愛と云うならもっと甘い、恋と云うには之は辛い


「ふ…くっ…ぁ」
後ろから貫かれる衝撃に耐えながら、俺は後ろ手に縛られた手を何とか外そうともがいてみる。
「…お?まだ余裕ありそうだなァ」
何でこんなことをこんな奴としているのか、俺自身にも意味が解らない。嫌悪でいっぱいだった。受け入れてる熱はいっそ痛いくらいに熱くて突かれる度に吐きそうだ。ジェクトは、ティーダの父親だ。あいつに絡んでいる所は何度も見たことがある。ティーダが父親を嫌悪していることは、仲間内でも皆知っていることで。でも何故こいつが俺にこんなことをしてくるのかが俺にはさっぱり解らない。ばったり出くわして、闘って負けて、気付いたらこうなってた。第一男を受け入れた経験なぞないから、先から痛くて痛くて堪らない。そもそも男の身体は、受け入れる為に出来ていないのだから、痛くて当然なのだが。
「おい、」
「…っ!」
ひゅ、と喉が鳴る。思いの外耳元近くで聞こえた低く掠れた声に身体がぞくりと粟立って、俺は息を呑んだ。ぐちゅりと繋がる結合部は相変わらず熱くて痛くて、最新に受け入れた際に切れたのだろう血液が太股まで伝うのをリアルに感じた。繋がるそこは熱い反面、身体中はいやな汗がじわじわと出てくる。ジェクトが首筋を強く噛んできた。四つん這いの体勢を無理矢理起こされ、そのまま座り込む。
「ぅあ…!」
先よりも深く突き刺さった所為で思わず声が漏れる。悔しくて、唇を強く噛んだ。喉の奥で笑う音に、ごつごつとした手は俺の僅かに萎えた芯に伸びて、やんわりと握られた。上下に揺さぶられながらそこを執拗に弄られれば厭でも反応してしまう。声はなるべく出さないように耐えて、閉じていた目を開ければやはり視界はぼやけて何も見えなかった。
「…啼けよ」
お前さんの声、聞かせてくれや。また声が、耳元で聞こえた。今度は至極真面目な声だった。思わずどくりと鼓動が高鳴り、少し自身が首を擡げるのを感じた。
(何…なんだ…)
訳が解らなかった。何で自分がこんな目に、と思った。確かに愛がなくたって行為はできる。でも何故、と先からそのことばかりだ。ドクドクと心臓が五月蝿い。だってそうだろ。こいつは、ティーダの父親で、
「――――ッ」
(………嗚呼)
答えは、簡単だ。でも、それに対する答えを俺は持っていない。この男が滑稽に見えた。俺に呟くくらいなら、本人に直接言ってやれば良いのに。でも、それをされるのも癪で、ならいっそ、俺が身代わりになったほうが良い。
「…あ、あ…!」
「…く!」
びくんと強張った身体の中に放たれた熱とむせ返るきつい匂いに、また吐き気が増した。
「――――」
声にならない声でジェクトは呟いた。俺は浅く息を吐きながら、ぼんやりとしたままその名前を聞いていた。



最低だ



(俺もアンタも、こんなことしたって意味ないのに)



2010/08/21


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