最速ヒーローと潜入捜査
様々なプロヒーローと学生がチームを組みミッションを遂行する、チームアップミッション。略してTUM。私たちは今No2ヒーロー、ホークスとかっちゃんと共に潜入捜査をしてる。
どこにいるかというと敵のアジトの倉庫の荷物の影。とにかくめっちゃ狭い。ホークスとかっちゃんに挟まれて私は潰れてしまうんじゃないかってくらいに狭い。
ホークスの剛翼は言わずもがなボリュームがあるし、かっちゃんの両手にはめている籠手も割とかさばるのでどうしても狭くなる。"速すぎる男"との異名を持つホークスとのチームアップ。彼の実力を間近で見られるなんて!と喜んでいたのも束の間。こんなところに三人で隠れてるのがそもそも間違ってるのでは・・・二人に挟まれて身動きが取れない。
かっちゃんは私とホークスとの距離を作ろうと引っ張るので、かっちゃんと密着しててもはや"抱きしめられてる"に近い。
「か、かっちゃん、近いよ」
「てめェ、ヘラ鳥から離れろや」
「シー・・・」
ホークスが指を口に当てながら静かにするようにと制した。荷物の影から敵のリーダーの姿を目視する。あれが・・・ボディスーツで、顔の上半分はマスクをつけている。クモを意識したようなデザインのマスクは、目が8つついている。爽やかなデザインではないことは確かだ。
「あいつが敵のリーダー。俊足の"個性"持ちでとにかく足が速い」
「確か盗賊グループですよね。犯行があまりにも速いという・・・」
「最近はどんどん配下を増やしてるみたいだ。奴を捕らえようとした多くのヒーローが被害に遭ってる。これ以上好き勝手させるわけにはいかない。そこで、緑谷さん、爆豪くん。君らにお願いしたい作戦がある!敵を誘導してほしいんだ」
「私たちが敵を誘導・・・ですか?」
「あの敵はとにかく足が速い。追いつかれる前に逃げられない場所まで誘導してほしい」
「なるほど、それは責任重大ですね・・・」
「つーかソレ。あんたがやる方がいいんじゃねェの」
「いや、俺は爆豪くんと緑谷さんこそ適任だと思うよ。そうだこれも持ってて。何かあればすぐに二人のところに駆けつける。小さくてもいざという時役に立つから」
そう言ってホークスは剛翼から小さな羽を2枚とって私たちに渡してくれた。初めて触る羽は、思っているよりしなやかだ。それでいて強度があって切れ味も良いらしい。
「いつまでもここにいると見つかる。じゃアイツは二人に任せた!」
「えっ!ホー・・・速っ!!!もう居ないんですけど」
風も起こさずにあれだけの速度を出せるホークス、すごい・・・
「チームアップ意識しろやァ・・・ヘラ鳥!」
かっちゃんが歯軋りしながらそう言った。まさか、唯我独尊だったかっちゃんからそんな言葉が聞けると思っていなくて驚いて見たら「任務中だろ。こっち見てんじゃねェ」って怒られた。
建物の構造は潜入前に頭に叩き込んでいる。荷物の影から移動し、逃げられないポイントへと誘い込まなくてはならない。だからあえて見つかるように移動したのだ。
通路の影から敵のリーダーを誘き寄せるために、あえて声のボリュームを少し上げた。
「敵はスピードタイプ。下手には近づけない。十分に用心して気を引きながら・・・あれ?」
リーダーの姿が見えなくなった。さっきまで居たのに。
「お前らヒーローだな?」
スピードタイプだと分かっていても、この速さはやばい。本当に捕まってしまうかもしれない。目の前にやってきた手を振り払って走り出した。敵が私のコスチュームのフードをつかもうと手を伸ばしたとき、かっちゃんが庇うように飛び出して爆破した。
「かっちゃん!」
敵は一旦後方に引いた。
「チッ!掠りもしねぇ!おいなまえ!まだ捕まってんじゃねぇ!!」
「う、うん!分かってる!」
例のポイントまであと少し。私とかっちゃんは全速力で走り続けて、ポイントまで誘導した。わざと逃げられなくて困った演技をする。
「かっちゃん!!!行き止まり!」
敵は口から蜘蛛の糸のようなものを吐き出して、私とかっちゃんは壁に押さえつけられてしまった。まるで蜘蛛の巣に引っかかったエモノ状態。実際にこれ動けない。これでプロヒーローが何人もやられてしまったんだろう。
「しまった!」
「んだ、この糸!!!」
「ハハハハハハァ!!この俺から逃げ切ったヒーローはただの一人もいねぇ!!俺が誰より速いからだ!!」
私は手の中のホークスの羽を握りしめた。かっちゃんは口で蜘蛛の糸を引きちぎろうとしてるけど強度が強くてなかなか切れない。
「なんだぁ?ヒーロー?ガキじゃねえか。しかも一人は女ときた。舐めてんのかこの俺を??」
私に近づいてきて、頬を撫でてきた。
鳥肌がたった。かっちゃんに触られるのとは全然違う感覚で、ものすごく気持ち悪い。それを見てかっちゃんはガチで怒ってる。
「っ!触らないで!!」
「知ってるか?気の強い女を屈するのは最高なんだぜ?女の方は可愛がってやるよ。顔も可愛いし、よく見たらガキの割に身体もなかなか」
「ひっ!!」
「おいコラヒーロー名に触るな!!」
「ふーん。ヒーロー名って言うんだ。ヒーロー名ちゃーん俺と遊ぼうぜェ」
口元をだらしなくニヤつかせながら敵が舌なめずりをした。気持ち悪いことこの上ない。
はやくきて、ホークス・・・!
「バクゴー!ヒーロー名!!」
後ろからの声に、敵は振り返った。そして現れたホークスの方へとへと向き直った。
「なんだまだ仲間がいたのか。だが遅かったな!おっと、指一本でも動かしてみろ。こいつらがどうなっても」
ニヤリとホークスが笑った。私とかっちゃんは敵が後ろを向いた時に手の中の剛翼の羽で、蜘蛛の糸を切って逃げだしたのだ。
「二人とも誘導ご苦労さん」
敵は慌てて振り返るも私たちはすでに戦闘体制にはいっている。敵にようやく焦りの色が見え始めた。
「なに!?いつの間に!!俺の糸は素手で切れる強度じゃ・・・」
私は手の中に隠していた羽を見せた。
「ホークスがあらかじめ私たちに羽を持たせてくれたの」
「てめェはまんまと罠にはめられたってわけだ。よくもヒーロー名に触りやがったな。ぶっコロス」
「・・・!!」
敵は仲間を呼ぶが、誰一人としてやって来る気配はない。
「お、おい!何してる!早くしろ!なんで誰も来ねぇ!?」
「あぁ、もしかして。この人たち仲間?」
ホークスの羽が一枚ふわりと浮いてドアを開けた。中からロープで縛られ気を失った仲間たちが雪崩てきた。敵のリーダーは最高速で逃げようと走り出した。だけど、ホークスの方が圧倒的に速かった。
「スピード自慢なんだっけ?俺の方が速かったね。ヒーロー名!バクゴー!やれ!!!」
後ろから私とかっちゃんが同時に技を放った。
ハウザーインパクト!
セントルイススマッシュ!
警察に全員引き渡して私たちのミッションは終了した。
あのあと、かっちゃんが敵に触られた頬を石鹸で洗えとしつこく言うので洗ったけどそれでもまだたりなかったのか、ゴシゴシと手で拭かれた。かっちゃんの手のひらのニトロがたくさんついた。
その様子を見てホークスはケラケラと軽快に笑った。
「爆豪くん、お前ほんっと緑谷さんのこと好いとうっちゃんね」
「あ゛!?」
「よーし、ミッション終了!腹減ったなー。メシ行く?」
「はい!」
連れてきてもらったお店の個室のお座敷で私たちは美味しい焼き鳥に舌鼓を打っていた。
「あの敵、本当に速かったけど作戦うまくいきましたね!ホークス」
「一人でも何とかなりそうだったじゃねーか」
かっちゃんが串に刺さった焼き鳥を頬張りながら言った。
「そーんなことないって!二人の力をアテにしての作戦だし、俺一人じゃ若干パワー不足だからさ。それに二人ともチームワーク良かったし、結構速かったぜ?」
「ケッ!イヤミかよ」
敵を確実に追い込んで捕らえる。これがNo2ヒーローの実力。
「んん!やっぱここの料理うまかー!!」
ニカッと笑うホークスにつられて私も自然と笑顔になる。そのあとも美味しいご飯と、ホークスの話で大いに盛り上がった。
博多駅まで見送りに来てくれたホークスは、私たちと別れた後あっという間にファンに囲まれているのが見えた。人気者だなぁ。さすがNo2だ。
帰りの新幹線の中で隣に座るかっちゃんに、ホークスの使っていた博多弁を真似して「好いとうよ」って言ったら、顔を真っ赤にしてブチギレられたけど、今日のチームアップミッションも無事に終了しました!