嘘の災害や事故ルーム



「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイトそしてもう一人の三人体制でみることになった」

相澤先生がレスキュー訓練カードをみんなに見せて説明した。
憧れに、最高のヒーローに近づく為の訓練がいよいよ始まる。がんばらなければ。

私のコスチュームは戦闘訓練のとき、かっちゃんの攻撃でボロボロになってしまったので修復を依頼している。そのため今日は体操服を着ている。
訓練場まではバスで移動するらしい。さすが校内の敷地が広い雄英高校。スケールが違う。
車内で蛙吹さんが隣に座った。まだちゃんと喋ったことがない。

「私なんでも思ったことを言っちゃうの緑谷ちゃん」
「あ!?ハイ!?蛙吹さん」
「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの"個性"オールマイトに似てる」
「そそそそそうかな!?いやでも私はその、えー」

バレたのかと思って挙動不審になってしまう。
切島くんが似て非なるものだろと言ってくれたおかげで、話が逸れていった。良かった。
みんなかっちゃんのことをイジりはじめて、キレまくってた。かっちゃんがイジられるなんてこと中学までは見たことなくて、信じられない光景だった。さすが雄英。

バスが到着したのは、ウソの災害や事故ルーム略してUSJだった。災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー、13号が作った訓練場だという。

「人命の為に"個性"をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな。以上ご静聴ありがとうございました!」

13号は、話し終えるとお辞儀をした。紳士的な立ち居振る舞いで人気が出るのも納得である。相澤先生がさっそく始めようとしたのだが、急に大きな声で叫んだ。

「一かたまりになって動くな!13号生徒を守れ」

よくみると黒いモヤの中から人が出てきている。演習のための人たちなのかな。

「動くなあれは敵だ!!!!」

学校にはセンサーがあるので侵入者がいれば反応するはずなのに、全然鳴らない。用意周到に画策された奇襲だと轟くんが言った。相澤先生はゴーグルを装着して敵に向かって飛び出していった。私は目の前にした本当の恐怖にただ震えるしかなかった。

黒いモヤを操る敵が平和の象徴であるオールマイトを殺そうと思っていると言った。意味がわからない。切島くんとかっちゃんが飛び出していって攻撃するが効果はなかったようで、私たちは黒いモヤに包まれた。
そして私はボチャンと音を立てながら水の中に落ちた。あの黒いモヤの個性はワープなんだ。
水の中に半魚人みたいな敵がいて狙われた。水中じゃ動きも遅くなる。私はそんなに泳ぎは得意じゃない。半魚人が殺そうとこちらへ向かってきたとき、蛙吹さんが舌で絡めとって引っ張ってくれた。そのまま船のデッキに乗せてくれた。その後峰田くんも放り投げられていた。今ここ船上には私、蛙吹さん峰田くんの三人がいる。

「カリキュラムが割れてた!単純に考えれば先日のマスコミ乱入は情報を得る為に奴らが仕組んだってことだよね。轟くんが言ったように虎視眈々と準備を進めてたんだ・・・」

峰田くんはオールマイトが来たらあんなやつけちょんけちょんだと言うが、オールマイトがくるまで持ちこたえられるかわからない。それでも、私たちが今すべきことは戦って勝つこと。私たちはヒーローの卵なんだから。

作戦はこうだ。敵は生徒の個性までは把握していない。水難ゾーンに蛙吹さ、つ、梅雨ちゃんがいるのがその証。私たちの個性を知らない奴らに勝つチャンスは必ずある。

作戦を伝えると頷く梅雨ちゃんと、叫びながら嫌がる峰田くん。
私が先陣を切るように飛び出した。かっちゃんみたいに死ねと叫びながら。

水面にむかって、卵が爆発しないイメージを頭で描き、デラウェアスマッシュを放った。そこへ峰田くんのモギったやつを投げ入れる。
水面に強い衝撃を与えたら広がってまた中心に収束するから敵を一網打尽にできた。梅雨ちゃんが私と峰田くんを掴んで陸を目指した。

ようやく足がつくようになり、びしょ濡れになりながら進んでいく。
たどり着いた先に広がっていたのは悪夢のような光景。相澤先生が禍々しい巨大な敵にねじ伏せられていた。小枝でも折るかのように曲げられる先生の腕。私は恐怖で固まってしまった。
敵は圧倒的な力だ。先生ですら敵わないのに、私なんかが勝てるわけない。

「今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」

敵があっさり引き下がるなんておかしい。

「けどもその前に平和の象徴としての矜持を少しでもへし折って帰ろう!」

梅雨ちゃんに手を伸ばす敵。どんな個性かわからないけど、かなりマズイ。相澤先生が個性を消してるうちに、梅雨ちゃんを救けて逃げないと。

「手っ、放せぇ!!」

スマッシュを打っても手が壊れてない。力の調整ができたんだ。

「いい動きをするなぁ・・・スマッシュってオールマイトのフォロワーかい?可愛いね。まあいいや」

あのどデカい敵が私に掴みかかった。ギリギリと締め付けられる腕が折れそうだ。

「痛っ、ううう」

訓練場のドアを蹴破り現れたのはオールマイト。

「もう大丈夫、私が来た!!」

相澤先生と私たちを敵から奪還したオールマイト。目にも留まらぬ速さだった。意識のない相澤先生をつれて入口へ行けと言われたけど、オールマイト、あなたの秘密を知ってるのは私だけ。活動限界時間のことや、5年前に受けた傷のこと。

「梅雨ちゃん、相澤先生担ぐの代わって!」
「うん、けど何で」

嫌だよオールマイト、教えてもらいことがまだ、山程あるんだから!!駆け出した衝動はもう止まらない。あれだけ恐怖で震えていたのに、今はオールマイトを失う恐怖のほうが強い。そんなの絶対嫌!

「オールマイトォ!」
「どっけ邪魔だ!!なまえ!!」

かっちゃんが横から飛び出して黒いモヤの敵に爆風を飛ばし掴みかかった。それに切島くんも轟くんもいる。

「かっちゃん!皆・・・!」

かっちゃんが黒いモヤの敵を地面に捩じ伏せた。 

「脳無爆発小僧をやっつけろ。出入り口の奪還だ」

脳無、禍々しい巨大な敵はそう呼ばれている。
轟くんに凍らされていた脳無は手足が割れるのも気にせず這い上がってきた。そして失った手足が再生され、かっちゃんに向かって走り出した。速い!かっちゃんが吹き飛ばされる!
でも、かっちゃんは無傷で立っていた。

「かっちゃん!避っ避けたの!?すごい・・・!」
「違ぇよ黙れカス」

手を身体にたくさんつけている敵が、自論を展開している。今なら3対5だし、モヤの弱点はかっちゃんが暴いた!オールマイトに加勢すれば撃退できるはず。
それでもオールマイトは私たちに逃げろと言う。オールマイトは時間も体力も限界のはず。そんな状態で一人置いていくなんてできない。

脳無と真正面から殴り合いをしているオールマイト。間合いに入るなんて誰もできない。そこには死しかないから。一発一発が100%以上の力で打っている。脳無の吸収も再生も間に合わないほどのスピード、威力。でも、もうオールマイトは限界を当に超えている。これ以上敵の攻撃を受けたら本当に死んでしまうかもしれない。そう思ったら私の足は自然と地面を強く蹴っていた。両足が折れたけれど、モヤに届いた。隠している身体部分を狙えば勝てる!

「オールマイトから離れろ!」

敵の手が私へと伸びてくる。怖いけどやるんだ!オールマイトを守るんだ!
伸ばされた手に弾丸が撃ち込まれた。味方だ。飯田くんが呼んできてくれたおかげで学校のスーパーヒーローたちが集まったのだ。
敵はワープゲートで逃げていった。

プロが相手にしてる世界。それを知るには私たちにはまだ早すぎた。

「何もできなかった・・・」
「そんなことはないさ。あの数秒がなければ私はやられていた。また、助けられちゃったな」

オールマイトはトゥルーフォームに戻りかけていて血を吐いていた。

「うう、オールマイト無事で良かったです・・・!!」

遠くから切島くんが走ってきた。

「緑谷ぁ!大丈夫か!?」
「切島くん・・・!」

あ、でも今来たらオールマイトの姿が露見してしまう。どうしよう。
そり立つ壁がオールマイトと切島くんの間をはばんだ。切島くんはセメントスに諭されゲート前に向かって走っていった。
私はそのまま、何度もお世話になってる保健室へと運ばれていった。
トゥルーフォームのオールマイトと一緒に治療を受けていると警察官が現れた。オールマイトの姿を見てもなんの驚きもしないしオールマイトも隠していなかった。
塚内さんというその人はオールマイトと仲良しの警察官なんだそうだ。

「生徒らもまた戦い、身を挺した!!こんなにもはやく実践を経験し生き残り大人の世界を、恐怖を知った一年生など今まであっただろうか!敵も馬鹿なことをした!!1-Aは強いヒーローになる!私はそう確信している」

オールマイトが親指を立てて私にジェスチャーをしてくれた。私がまだ怖くて震えてるのに気づいていたんだろう。励ましてくれるオールマイトはやっぱり憧れのヒーローだ。



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