個性の暴走、理性の闘い
PM7:00。午後からの授業でなまえの個性が暴走するという事件があった。そして新たな力の検証のために体育館でなまえと俺、そしてオールマイトの三人で特訓をしていた。
「オラ゛どうした!ビビってんのかコラ」
「待ってって!!待って!マジで出ないんだって」
激しめの爆破の攻撃でもなまえから再びあの黒い個性が出現することはなかった。
「やめーーーーー!そういうんじゃないから落ち着きなさ、ブハッ!」
「ヤバくなりゃ出るもんだろうがこういうのは」
「いや、これ出さないための訓練だから!緑谷少女どうなんだい?」
「・・・やっぱり出ないです。気配が消えた」
右手をジッと見つけるなまえの横顔が綺麗だなと、場違いだけどそう思った。
「危機感が足ンねンだよ!もっとボコしゃあひょっこり発現すンだよ」
「私の気持ちに呼応するのならあの時私は・・・今扱える力じゃない。そう判断した。それでロックが掛けられたような状態になってるのかも。だとすると解除と施錠のイメージを構築してみて・・・」
ブツクサ言い始めたなまえを放って帰ろうとそこそこに切り上げて寮に戻りはじめた。けど、結局先に帰らず体育館の前で二人が出てくるのを待った。なまえはオールマイトにペコリとお辞儀して俺のところに走ってきた。
歩き始めたらなまえから手を繋いできたもんだから、ボッと音を立てて繋がれた手と反対の手が爆発を起こしてしまった。クソ・・・
寮までの道のりを手を繋いで帰る。外はもう真っ暗で俺たち以外の生徒は外にはいない。
まあ、誰かに見られることもないだろう。なまえの話に耳を傾けながら、歩く速度を合わせる。寮が見えてきた時なまえが手を離そうとするから、強く握り逃さなかった。流石に寮に入る時に手を繋いでたら何言われるか分からねェから直前に離したが。
寮にはB組の奴らが来ていて、いつも以上に煩くて晩飯のビーフシチューを食ったら風呂に入って早々に部屋に引き上げた。
先生に渡された郵便物の中に、クソババアからの手紙が入っていた。目を通すと封筒の中に共にズードリームランドのチケットが2枚入っていた。ズードリームランドとは動物をモチーフにしていて、小さな頃に何度か家族で行ったことのある遊園地だ。なんで、今こんなものが?
夏休み明けから寮生活となった俺たち雄英生にとって外出は学校に許可を取らなければならないし、最悪先生がついてくるシステムになっている。そもそも寮生活になったのは、敵連合に俺が狙われてからだ。雄英は、敵連合に遭遇したら危険だというクソみたいな理由で、プロヒーローの目の届く学内から生徒を出そうとしない。そんな状況でチケットが送られてきても行けるかどうかあやしい。
手紙の最後は『お友達と行ってもヨシ!なまえちゃんを誘ってもヨシ!目一杯楽しんできてね。』と締めくくられている。
なんでここになまえが出てくんだよ・・・
なんとなくズードリームランドのホームページをみていたら、冬季限定いちごタルトという単語が飛び込んできた。これ、あいつが喜びそうだな。甘いものに目がないし。それに、クリスマスにプレゼントを買って渡してやりてェと思ったが女が喜ぶモンなんて知らねェ。
なまえに電話して今すぐ部屋に来いとだけ言って返事も聞かずに電話を切る。なまえが部屋に来ると必ず部屋のドアを3回ノックして控えめに俺の名前を呼ぶ。あいつの前で嬉しいって顔するのも癪だから、嬉しい気持ちを隠して不機嫌な顔つきでドアを開ける。なまえは嬉しいっていうのを隠すことなく全面に押し出してくる。
「なんだよ、そのニヤついた顔は」
「え??」
不思議そうに首を傾げるなまえがクソ可愛くて無性に抱きしめたくなる。自分の気持ちを誤魔化すようにそっぽを向いた。
なまえがベッドにちょこんと腰掛けて、俺が隣に来るのを待ってる。何も言わず隣に座ってぶっきらぼうにズードリームランドのチケットを差し出すと、チケットと俺の顔を交互に見ながらも受け取ってパァーっと明るい満面の笑みを浮かべた。
「連れてってくれるの?」
「再来週予定空けとけって言っただろ」
「本当にいいの!?チケット買ってくれたの!?」
「クソババアがくれたんだよ」
「かっちゃんのお母さんが??お礼言わなくっちゃ」
「言わなくていい!!ぜってェ言うなよ!?」
「え、で、でも。せっかくチケット買ってもらったのに・・・」
「てめェは何も言うな!俺から伝えておくから」
「わ、わかった」
俺の勢いに圧されてなまえは渋々了承してくれた。嬉しいのかチケットを見つめながら足をパタパタと動かして俺の肩にもたれかかってきた。
「外出許可貰えるかなぁ」
「・・・大丈夫だろ」
「先生も付いて来るんじゃないの?」
「外出申請するときに、親と一緒だから付き添いいらないとか適当に書けばいいだろ」
「あ、そっか。その手があったか」
そういえば、体育館での特訓じゃなまえの黒い個性は出現しなかった。ヤバイ状況になれば出るかと思って、遠慮なく攻撃を繰り返したけど気配が消えただと抜かしやがった。じゃあ、こういう状況ならどうだ?
「オイ、なまえ。こっち向け」
「へ?な、何?」
有無を言わさず唇を塞いだ。何度も角度を変えて重ね合わせてなまえの肩をトンと押してベッドに横にならせる。舌をねじ込んで口内を犯す。離れても透明の糸みたいな唾液で俺たちは繋がっていた。なまえの頬は紅潮していて、瞳はとろんとしている。
「かっちゃん・・・」
息を切らして切なく名前を呼ばれる。服を着たままなのになんでこんなにエロいんだよ、こいつ。服の上から腰のラインを撫でるように触るとなまえはビクッと動いた。このまま触れたら、最後までしてしまいそうな気がして、慌てて手を離した。
そういうことは俺が仮免取ってからだ。そう決めたのになまえを目の前にするとあっさりとその決意は燃えて塵と化してしまいそうになる。今してるのはなまえの個性のためだと自分に言い訳をして、またキスをした。なまえからほのかに石鹸のような匂いがする。首筋に吸い付いて俺のものだという印を何個かつけた。それでもなまえの個性は暴走する気配はない。
「かっちゃん・・・あ、あの・・・」
「なんだよ」
「・・・・・・・・・」
「言えよ。言わねェとわかんねーだろ」
「え、えっとね・・・・・・その・・・もっと触ってほしいの・・・かっちゃんに触られるとなんか、なんて言うか・・・幸せって言うか、その・・・気持ちイイ?」
モジモジしながら言うなまえが俺の欲望を駆り立てる。恥ずかしくなったのか俺の枕を引き寄せて顔を隠している。
「は?」
「や、やっぱりなんでもない!!忘れて!!」
「忘れらるわけねェだろ、バカか」
触るだけ。少し触るだけなら・・・なまえの必死なお願いにも応えたいが俺の理性がもつかどうか。いや、きっと無理だ。こんなンもつ方が男としておかしいだろ。だから・・・
「けど今は無理だ」
「あ、う、うん。そうだよね、変なこと言ってごめんね・・・」
枕の下で悲しそうな声を出す。枕を引っ剥がすとなまえの瞳が涙を溜め込んでいることに気がついた。けど、今の俺は仮免すらないただの学生。俺はヒーローになれたらこいつを完全に俺のモンにするって決めてるけど、まだその時じゃねェ。来週の仮免補講の結果次第だ。まァ、必ず受かるけどな。なまえの目元にキスを何度もすると、くすぐったいと小さく笑ってくれた。
「俺が、来週の仮免試験に受かったらそん時はなまえが嫌って言っても触る。俺ァ必ず受かるからな。覚悟しとけよ」
「う、うん」
涙が引っ込んで、今度は頬を染めつつ少し怯えた顔になっている。短時間の間によくこんなコロコロ表情が変わるもんだな。
華奢な身体を腕の中に閉じ込めて、なまえのふわふわとした髪の毛に指を通した。早く仮免試験日になってほしい。仮免試験なんて余裕だわ。今俺が余裕がないのはなまえとのことだ。
仮免さえ受かれば胸を張って堂々となまえに触れることができるのに。触れたい、気持ちよくしてやりたい。そんな気持ちと戦いながらなまえの頭のてっぺんにキスを落とした。