君で暖をとる



季節は移ろい、人肌で暖をとりたくなる季節がやってきた。相変わらずかっちゃんは週末には仮免講習があるし、私は私でオールマイトとの秘密の特訓の日々を過ごしていた。11月も下旬に差し掛かる頃、この日はかっちゃんの仮免補講もなくて私も何の予定もなくのんびり過ごせるなと思って二人して部屋でパジャマのまま過ごしていた。起きて並んで歯磨きしてたら「早く降りて来い」と切島くんがかっちゃんの部屋まで呼びに来て、私がいるのに気がついて何だかちょっと気まずい雰囲気になった。いや、キスとかはしたけどその他は何もヤラシイことはしてないからね!?
相澤先生とビックスリーがエリちゃんを連れてA組の寮にやってきた。ソファに座り、エリちゃんは波動先輩にヘアレンジをされていた。

「雄英で預かることになった」
「わぁ!近い内にまた会えるどころか、一緒に過ごせるんだ!?ど、どういった経緯で!?」
「いつまでも病院ってわけにはいかないからな」

エリちゃんは麗日さんや梅雨ちゃんに囲まれて恥ずかしそうにしながらも挨拶をしていた。私たちインターン組が相澤先生と通形先輩に手招きされて、寮の外に出ると、エリちゃんの家庭事情を聞かされた。親に捨てられ、血縁にあたる八斎會組長も意識不明のままだという。

「そんでね先生から聞いたかもしんないけど“個性“の放出口になってるツノ」
「はい、聞きました。縮んでて今は大丈夫って聞きました」
「わずかながらまだ伸び始めてるそうなんだ」

またいつエリちゃんの個性が暴走してもおかしくないってことか。相澤先生ならエリちゃんの個性を止めることができる。通形先輩も休学している間エリちゃんのお世話をしてくれるそうだ。私も微力ながらお手伝いできたらいいな。

「エリちゃんが体も心も安定するようになれば、無敵男の復活の日も遠くない」
「そうなれば嬉しいね」

早速3年生にエリちゃんをお願いしていたので、私もすかさずお手伝いすると言ったのだけど相澤先生に来賓があるから寮で待つようにと言われてしまった。
来賓を待つ間、ソファの辺りででのんびり過ごしていた。私は麗日さんが淹れてくれたホットココアを飲んでいた。あったまるなぁ。
かっちゃんの横に座ると、足を組んでいたのを下ろしてスペースを作ってくれた。こういうとこ、優しいんだよね。頬が緩んでいたのか、かっちゃんにため息をつかれた。

常闇くんのインターン先の話になったとき、寮のドアが開いて来賓の到着を知らせた。

「煌めく眼でロックオン!」
「猫の手手助けやって来る!」
「どこからともなくやってくる」
「キュートにキャットにスティンガー!」
「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!」」」」

私服姿のワイプシの皆さんが手土産を持って会いに来てくれた。その後ろに洸汰くんの姿を見つけて駆け寄って手を握った。

「洸汰くん!!久しぶり!!元気にしてた??手紙本当にありがとうね。宝物だよ」
「別に・・・うん」
「緑谷さん見てよ」
「え?」
「やっ、やめろよ!!」

マンダレイが私の腕を引っ張って玄関に並べられた小さな赤い靴を指さした。

「自分で選んだんだよ!“絶対赤だ“って」
「べっ・・・違っ!!」
「お揃いだね」

しゃがんで目線を合わせて笑いかけたら、洸汰くんはキャップを深くかぶって小さく何か呟いた。聞こえなくて耳を寄せたら、洸汰くんはますます下を向いて黙ってしまった。
それを見ていたかっちゃんが私の腕を引っ張って立ち上がらせた。

「おいマセガキ!言っとくけど、なまえは俺ンだからな」
「ちょ、ちょっと何言ってんのかっちゃん!!」
「うっせェ。なんだっていいだろ。こう言うのは先に言っとかねェとややこしいからな」
「ややこしいって何が・・・?」

洸汰くんは何も言わずに私の反対の手を引っ張って、かっちゃんと洸汰くんが目で喧嘩しているのがわかる。なんで急にこんなことになったの。マンダレイがそれを見て微笑んでいる。いや、微笑んでないで助けてください。

砂藤君がコーヒーを淹れて運んできて、ワイプシに雄英に来た理由を尋ねた。

「復帰のご挨拶に来たのよ」
「復帰!!?おめでとうございます!!ラグドール戻ったんですか!?“個性“を奪われての活動見合わせだったんじゃ」
「戻ってないよ!アチキは事務仕事で3人をサポートしていくの!OLキャッツ!」

かっちゃんと洸汰くんの戦いはかっちゃんの勝利だったみたいで、かっちゃんが私を隠すように立って、まだ洸汰くんに向かって大人気なく威嚇している。未だ鼻息荒いかっちゃんを落ち着かせるために背中を撫でた。
オール・フォー・ワンはタルタロスに幽閉されているが、未だどんな・どれだけの“個性“を内に秘めているか追及している段階で、現状としては“何もさせない“事が奴を抑える唯一の方法らしい。

「・・・では、何故このタイミングで復帰を?」
「今度発表されるんだけど、ヒーロービルボードチャートJP下半期。私たち411位だったんだ」

ヒーロービルボードチャートは現役ヒーロー番付のことだ。ワイプシは前回32位だった。

「前回は32位でした!」
「なる程。急落したからか!!ファイトッす!!」
「違うにゃん!全く活動してなかったにも拘らず3桁ってどゆ事!!」
「支持率の項目が我々突出していた」
「待ってくれてる人がいる」
「立ち止まってなんかいられにゃい!!」

オールマイト不在のヒーロービルボードチャートは一体どうなるんだろう・・・
ワイプシは一通り話すとB組にも挨拶に行くらしく、コーヒーを飲んだら立ち上がって玄関へと向かった。洸汰くんが靴を履いてる時に、かっこいい靴だねと言うと照れながらも小さく笑ってくれた。なんだか、かっちゃんの小さい頃を思い出させた。そうそう、この二人どことなく似てるんだよね。だから、さっきも喧嘩してたのかな。同族嫌悪ってやつ?かっちゃんも10歳も下の子に本気にならなくてもいいのに。
洸汰くんに手招きされて、近づいてしゃがんだら耳元でコソコソと小声で話してきた。

「俺、なまえさんみたいなヒーローになるよ」

あれだけ、個性を、超人社会を嫌っていた洸汰くんからそんな言葉が聞けるなんて。洸汰くん自身の個性を受け入れられたのかな。そうだったらいいな。嬉しくて洸汰くんを抱きしめた。
洸汰くんは恥ずかしそうにしていたが、意を決したように顔を上げた。

「俺絶対カッコいいヒーローになってなまえさんのとこに来るから」

そう言って、私の左手を両手で恭しく握ると手の甲にリップ音付きでキスをしてきた。突然のことに固まっていると洸汰くんはニヤリと笑って、先に寮の外に出たプッシーキャッツの皆を追いかけそのまま走り去って行ってしまった。え、なに・・・?!洸汰くんって5歳だよね?いや、待てよ。そういえば私も初キスは5歳だったな。

「あんの、マセガキ!!!待てやコラァァァ!!!!チッ!てめェがボサッとしてるからこうなんだよ!クソが!」
「いたたたた!かっちゃん痛い!痛いです」
「可愛いー!!何今の!なまえちゃーん、可愛いファンができたね」
「爆豪、キレ散らかしてんな」

それを見ていたクラスメイトたちはキャーキャー黄色い声をあげたし、かっちゃんはどデカい爆発を起こした後私の手をゴシゴシと服の袖で拭ってきた。
かっちゃんに引きずられていく私を皆笑顔で見送ってるんだけど、誰か助けてくれても良くない?え、嘘でしょ。

男子寮に向かうエレベーターに雑に放り込まれて、スリッパが脱げた。後ろからかっちゃんの腕が回ってきて、耳元で囁やくような声を出されて力が抜けてしまった。

「なまえ」
「ひゃ、ひゃい!」
「・・・なんだその気の抜けた返事は」
「だ、だって、かっちゃんの息が耳にかかって・・・あっ」

耳を甘噛みされて私は立つこともままならなくなった。かっちゃんが支えてくれなきゃきっとエレベーター内で座り込んでる。4階に着くとかっちゃんに肩に担がれて、ベッドに降ろされた。降ろす動作は優しくて、そのギャップに心臓が痛くなった。トンと肩を押されてベッドに寝かされると布団と共に覆い被さるようにかっちゃんが馬乗りになってきた。かっちゃんの頬に手を添えると、私の左手を握って何か言いたそうにしている。

「ど、どうしたの?」
「何でもねェよ!!!」

かっちゃんは私の肩に顔を埋めてため息をついた。その頭をよしよしと撫でるとかっちゃんの体がピクリと動いた。

「なまえ・・・」
「んー??」
「や、でも仮免とってからだな」
「何の話?」
「いや、気にすンな」
「え、めちゃくちゃ気になるんですけど!!??」
「・・・」

顔をあげたかっちゃんにジーッと見つめられて、私はしどろもどろになってしまった。そんな私にかっちゃんは何度も口付けをする。そのキスで身体中が熱くなって上に、何だかお腹の奥がヘンな感じ。思考回路まで茹だってぼうっとしている。きっと顔はだらしなく蕩けてる。

「かっちゃん、あったかい・・・」
「・・・」

そう言って微笑んだら、かっちゃんは何も言わずに手を服の中に入れてきて、少しだけひんやりとした手に小さく悲鳴をあげてしまった。ニヤリと笑ったかっちゃんが格好良すぎて心臓に悪い。差し入れられた手もいつの間にか温かくなっている。
肌寒い部屋なはずが、かっちゃんのおかげで暖まって私たちはお互いの熱で暖をとっていた。



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