやる。噛み付いて、唇の肉がぶつりと切れた気がした。更に濃くなる血の臭いに、俺の背筋にぞくぞくとした何かが伝っていって。
やっぱり楽しくて、咥内を貪って、また唇を噛んでやった。甘くて、おいしい。
ガッ。と。どこにそんな力があるのか、俺の首にそいつの右手があった。ぎり、と力を入れて俺の首を絞めようとするものの、血が足りなくて力が入りきらないようだった。ぜえ、と荒く呼吸を眼前で繰り返すそいつの瞳は、ほの暗い中に一筋の光があるように感じた。
それにやっぱり腹が立ったから、上がった前髪の隙間から覗き出た額に縦に走る傷に見て、一人にんまりと笑ってみせる。そこをねっとりと舐めてやれば、また身体が強張ったようだ。
面白いな、と思いながら、何度もそこを舐め上げる。
「や、めろッ…!」
そういわれてやめる奴がどこに居る?少なくとも俺はそういわれたらやってしまうタイプだ。こいつと対峙するのは今回が初めてじゃないのに。今日はやたらとこいつに構いたかった。
何だろう、いつだったか、こいつのことを俺は好いていた気がする。どうしてだったか、何でだったか、全然覚えていない。
「やめろ…」
弱々しく、そいつが言う。ずるり、と。首からそいつの手が離れていった。そうして、切れ長の眸を細めて、そいつは泣きそうに顔をゆがめるのだ。
「やめてくれ、ティーダ…ッ」
違う、そうじゃない、と頭の中では何度も何度も叫び、泣いて、喚いた。
ごめん、と俺の中の誰かが謝っている。こんなことをしたいんじゃないんだと。五月蝿いな。黙ってろよ。俺は俺だ。お前なんか知らない。
そんな声で、俺の名前を呼ぶなよ。そんな目で、俺を見ないでくれ。
ドスッ!
腹に、何か重くて冷たいものが突き刺さる。熱くて、痛い。火傷、しそうだ。
「ティーダ…ッ」
そいつが出した武器の刃が、俺の腹に深く突き刺さっている。嗚呼、痛いな。嗚呼、そっか。俺、確か皇帝様とケフカって奴に操られていたんだ。そうだ、そうだよ。
思い出したよ、ていうか痛い。いろいろと、痛すぎる。
「スコ……ル……」
泣かないでくれよ、スコールは、仏頂面してる方がかっこいいって。でも、俺の為に流してくれている涙なら、ちょっとどころか結構嬉しいかも。スコールの腕が、俺を抱き寄せて包んでくれる。嗚呼、あったかいなあ。
ずっとその温もりに包まれていたい。もう、何も考えたくないし、感じたくない。目の前にスコールが居てくれるなら、それだけでいい。
身体の感覚が重くなる。意識が離れてく。頭痛が酷い。目の裏が真っ暗になる。スコールだけを、肌が感じてる。
腹のとこからドクドクと溢れる血と、鳴り響く心臓が五月蝿い。これってさよならってことかな。どうなんだろ。まあ兎に角、何だって良い。
なるようになる。
でも眠いから、今は少し、眠ってても、良いかな?


浮かび上がらない輪郭



2010/08/27


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