轟くんの家
現代日本最高峰の現場で一週間が過ぎた。そして今日がインターン最終日。つまり冬休み最終日でもある。一挙手一投足が被害規模に直結するプロの世界で私たちはひたすらエンデヴァーを追いかけた。その激しさは日毎に増している。替えのコスチュームまでもが傷だらけになり汚れていてその激しさを物語っている。
今日のエンデヴァーはいつにも増して気合いが入っている。と言うよりもむしろ焦っていると言った方がしっくりくる。何に焦っているんだろう。
「集中すればできることを寝ながらでもできるようにしろ!!」
そう叫ぶエンデヴァーは目にも止まらぬ速さで敵を制圧した。その後を追いかけるがすでに事件解決済みで、私たちは用なしだ。
「ここに来て何で力んでやがる・・・!」
「ほんと、あとちょっとで掴めそうってとこで突き放される!」
少し遅れて追いついた途端、エンデヴァーが更に大声で叫んだ。
「いくぞ!!」
「はい!!」「おお!!」「ああ」
三人それぞれ返事をして勇ましく着いていったのだが、制服に着替えて車で連れてこられたのは立派な日本家屋。門構えからして老舗料亭・・・?
だけどそこは老舗料亭でも重要文化財などでもなくて、轟くんの実家だった。実家が団地の私は、轟くんの実家のデカさに驚いてただ口ポカンと開けることしかできなかった。門扉から玄関までがものすごく遠いタイプの家だ!
ただ、連れてこられたことに納得していない人物が一名。キレ散らかしている。
「何でだ!!!」
「姉さんが飯食べにこいって」
「何でだ!!」
「友だちを紹介してほしいって」
「今からでも言ってこい!やっぱ友だちじゃなかったってよ!!」
「かっちゃん・・・!落ち着いて!せっかく招待していただいたんだし、ねっ?」
「チッ!!」
玄関から可愛らしい笑顔の女の人がエプロンを着けたままパタパタと足音を立ててひょっこりと顔を出した。この方が轟くんのお姉さんだろう。轟くんと顔の雰囲気がよく似ている。
「突然ごめんねぇ。今日は私のわがままを聞いてもらっちゃって」
「嬉しいです!友だちの家に呼ばれるなんてレアですから!」
「うふふ。体育祭で焦凍と闘ってるのをテレビで見た時はぶっ飛んだ子かと思ってたけど、良い子じゃない!それにとっても可愛いわ」
「きょ、恐縮です・・・」
お姉さんに案内された和室に入ると机の上にはすでに熱々の料理が並んでいた。轟くんのお兄さんもいて、挨拶をして席に着いた。お兄さんはどちらかというと、エンデヴァーに似ている。どれもこれも美味しそうだ。竜田揚げに四川麻婆豆腐に餃子、焼売、炒飯などの中華が並んでいる。かっちゃんは真っ先に四川麻婆豆腐を取り分けて食べはじめた。
私は竜田揚げを頬張った。
「食べられないものあったら無理しないでね」
「どれもめちゃくちゃ美味しいです!この竜田揚げ、味がしっかり染み込んでるのに衣はザクザクで仕込みの丁寧さに舌が歓喜の鼓を打っています!」
「なまえ!飯まで分析すんな!てめーの喋りで麻婆の味が落ちる!」
かっちゃんがこちらを向いて睨みつけてきたけど私は気にせず、お姉さんの作った料理に舌鼓を打っていた。それを聞いていたお兄さんが、餃子をパクリと食べて言った。
「そらそうだよ。お手伝いさんが腰やっちゃって引退してからずっと姉ちゃんがつくってたんだから」
「なるほど・・・!」
「夏もつくってたじゃん。代わりばんこで」
「え!?じゃあ俺も食べてた!?」
轟くんがびっくりした顔をして言った。知らなかったんだ。
「あーどうだろ。俺のは味濃かったから・・・エンデヴァーが止めてたかもな」
その一言で場にピリっと緊張が走った。私でも感じるくらいだ。かっちゃんも何かを察したのか静かになった。かっちゃんはそれでも食べ続けていたけど、私の箸は止まってしまった。
「焦凍は学校でどんなの食べてるの?」
「学食で「気付きもしなかった。今度・・・・」
轟くんの返事に被さるようにエンデヴァーが言葉を発したもんだから、また緊張が走る。き、気まずい・・・舌の上に乗ったままのおかずは美味しいはずなのに、そのうちに味が感じられなくなってきそうだ。一触即発なピリピリとした雰囲気に耐えきれなくなったのはお兄さんだった。
お兄さんは少し食べただけなのに、ごちそうさまと席を立った。お姉さんが引き止めているけどお兄さんは食器を重ねて、「ごめん姉ちゃん。やっぱムリだ・・・」と吐き捨てるように呟いて部屋から出て行ってしまった。
パタンと閉まる襖を悲しそうに見つめるお姉さんの表情に胸がキリリと痛くなった。
静まりかえってしまい、庭の鹿威しが岩を叩くコーンという音だけが響いた。まるで静寂の中に点を打つかのようだ。
場をなんとかしようと、お姉さんに竜田揚げのレシピを教えてほしいと頼むと悲しい表情はすぐに引っ込んで嬉しそうに口元が弧を描いた。竜田揚げのレシピを知りたかったのは本当だしね。
「・・・良いわよ!後でレシピ教えてあげるわ」
「ありがとうございます!!」
「なまえに作れんのかよ」
「任せてよかっちゃん!お姉さんに教わったら何でも作れそうな気がするの!」
「ならついでに麻婆のレシピも聞いとけ」
かっちゃん、辛いの好きだもんね。お姉さんは私たちを交互に見て頷いている。
食べ終わって後かたずけをしようとすると座っててと止められたけど、黙って座っているのも落ち着かない。
「お姉さん!私、めちゃくちゃ力持ちなんです!」と言って強引にお皿を下げた。
かっちゃんと一緒に自分の皿を下げると、先に部屋を出て行ったエンデヴァーがお皿を洗っていた。ええええ!?家事してるエンデヴァーって見たことない。想像もしたことなかった。
なんか意外・・・家ではこんな感じなの?
キッチンのサイズとエンデヴァーの体格がミスマッチで違和感しかない。洗いましょうか?と言ったけど「客人だから何もするな」と言われてしまった。お皿をテーブルに置くように指示されて、重ねたお皿が割れないよう静かにテーブルの上に乗せた。さっきのお兄さんとの一悶着を見てしまったからなんだか気不味くて、そそくさとその場を後にした。
また和室に戻る廊下で、かっちゃんがボソリと呟いた。
「家族の問題に俺らを巻き込むなっつーの」
「・・・え、かっちゃん知ってたの?轟くんのおうちのこと」
「は?俺のいるところでなまえと半分野郎が話してたんだよ」
「聞いてたの!?」
「つーかよぉ・・・」
ピタリと足を止めたかっちゃんが襖に手をかけて勢いよく開け放ち、同時に叫んだ。
「客招くならセンシティブなとこ見せんなや!!まだ食いたいもんあんだろが!!」
「ああ!いけない!ごめんなさい、つい・・・」
「あ!あの!私たち轟くんから事情は伺ってます・・・!」
「俺ァ聞こえただけだがな!晩飯とか言われたら感じの良いのかと思うわフツー。四川麻婆が台無しだっつの!!」
かっちゃんが残ったお皿を重ねながら言うもんだから、お姉さんが固まってしまっている。
私もお皿を重ねながらおずおずと口を開いた。
「ごめんなさい。聞こえてしまいました・・・・・・・・・轟くんはきっと、許せるように準備をしてるんじゃないかな」
「え」
「本当に大嫌いなら“許せない“でいいと思う。でも君はとても優しい人だから、待ってる・・・ように見える。そういう時間じゃないかな・・・」
お姉さんが急須と湯呑みを持って戻ってきた。そこで聞かされたのはもう一人轟くんにはお兄さんがいたけど、亡くなったという事実。
「お兄さんが・・・」
「それは話してないんだ」
「率先して話すもんじゃねェだろ」
「夏は燈矢兄ととても仲良しでね・・・よく一緒に遊んでた。お母さんが入院してまもなくの頃だった・・・お母さん更に具合悪くなっちゃって焦凍にも会わせられなくて。でも乗り越えたの。焦凍も面会に来てくれて。家が前向きになってきて・・・夏だけが振り上げた拳を下ろせないでいる。お父さんが殺したって思ってる」
「だからあんな面してたんか」
「・・・」
私はかける言葉が出てこなくて、何か言うよりも黙ってる方がいいと思って何も言わなかった。そろそろ学校に送る時間だからとお暇することになった。
「ごちそうさまでした!」
「四川麻婆のレシピ聞いたか?」
「あ・・・まだだ!竜田揚げも聞かなきゃ!」
「俺のスマホに送ってもらうよ」
「ありがとう轟くん!」
「学校のお話聞くつもりだったのにごめんなさいね」
車に乗り込もとした私をお姉さん呼び止めた。お姉さんが駆け寄ってきて私の手をぎゅっと握った。
「緑谷さん、焦凍とお友だちになってくれてありがとう」
「そんな・・・こちらこそです!」
「緑谷さんみたいな子が妹になってくれたら嬉しいんだけどなぁ」
「・・・??私も冬美さんのようなお姉さんが欲しかったです」
「なまえちゃんって呼んでもいい?」
「もちろんです!」
ニコリと微笑む冬美さんは、私の頭を撫でた。くすぐったくて目を細めた。優しいお姉さんだな。私に姉がいたらこんな感じなのかな・・・
「わりぃが、こいつはやらねえよ」
先に車に乗り込んだはずのかっちゃんが車から降りてきて私の手を掴んだ。
「ちょっとかっちゃん!」
「ふふふ、やっぱり二人は付き合ってるんだね」
「え、なんで分かるんですか?」
「そりゃー見てたら分かるよ。こりゃ焦凍の出る幕なしだね」
「・・・??」
「またいつでも遊びにきてね!」
手を振るお姉さんが見えなくなるとエンデヴァーがボソリと呟いた。
「貴様らには早く力をつけてもらう。今後は週末に加え、コマをずらせるなら平日最低2日は働いてもらう」
「前回麗日や切島たちもそんな感じだったな」
「期末の予習もやらなきゃ・・・轟くん英語今度教えて。かっちゃんには化学教えてもらお」
「No1ならもっとデケェ車用意してくれよ!」
かっちゃんは、私を真ん中に座らせて轟くんと距離を置いてるのにも関わらず文句を垂れた。何を思ったのか、窓を開けて頭を窓から出している。良い子は真似しちゃダメなやつ!寒いよ、窓閉めて欲しい。
しかも、轟くんから引き離そうと私を左腕で引き寄せてるから座りにくいったらありゃしない。
知ってる?かっちゃん、車の真ん中のシートは座りにくいんだよ?ただでさえ座りにくいのに、引き寄せられたらめちゃくちゃ不安定だから、肩にもたれかかるしかない。仕方なく肩に頭を預けると、かっちゃんは至極満足気な表情を浮かべた。
白い口髭を生やしたダンディな運転手が文句を言うなとキレ返しているし、ついでにエンデヴァーにも物申している。なかなかアグレッシブな運転手さんだ。
「エンデヴァー、あんたいつからこんなジャリンコ乗せるようになったんだい!!」
「頂点に立たされてからだ」
「ケェーーーーーー!立場が人を変えるってェやつかい」
ケェ?ケェーって何だろ。独特な喋りに驚いていたら車が急ブレーキをかけた。
「きゃっ!な、何!?」
「なまえ、しっかり捕まってろ」
「誰かいる!」
前方に何者かが立ち塞がっている。よく見たら、轟くんのお兄さんが捕まっているのが見える。
「夏兄!!」
「頭ァ引っ込めろジャリンコ!」
急ブレーキでハンドルを切っているので後輪が滑り、耳をつんざくような異音がタイヤから聞こえてくる。車はなんとか停車した。路面が凍ってなかったのが幸いしたのか、誰も巻き込まず、他の車も少なかったので接触することはなかった。
止まるや否や、車内からエンデヴァーが猛スピードで飛び出した。
私たちも外へ行こうとするが、車全体を白い線状のものが巻き付ついて出られなくなった。だけど、黙って大人しくしている訳もなく、各々の個性で白いものを吹き飛ばして外に転がるように飛び出した。
「忘れ物だぞ!」
車のトランクから私たちのコスチュームバックが飛び出した。私は二人めがけて投げた。
受け取ったのを確認して、バックからグローブを取り出した。
「夏雄兄さん!!」
エンデヴァーに加勢しようとする私たちを見て、敵は不気味に笑って後方へと下がっていく。お兄さんを人質にしたまま逃げるつもりなのか。
いつもなら私たちなんかよりずっと速く動くはずのエンデヴァーが硬直している。
黙って立ち尽くすエンデヴァーを追い越して敵へと急接近した。
「俺の希望の炎よ!!息子一人の命じゃァまだヒーローやれちゃうみたいだな!」
敵はエンデヴァーを挑発するように叫んでいる。
「夏兄を、放せ!」
「早く俺を・・・殺っさねェから!!死人が増えちゃうんだ」
敵が動くと同時に道路の白線が動き始めて、道路の車を宙に放り投げた。
かっちゃんは爆速ターボで飛び出してお兄さんを助け出した。私は宙に吹き飛ばされた車をなんとかしないと。力を貯めて足を踏ん張る。
できるかどうかなんて心配してられない。やるしかない!
エア・フォース!
やれる!同じ!要領は同じなんだから!
力を溜めて地面を蹴り、車と同じ高さまで飛び上がった。
「そうだ。増えない、増やさない!おまえの望みは何一つ!!叶わない!!」
両手から黒鞭を出して車を掴みあげ地面にぶつかる衝撃を和らげた。車内の人たちが放り出されることもなかった。黒鞭が身体に戻っても反動で軋むこともない。
車に乗っていた人たちが中から出てきた。
「怪我はありませんか?」
「ああ助かった。ありがとう・・・!助けてくれたの君だよね?」
「は、はい、そうです!怪我はなさそうですね!良かったー」
「なまえ!モブはぁ!?」
「知らない!車に乗ってた皆さんなら大丈夫!」
敵は、轟くんの氷で身動きが取れなくなっている。怪我人もいない。敵も制圧した。私は黒鞭を使えた・・・グローブを見つめてぐっと拳を握りしめた。
「完全勝利だ」
「うるせー!!」
「何で!?」
ちょっとくらい喜んでもいいじゃん。プクーっと頬を膨らまる。かっちゃんはくるりと方向転換をしてエンデヴァーへと向かって歩き出した。
「何だっけなァNo1!!"この冬"!?"一回でも"!?"俺より速く"!?"敵を退治してみせろ!?"」
「ああ・・・!!見事だった・・・!!俺のミスを最速でカバーしてくれた・・・」
エンデヴァーはお兄さんを抱きしめたまま噛み締めるように言った。悔しいとか焦りとかはなくただ安堵の声。そりゃそうだよね。自分の息子が人質に取られてたんだもの。
「急にしおらしくなりやがって・・・!もっと悔しがれ!」
「かっちゃん・・・!そんなこと言わないの」
「チッ!」
エンデヴァーの腕の中にいた、お兄さんがもがいて勢いよくエンデヴァーから離れた。
「離れ・・・」
「夏雄・・・悪かった。一瞬考えてしまった。俺が助けたらこの先おまえは俺に何も言えなくなってしまうのでないかと・・・」
「え・・・」
「夏雄、信じなくてもいい。俺はおまえたちを疎んでいたわけじゃない。だが、責任をなすりつけ逃げた。燈矢も俺が殺したも同然だ・・・」
「疎んでいたわけじゃない?だったらなに?俺は燈矢兄からずっと聞かされてきた。俺が許す時なんて・・・こないよ。俺は焦凍みたいに優しくないから」
「それでも顔を出してくれるのは冬美と冷の為だろう?あの子は"家族"に強い憧れを持っている・・・俺が壊したからだ。戻れる、やり直せると浮き足立つ姉さんの気持ちを酌もうと頑張っているんだろう?お前も優しいんだ。だから・・・俺を許さなくていい。許してほしいんじゃない、償いたいんだ」
「・・・ていの良いこと言うなよ!姉ちゃんすげえ嬉しそうでさぁ・・・でもっあんたの顔見ると思い出しちまう。何でこっちが能動的に変わらなきゃいけねんだよ!償うってあんたに何ができるんだよ!」
しばらく黙った後、エンデヴァーは静かに口を開いた。それとほぼ同時に轟くんの氷で拘束されている敵が大声で叫び出した。
遠くでパトカーのサイレンも聞こえる。
さっきの話、私たちが聞いていても良かったのかな。家族の問題だから、私やかっちゃんは口出しすることなんてできないけどできれば仲良くして欲しい。そう思ってしまう。
「警察だ!良かった!」
けたたましいサイレンが消えて、パトカーが数台到着した。中から何人もの警察官が出てきて敵を押さえつけた。
轟くんのお兄さんが、私とかっちゃんのところに頭をかきながら近づいてきた。
「ありがとう・・・えっと・・・ヒーロー名は・・・??」
「ああ?」
「バクゴーだよね?かっちゃん」
「・・・違ぇ」
「え!?ついに決めたの!?教えて!教えて!」
「だめだ」
即答されてショックを受けて固まっていたらかっちゃんが、手を伸ばしてきてヘッドロックされた。苦しいんですけど!?首を絞める手を両手で叩いてアピールする。
「ギブ!ギブ!苦しぃ・・・かっちゃん!」
「俺はいいか?」
「だめだ。てめーはくたばれ!先に教えるやついんだよ!!」
かっちゃんは轟くんにも教える気はないと言い放ってようやく私の首から手を離した。プハッと息を思いっきり吸い込んでかっちゃんを睨みつけた。死ぬかと思った。咳込んでいたら、かっちゃんは追い討ちをかけるように額を指で弾いて、そして小声で呟いた。デコピンされた額を手で覆った私は聞き逃さなかった。
「・・・なまえは二番目に教えたるわ」
「絶対だからね!」
「約束してたんだよ。ヒーロー名決めたらそいつに一番に教えるって。なまえ、拗ねんなよ?」
「す、拗ねてないし!」
「嘘つけ。さっきめちゃくちゃショック受けた顔してただろーが」
「うっ、バレてる・・・」
「なまえのことなんざお見通しなんだよバーカ」
本当は一番に教えて欲しかったけど約束なら仕方ない。かっちゃんの真剣な眼差しから、時折垣間見える優しさが滲むのでわがままは言えない。
そのあと、すっかりと沈み込んだエンデヴァーに学校まで送ってもらったけど誰も何も話さない、ただただ静かな空間だった。静かに揺られていると眠気に襲われるわけで。私は猛烈な睡魔と戦っていた。そして気がついたら学校の前に車が停車していたのだ。かっちゃん曰く、睡魔と戦ってたのはほんの数分で、私は呆気なく夢の中へ落ちていったらしい。
カバンを持って降りて、深刻な面持ちのエンデヴァーに深々と頭を下げた。
「ありがとうございました!」
「またインターンの予定は学校を通して連絡する」
「はい!!失礼します!!」
学校に戻って来たんだと実感する。皆に会えるのが楽しみで胸が躍る。
明日から学業とインターン、二足の藁を履くことになりより一層忙しくなる。気合いをいれなければ。
「なまえ!!」
「緑谷はやく来いよ」
「待ってー!」
「おせェ!置いてくぞ!」
「ごめん!」
少し前で待っている二人に追いつくように走った。追いつくと並んで三人で歩き始めた。
こうして、私たちのインターンに明け暮れた冬休みは終わりを迎えた。