セピア色のメモリー



"個性"であふれるこの世の中で、"無個性"で生まれた珍しい女。緑谷なまえ。"無個性"だっていうのにヒーローを夢見てやがる。家も近所だし、親同士が仲良かったから自然と俺らも遊ぶようになっていった。ヒーローに俺がなってなまえを守るんだって決めてたのに、ガキだった俺は守るどころかなまえを傷つけて気がついたら疎遠になってしまった。
ずっと後悔してたけど、プライドもあって謝ることができなかった。黙って遠くからみることしかできなくなったけどそれでもなまえのことを守るって決意は揺るがなかった。
なまえが困ってる時はバレないようにこっそり助けたし、なまえに近づく男はひっそりとボコボコにした。鈍臭いなまえは気づきもしない。

それまでは別々のクラスだったのだが、中学3年に上がった俺らは同じクラスになった。なまえは俺の顔を見て、固まっている。何をどう話していいかも分からず、ただ俺はなまえから目を逸らした。席に着いて、なまえを見ると、もうこっちは見ていなくて、ヒーロー図鑑を机に広げて付箋を貼っていた。ただそれだけなのに、沸々と怒りが湧き起こる。なまえの中から俺という存在はもうとっくに消えてしまったのか。

4月上旬。桜並木の花びらがひらひらと舞っている。俺の少し先に通学するなまえを見つけた。舞い落ちる花びらをキャッチしようとして、追いかけている様は小学生以下のガキ。ようやく掴むことができたのか嬉しそうに微笑んでやがる。
桜の木の下で桜を見上げるなまえの横顔が、ガキみてェな行動とは裏腹に大人びて見えた。視線を感じたのか、俺のほうを見た。俺に気がつくと恥ずかしそうに鞄に桜の花びらを入れて足早に立ち去っていった。

3年にもなると嫌でも進路についての話がおおくなる。なまえはいつも一人でポツンと座って、ヒーロー図鑑を眺めては、自分のノートに何かを書いている。

新しいクラスにも慣れてきた4月の下旬。
朝の通学時間が被るのでなまえとよく遭遇するようになった。

「オイ、俺の前を歩くな」
「え、でも通学路一緒だから仕方ないんじゃ・・・」
「うっせェな!俺が歩くなと言ったら歩いてンじゃねぇ」
「ええええ!?」

久々に会話したのがこれ。もっと言いたいことがあったのに、話せない。俺の性格に問題があるのは分かってる。分かってるけど急に素直になんてなれるわけがねェ。
なまえは俺の少し後ろを歩いて着いてくる。同じ学校で同じ通学路だから当然なのだけど、もっとなまえと話せたら・・・

「オイ・・・」
「ご、ごめん!もっと離れるから」
「ちげぇよ、バカ」

咄嗟になまえの腕を掴んだ。ふわりと甘い香りがした。

「え?」

なまえの大きな瞳が揺れる。俺だけが映り込んでる。
ずっとこのまま時が止まってくれれば・・・
なまえに素直になれたら・・・

「そ、そういえば、今日かっちゃんのお誕生日だよね。お、おめでとう」

今日が4月20日だっていうことを俺自身が忘れかけていたというのに、なまえに誕生日覚えられてるとは思わなかった。一瞬間を置いて俺が口を開こうとしたその時。

「おーいカツキー!」

後ろから級友の声が聞こえて、なまえはハッとした表情になる。仲違いしてる俺たちが一緒にいたらモブ共に何か言われるからだ。

「あ・・・じゃ、私行くね」

なまえはするりと俺の手を解いて行ってしまった。まだ手にはなまえの腕の感触が残っている。細っこい腕だった。胸の奥が焼け焦げるような思いがした。なまえのことがいまだに好きなんだって実感する。
後ろから走ってきたモブ共に一発どデカい爆破をお見舞いしておいた。

いつか、素直に話せる時が来たら・・・
そんときは悪かったって謝ろう。
好きだって伝えよう。



目が覚めてこれが夢で、過去の記憶だって思い出した。ただの夢だと言うのに、胸が苦しい。隣ですやすやと寝ているなまえにそっと口付けた。

「あんときは悪かった・・・なまえ、好きだ」

幸せそうな顔して眠り続けるなまえを抱きしめて、俺はもう一度眠りについた。




(2021.04.20 かっちゃんHappy Birth Day!!)

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