待ち焦がれたクリスマス
イルミネーションが施された雄英高校はすっかり学内も浮き足立っていて雰囲気はクリスマスだ。雄英の寮にもクリマスツリーが設置されて、皆各々好きなオーナメントと飾りつけた。相澤先生とエリちゃんを誘って光沢のあるメッキのオードソックスなオーナメントボールやベル、キャンディケインを飾っていたら、皆の個性を表現したオーナメントボールを八百万さんが創造して持ってきてくれた。それに皆のサンタ服とサンタ帽子まで作ってくれている。サンタ帽子の先にも皆の個性を表現した飾りがついている。耳郎さんは音符、上鳴くんは雷マーク、梅雨ちゃんはカエル。八百万さんの帽子には小さな本が付いていた。可愛い。パラパラめくれるし、ちゃんと内容が書いてあって豆本って感じだ。私に用意された帽子の先には、私の髪の毛みたいにふわふわした毛足の長めな白いポンポンが付いていた。
「八百万さんありがとう!皆の分作ってくれたんだね!」
「皆さんの“個性“を表現したんです。緑谷さんのパワーは表現しにくかったので、髪の毛を表現させて頂きましたわ!」
「やっぱり!もしかしてそうかなと思ってたんだ」
クリスマスツリーの飾り付けもモールや綿雪を乗せて電飾も取り付けたのであとはトップスターを飾るだけ。常闇くんがダークシャドウを出してエリちゃんを持ち上げた。エリちゃんがトップスターを取り付けてA組のクリスマスツリーは完成した。
「完成!!」
ダークシャドウにお礼を言っているエリちゃんの肩をポンと叩いた。手を繋いで一緒に完成したクリスマスツリーを見上げた。
「エリちゃんのおかげで素敵なツリーになったね!ありがとう!あ〜クリスマスって大好き!一年中クリスマスがいいなぁ!」
「何で?」
「クリスマスはまず歌が楽しくて、イイ!」
「それはウチも思う!」
耳郎さんも話に加わってきた。
「クリスマスソングはシャンシャンって感じでウキウキする!」
「しゃんしゃん?」
「ジングルベルとか」
「じんぐるべる?」
エリちゃんはクリスマスの歌を知らないみたい。きっとクリスマスをお祝いしたことがないのだろう。今年はエリちゃんにもたくさん楽しんでもらいたい。
「エリちゃん後で一緒にクリスマスの歌を練習しようね」
「うん!!」
「ウチが演奏してあげる!」
「耳郎さんありがとう。生演奏だ!エリちゃん、クリスマスはねぇ、歌だけじゃないんだよ。ご馳走に友達とプレゼント交換!!良い子はサンタさんからもプレゼントがもらえるんだよ〜!エリちゃん、楽しいクリスマスパーティーにするからさ、絶対来てね!」
「パーティー・・・ワクワクさんだ!」
エリちゃんも楽しみになってきたらしくてワクワクしている。私はエリちゃんにリンゴを剥いてあげるから待っててと言うと、心配そうにこっちを見ていた。この前の特訓の成果を見せる時がきた。前に病院に面会に行った時は通形先輩に剥いてもらったうさぎリンゴも、今では私一人でちゃんとできるようになっているんだから!
ちょっと形は汚いけど、うさぎのリンゴができた。誰が何と言おうとこれはうさぎだ。
エリちゃんは私の指がちゃんとついてるか心配している。ジャーンと見せると1、2、3・・・と数えていく。指が10本あることを確認してにっこり笑った。
「ヒーロー名さん、お料理できるようになったんだね!」
「まだまだ下手くそだけどね。たくさん練習したんだ!誰かのためなら頑張れる。できないって思わないで挑み続けたら、絶対いつかはできるようになる。私たちにできないことなんてきっとない。合言葉は“できる!できる!できる!“だよ」
「できる、できる、できる・・・」
「そう!」
八百万さんが相澤先生にエリちゃんのサンタ服とサンタ帽子を渡していた。部屋の飾り付けも終わって、耳郎さんの部屋に女子みんなで遊びに行った。エリちゃんは色んな楽器に興味津々だ。
耳郎さんのクラシックギターの演奏が始まった。エリちゃんに歌詞カードを渡してジングルベルをみんなで歌った。皆の歌を聴くエリちゃんの体が自然とリズムに合わせて揺れている。エリちゃんも歌えるようになったので、耳郎さんはエレキギターでジングルベルロックを演奏し始めた。芦戸さんがダンスをエリちゃんに教えているので私も他の女子たちも便乗して教えてもらった。
「ねえ!エリちゃんも踊れるようになったし、クリスマスパーティー当日に男子に披露しない?」
「いいね!」
「できるかなぁ」
「エリちゃん。合言葉は?」
「・・・!できる!できる!できる!」
「そう!!一緒に練習しよう!きっと相澤先生もびっくりするよ!」
「がんばる!」
エリちゃんと一緒にひっそりと練習して迎えたクリスマスイヴ。雪花が空から降ってきて、地面は真っ白綿帽子をかぶっている。ホワイトクリスマスになった。これぞクリスマスって感じ!
たくさんのご馳走が並んでいる。私はチョコレートフォンデュが楽しみで仕方ない。大好きな苺をたっぷりのチョコでコーティングして食べるんだ!
かっちゃんはさっきから私のサンタ姿を見て何とも言えない顔をしている。皆サンタ服を着ているのにかっちゃんだけは普段着のままだ。部屋に戻ろうとするかっちゃんの手をとって無理矢理隣のソファに座らせた。クラッカーが皆に行き渡ったら飯田くんが立ち上がって音頭をとった。
「皆クラッカーは持ったか?よし!時間になったので、これよりA組のクリスマスパーティーを始める!!!せーのっ!」
「「「「「メリー!クリスマース!!!!」」」」」
クラッカーが弾けて紙テープが飛び出した。BGMは私の大好きなクリスマスソングが流れている。かっちゃんはクラッカーを鳴らさなかった。私の手に未使用のクラッカーを押し付けて立ち上がった。
「くだらねェ」
「かっちゃん!どこいくの」
「うっせェ便所だ」
かっちゃんの後ろで、上鳴くんと芦戸さんがこそこそかっちゃんのサンタ服を持って追いかけている。
「インターン行けってよー。雄英史上最も忙しねェ1年生だろコレ」
「緑谷くんはどうするんだい。その・・・ナイトアイ事務所・・・」
「センチピーダーが引き継いでるんだろ!?久々に会えるじゃねェか!」
「私もそう思ってたんだけど・・・ナイトアイの事務所は今余裕がないみたい」
インターンを再開すると相澤先生に知らされてから、通形先輩とともにナイトアイ事務所にインターンをお願いするつもりで顔を出しに行ったのだが、ナイトアイの残した仕事があまりにも多くて余裕がないと言われてしまったのだ。
「グラントリノもダメだから今宙ぶらりん」
「そっかぁ」
「任意参加だった前回と違って今回は課題だから、学校で紹介してくれるって・・・」
「ほぉーあーじゃー」
離れたところで、かっちゃんが振り返って芦戸さんに「コソコソと何だコラ」と詰め寄っている。芦戸さんは「何のこと?」としらばっくれている。
「爆豪はジーニストか!?」
「あ!?」
上鳴くんが、かっちゃんの爆破を模したモフモフというかトゲトゲのついたサンタ帽を頭にスポっと被せた。
「・・・決めてねェ」
ムスッとした顔でかっちゃんはサンタ帽を脱ぎ捨てた。
「でもまーおめー指名いっぱいあったしな!体育祭で。行きてーとこ行けんだろ」
芦戸さんが後ろからかっちゃんにサンタ服を着せようとこっそり近づいている。
「今更有象無象に学ぶ気ィねェわ。オイ!着せんじゃねェよ!!」
「着なよー!同調圧力に屈しなよー!ね!なまえちゃん!爆豪にも着てほしいよね!?」
「え!?えーーと、うん。無理にとは言わないけど一緒にパーティー楽しみたいなぁ」
「ほら!愛しの彼女のお願い聞いてあげなよー聖なる夜なんだからさ!」
「チッ!」
首を傾げてお願いすると、舌打ちしながらもサンタ服を羽織って帽子をかぶってくれた。その後もインターンの話をしてたら、峰田くんが机を叩いた。
「おォい!!!清しこの夜だぞ!!!いつまでも学業に現抜かしてんじゃねーーーーーー!!!」
「斬新な視点だなオイ」
「まァまァ峰田の言い分も一理あるぜ。ご馳走を楽しもうや!」
「料理もできるシュガーマン!!」
「砂藤くんすごーい!!」
そう言って砂藤くんがローストチキンを運んできた。めっちゃすごいんですけど!!さっきからキッチンで何かしてるし良い匂いがすると思ってたけどこれだったのか。
玄関がカチャっと開いた。
「遅くなった・・・もう始まってるか?」
「とりっくおあとりーと・・・?」
「違う混ざった」
「サンタのエリちゃん!!」
相澤先生とエリちゃんだ!玄関に走っていくとエリちゃんは八百万さんの作ったサンタ服を着ている。可愛いすぎる。
「似合ってるね!」
エリちゃんはテンパって豆まきを始めた。な、なぜ?でも可愛いから、いっか。
通形先輩は今日は自分のクラスのクリスマスパーティーに参加しているらしい。エリちゃんの額の角がこの前より大きくなっている気がする。エリちゃんは女子たちに誘導されて中へと進んでいく。イースターエッグをポッケから取り出して麗日さんに見せている。
「角・・・また大きくなってますね」
「ああ。前向きだよ。おまえの言葉をちゃんと受け止めてる」
「・・・先生もご馳走食べてくださいね!私が切ったリンゴもあります!!」
「ありがとう」
エリちゃんに何が食べたいかを聞いてお皿に取り分けてあげた。たっぷりとお皿に乗せてたらエリちゃんに「ヒーロー名さん、そんなに食べられないよぉ」と言われてしまった。私は楽しみにしていたイチゴのチョコレートフォンデュをたっぷりと堪能した。
耳郎さんがギターで演奏を始めて、皆でジングベルや赤鼻のトナカイを歌った。皆お腹も満たされてきた頃、芦田さんが合図してエリちゃんを連れて女子が集合した。
「皆ー!女子からのサプライズ!」
「ミュージック!スタート!」
エリちゃんをセンターにして一列に並ぶ私たちに何事かと男子と相澤先生は驚いた表情をしている。音楽が始まってジングルベルロックを踊る。エリちゃんには可愛い振り付けで、私たちはちょっとだけオトナっぽい振り付けのダンスを披露する。上鳴くんがスマホで動画撮影をしているのが見えた。かっちゃんと目があってニコッと笑ったら、顔を背けられた。いつものことなので気にしない。
ダンスが終わって全員で手を繋いで上にあげた。拍手が沸き起こった。お辞儀をして顔をあげると峰田くんが大興奮しているのが見えた。
「すげェ!いつの間に練習してたんだよ」
「聖夜最高!!!!!!!眼福だぜェェェェ!!!!」
「エリちゃんくんのダンス、とても素晴らしかったぞ!」
「ふふふ、ありがとう!相澤せんせも見てた?」
「見てたぞ。上手だった」
「俺ら何も出し物用意してねェぞ」
「ウチらが気が向いてしただけだから」
「来年は俺らも何かするか!!」
かっちゃんが部屋に戻ろうとするので、上鳴くんがスマホを見せながら説得していた。お待ちかねのプレゼント交換の時間になった。皆がプレゼントを持ち寄った。常闇くんのプレゼントはラッピングできないくらい大きな剣で、持ち手のところにリボンが結んである。
プレゼントを一箇所にまとめておいて瀬呂くんのテープとプレゼントを括り付けて準備した。テープを選ぶくじ引きスタイルの交換会だ。
かっちゃんは選ぶのを拒否したので上鳴くんに勝手に足にテープを括り付けられている。
「せーのっ!」
テープを引っ張るとプレゼントが舞い上がった。私がゲットしたのは麗日さんが用意したモチモチ切り餅だ。美味しそう!お正月に食べよう。
私の選んだオールマイトのマスコットは麗日さんが引き当てたようだ。
楽しかったパーティーもお開きになって、エリちゃんは相澤先生と一緒に帰っていった。エリちゃんは常闇くんの大きな剣が当たっていた。剣はエリちゃんの身体よりも大きいので持ち帰るのも大変そうだ。
お皿を運んでいたら、轟くんに声をかけられた。
「緑谷、爆豪。もし行く宛が無ェなら来るか?No1のインターン」
「・・・えっ!良いの?」
「親父に頼んでみる」
「かっちゃんは?」
「なんで俺が半分野郎と一緒につるまなきゃなんねェ」
「私は、行く!轟くんありがとう」
お皿を置いて、轟くんに近づいてお礼を言ったらかっちゃんにものすごい勢いで後ろに引っ張られた。
「・・・俺も行く」
「なら決まりだな。親父がなんていうかまだ分かんねェけど、多分大丈夫だろ」
轟くんはお皿をキッチンへと運ぶために行ってしまった。かっちゃんのいる方がメラメラ燃えてる気配がして振り返ると予想通りしかめっ面をしている。
「かっちゃん?」
「よそ見すんなよ」
「・・・?そんな心配しなくてもお皿割らないよ!大丈夫!」
「わかってねェな。後で部屋行くわ」
そう言ってかっちゃんはソファを元の位置に戻し始めた。かっちゃんにクリスマスプレゼント渡さなきゃ!張り切ってお皿運んでたらつまづいてお皿を何枚か割りかけた。皆に怪我ないか心配されてしまった。かっちゃんは呆れた顔してこっちを見てる。割らないって豪語してたのに、調子に乗りました。ごめんなさい。