※CC時代


連日連夜、摂氏30°を越える暑さが続き、コンクリートジャングルのミッドガルは、正に俺にとって地獄そのものだった。部屋に篭って仕事なぞしたくない程の猛暑でも、会社というものは無情で熱中症で倒れた人達の世話をすべくあちこちに派遣される。介抱している傍からこちらの方が倒れそうなのを何とか堪えてふらふらの足で自宅に戻ると、同室のザックスはまだ帰っていなかった。ソルジャーの専用寮に住まわせてもらっているおかげで今は快適に暮らしており、昨年まで居た一般兵の宿舎とは雲泥の差だった。
エアコンのスイッチはそのままにしてあったので、ひやりとした空気が身体を包む。汗くさく、滲んだ制服を全て洗濯機へと放り込みそのままバスルームに入って水を頭から浴びる。冷たくて気持ちが良い。熱に侵された身体が冷えていく感触に恍惚としながらあっさりと頭を洗ってバスルームから出た。軽く水気を拭き取り、ペットボトルを掴んで自室へと戻れば、もう何もやる気はしなかった。
水を飲みサイドテーブルへ置けば、自然と瞼が重くなる。もう何日も、ザックスに会ってない。今は確か、ミディールまでマテリアの調査をしに行っているはずだ。あと何日したら帰ってくるんだろう。触れたい。会いたい。水を飲みたいのと同じで、ザックスに枯渇している。
ベッドの上で、全裸のまま丸くなる。せめて下着くらい着用すれば良いのにそれすらも億劫だ。ザックスさえ居たら何も要らないのに、彼が帰ってくるのが何時になるのかすら一般兵には知らされない。それだけ一般兵とソルジャーの格差は激しい。
十分部屋は冷えてるのに、ザックスのことを想うだけで身体がじわりと熱を帯びる。嗚呼、せめて声を聞くことができたら。
「…その格好、誘ってるのか?」
「っ、」
すぐ後ろから声がして、ザックスが耳元でくすりと笑う気配が伝わってきた。それまであまりに気配がなかったから気づけなかった。嗚呼、でも今はそんな驚く暇(いとま)すら勿体ない。だって待ち望んだ彼は、ここに居るのだから。

「ザックス…」
「ん?どうした?」
弱々しく、ザックスに抱き着く。嗚呼、彼の匂いだ。少し匂いの中に南国のフルーツのものと、ヘリのシートの革のものが混じったような変な匂いもあったけれど。確かにザックスの匂いだ。また、身体が熱くなる。彼とこうしている間も、餓えは満たされない。どんどん貪欲になる。ザックスが、欲しくて仕様がない。
「ミッション帰りで、俺ちょっと興奮状態なんだけど、クラウドさーん?」
キスをするだけで、身体が密着するだけで、汗が一筋垂れる。ああ、黙ってくれ。黙って俺を犯してくれ。きっとザックスだから満たしていく傍から餓えるんだ。アンタがこんな身体にしたんだ。だから責任取ってくれ。噛み付くようにキスをしたら、そこには捕食者の瞳が妖しく光っていた。


餓え



2010/07/24


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