はじめは、ちょっと怖いかなって思った。いつもむすっとしていて、近付いてくる者を凍りつかせてしまうくらい目の光は鋭くて。だからてっきり嫌われてるのだとばかり思っていたの。でも、ある日私は私の不注意で怪我をしてしまった時、彼は大丈夫か?って低い声で私に気遣ってくれた。かすり傷程度だったのに、彼は丁寧に傷の手当までしてくれて。
その時、彼はほんとうは優しい人なんだなって、そう思った。
それ以来、私は彼によく声をかけた。相変わらず素っ気ないけど、無視されるわけじゃないって解ったから、何だか相槌をうってもらえるだけで私は嬉しかった。
でも、彼は私の話は聞いてくれるけれど、彼は彼自身について何も語らなかった。彼のことを知りたいと思うのは、変なことなのかしら。バッツやセシルに相談してみたら、それは当然のことだよって、優しく教えてくれた。クラウドにも相談してみたら、相手のことを知りたいと思うのは当然のことだが、でも無理に聞くのも良くないぞ、って淡々と教えてくれた。私は何だかわけがわからなくなってきて、とりあえず彼についての欲求がないわけではないから、素直に聞いてみる。
「ねぇスコール」
「…何だ?」
「私、スコールのことがもっと知りたいの。何でも良い、スコールのこと、もっと教えて?」
「……」
彼は、いつも扱っている武器の手入れをしていた作業をぴたりと止めて、私の言葉に対し何かを考えているみたい。ややあって彼は手を下ろし、顔も俯かせて、わずかに困ったように頭を掻いた。
「…どうして、俺なんかのことを知りたいんだ?」
ほんとうに困ったように、スコールは眉尻を下げた。その様子がいつものクールさとはうって変わって、何となく可愛らしいと思ってしまった。
「だって、私ばかり話していてスコールは退屈じゃない?それに、私はスコールのことが好きだから、純粋にもっとスコールのことが知りたいの」
だから、お願い、と上目に見つめれば、はぁ、と彼は大きな溜息を吐いた。もしかしたら睨まれるだろうか、しつこかったから嫌われるだろうか。はらはらしながら彼の反応をうかがっていると、ぽん、と頭を撫でられる。
「そんな顔をするな。…ただ、俺は自分のことを話すのがとても苦手なんだ。だからいつもティナの方から話してくれて、俺は嬉しい」
撫でる指先は心地好くて、思わず目を細めてうっとりとしてしまう。すると彼は顔を少し赤らめながら、ティナの笑顔は花みたいだ、と小さく呟いた。
私はお花じゃないよ、と思ったけど、彼の一言が何となく嬉しいのと恥ずかしいのとでどう反応したらいいのかわからなかったけれど、でもくすぐったくて、やっぱり浮かんでくるのは笑みだった。





不器用くんとお花ちゃん



2010/08/06


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