※現パロで続き。7がフリーターで8が大学生。


午前7時54分。時計を見て目の前の玄関のチャイムを押せば、何の反応もなかった。だので勝手に入って申し訳ない気持ちがないわけではなかったが、こういったことをするのは今回が初めてではないので勝手に入らせてもらうことにした。玄関に入ってすぐ右手にあるバスルームからは水音が聞こえた。恐らく部屋の主はシャワーでも浴びているのだろう。勝手に冷蔵庫の中にあるミネラルウォーターを拝借してソファへと腰を落ち着かせそれを飲む。冷えた水が、酒に焼けた喉を潤していくようで気持ちが良かった。基本夜勤生活をしているから常人とは生活リズムが異なる。だからといって真っ当な生活リズムを刻んでいる大学生に寝床を借りるのもどうかと思うが、生憎自分には年上の威厳だとかプライドなんてものはなかった。
突如バタン、と強い音がして、それでも慌てずにバスルームに向かえば。
「…な、んで、アンタが…?」
「寝床を借りに来たんだが、いつもより顔色が悪いな」
しゃがんでミネラルウォーターを飲みながら淡々と言ってやると、ならさっさと帰れと言わんばかりのオーラを放たれた。顔が上気して赤いものの、目は少し虚ろなようだ。全裸で倒れているにも関わら言わんばかり起き上がる力もないのか、ぐったりしながら浅く息を吐いている。これは風邪だなと思い、とりあえず冷蔵庫の上にミネラルウォーターを置くと自分の服が濡れるのも構わず横抱き(所謂お姫様抱っこ)にしてベッドへと運んでやった。何か言いたげな顔をしてたが実際一人で起き上がれなかったのも事実らしく、素直に従う姿はいつもと違ってしおらしく、可愛いと思った。
「適当に下着持ってくるから、とりあえずシーツで身体拭いておけ」
こく、と力無く頷くスコールを放って、バスルームの一角にあるタオルやら下着やらが入ってるタンスの中から適当に引っ張り出し、ついでにシーツも取り替えてやろうとリビングのクローゼットの奥にある真新しいシーツを二枚出してスコールの寝室へと戻る。起きてるのも辛いのか、やはり全裸で横たわったままだが。
「スコール、シーツ取り替えてやるから、少しベッドから避けていてくれ。これ履いて待ってろ」
「……っ…」
またこく、と頷くと、よろよろと起き出し、よろよろと部屋の壁際に移動した。横目で伺えば危なっかしいながらも下着はちゃんと履いて、座り込んでぼーっとしている。ぴしりとした真新しいシーツの上にもう一度スコールを横抱きにして寝かせると、済まない、と小さく謝罪された。
「いや、俺の方こそ病人の所に押しかけて悪かったな」
ふる、と首を左右に振られた。気づけば自身もじとりと汗を掻いていて、部屋にエアコンも何も入っていないことに気がついた。スコールの身体に差し障りがない程度にエアコンのスイッチを入れて部屋を冷やす。未だ熱を帯びるスコールの身体に冷えたシーツをかけてやって、冷蔵庫の上に置きっぱなしになっていたミネラルウォーターを持ってくる。口に含み、スコールの口元へと持って行けば。
「…っ、」
意図が解ったのか、奴は素直に口を開けた。冷たい水を流し込んでやる。こくりと飲み込んだのを確認してから、2・3度それを繰り返した。最後に、純粋に唇を重ねる。
「んッ…!」
抵抗を示すように、力無い手が俺の服の裾を引っ張った。だがこちらも負けじと熱い咥内を優しく貪ってやる。歯列をなぞり、舌先を絡め、ちゅっと上唇を吸ってやった。鋭くなった青灰の目は潤んでいて、怖くも何ともない。荒くなる息遣いに内心にやりとしながら、
「ゆっくり休め。ソファで寝ているから、何かあったら携帯に連絡しろ。それじゃあ声を出すのも辛いだろ」
と言い残し、俺は寝室のドアを閉めた。


携帯の電源を入れると(仕事中は基本切っている)、ティーダとザックスからメールが入っていた。ザックスからは明日(つまり今日のことだ)暇なら久しぶりに遊ばないか?というもの、ティーダからはスコールが風邪を引いて辛そうだったから日中代わりに面倒を看てくれないかというもの。言われなくとも面倒を看た自分に対して誉めてやりたくなった。何て後輩思いなんだろう、俺は。
ふと、最後に交わしたスコールとのキスを思いだし、浮かんだのは笑みだった。ティーダは毎回スコールと甘いキスをしているのかとも思ったら、少し羨ましかった。だが既に恋仲の二人を壊してやろうだなんていう無粋な気持ちは微塵もないので、先程のキスは慰謝料代わりに貰っておこうと思い、もう少ししたらスコールを医者に行かせる手伝いをさせるべくザックスにメールを返した。






2010/08/03


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